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狙いはシーアネットワークの破壊 進むイスラエルの軍事攻撃

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しばらく総裁選挙の話題ばかりを伝えてきたがイスラエルを取り巻く状況がかなり悪化している。ネタニヤフ首相の狙いは、シーアネットワークを攻撃し「イランを戦争に引きずり込む」という最終目的を達成することだ。ネタニヤフ首相にとって見れば選挙を避けることができるうえにアメリカを泥沼の戦争に引きずり込むことができるという「一石二鳥」の作戦である。だが、レバノンでは早くも100万人規模の避難民が出ている。

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ネタニヤフ首相はイラン国民に向けた動画を公開し「中東地域においてイスラエルの手が届かないところはない」と主張した。イラン国民が解放された段階でイランとイスラエルが平和な状況になると言っている。

つまりイランの体制を刺激し戦争に引きずり込もうとしている。

このため、ネタニヤフ首相はイラン国民がイスラム権威主義によって支配されているという図式を作っている。イラン権威主義体制は国内ではイラン人を抑圧し、レバノンではヒズボラを支援し、イエメンではフーシ派を支援しているという図式だ。

これを崩すために「口撃」だけでなく、レバノンの首都ベイルートが爆撃され、イエメンのフーシ派の拠点も攻撃された。

ネタニヤフ首相はもともとイランに対する脅威からイスラエルを守る姿勢が好感され人気が高かった。日本では考えにくいことだがイランを刺激すると実際に支持率が上がる。

さらに北部イスラエルで戦争が激化していてイスラエル側にも避難民が出ている。領土を取り戻すまで「イスラエルを取り戻す戦いを継続しなければならない」といい続けることで、ガザが壊滅したあとも戦時内閣が継続できるというメリットもある。

プーチン大統領がウクライナを攻撃したとき、日本人は「経済成長を阻害する戦争をロシア人は嫌がるのではないか」と予想したはずだ。だが実際には外に敵を作ることで現状維持を望む人たちを惹きつけることができる。同じことがイスラエルで起きている。むしろ戦争を避けてきた国は中流層から離反されている。アメリカ合衆国とフランスでは極端な思想を持った人たちがエスタブリッシュメントが支配する政治を打倒しようとしている。日本はその例外といえるがやはり無党派層は政治から距離を置き始めている。これらの事象はすべて「政治が中間層から取り上げられつつある」という共通の現象の異なる表現に過ぎないと言って良い。

  • 我々は誰から何を盗まれているのか

は現在の政治を考えるうえで最も大きなテーマの一つだろう。だが政治家はこの「盗まれた感覚」を利用することで経済で引き止めることができなくなった大衆の心を掴もうとしている。

そしてこれが

  • 新しい戦争

の形なのだ。

イスラエルの内閣にはサール氏が加わった。サール氏はもともとリクードのメンバーで「右派・タカ派」という立ち位置。極右・超正統派に依存しがちなネタニヤフ政権にバランスを取り戻す効果がある。レバノン攻撃が激化したことでサール氏は国防大臣の要求を取り下げた。つまりガラント氏が離反することも避けられた。

イスラエルの次の一手はレバノンに対する地上侵攻だ。すでにアメリカには通告を済ませている。アメリカ合衆国は表向きは「外交的解決を求めイスラエルに自制を求める」立場である。だがバイデン大統領は「ナスララ師の氏は正義の執行である」と宣言しており本音ではイスラエルを止めるつもりはなさそうである。

トランプ氏台頭を背景にして。アメリカ合衆国の政治も感情に流されがちな国民の期待と国際的な立場を織り合わせることが難しくなっている。バイデン大統領はつど「失言」の形でバランスを取っていたが世間末期になるとそのあり方もどこかいい加減なものになりつつある。

ネタニヤフ首相は自身の政権を維持するためには何でもやるという立場だが、そのためにかなり多くの犠牲が出ている。ガザ地区220万人はまだ人道的地獄に取り残されたままだが、それにレバノン南部の100万人が加わった。BBCは一週間で50人の子どもが犠牲になったと伝える。シリア南部からレバノンに逃れてきた人もいたようだが、今度は逆にレバノンからシリアに10万人ほどの国際難民も出ている。

BBCは「ミカティ首相が100万人の避難民がいる可能性があると言っている」と書いているが「イスラエルの戦闘の停止を求めた」とは書いていない。産経新聞はミカティ暫定首相と書いている。

ヒズボラが大統領選びから撤退したことでレバノンには大統領がいない。このためミカティ氏が暫定大統領を兼任している。大統領が指名しない限り首相は任命できない。つまり外交努力も何もレバノンは国内にいるヒズボラによって政治的には機能停止の状態にあり外交の当事国になれない。つまりミカティ首相による「外交の呼びかけ」は自分たちは当事者になれないから関係国でなんとかイスラエルを止めてほしいという意味になる。国連の礎である主権国家体制は風前の灯だ。

常任理事国の一角を占めるアメリカ合衆国にはイスラエルを止めるつもりはない。ロシアはウクライナという主権国家を攻撃しているためこちらも紛争解決の当事国にはなり得ない。中国はイスラム側に大義があるとしているがおそらく国際社会を守護する意思はない。アメリカ合衆国の外交手的矛盾をついてアメリカの国際的立場を弱めたいのだろう。こちらは「台湾は中国の神聖な一部」と表明している。中国も「抗日を含む外国からの解放」と「まだ完成していない中華世界の統一」が共産党支配の2本柱になっている。つまり「何かを取り戻す戦い」という意味ではネタニヤフ首相やプーチン大統領に似ている。

この中で多くの避難民が逃げ回り大勢の子どもが亡くなるというのが現在の国際社会の現実であり、その後ろには習近平氏のような「取り戻したい指導者」が控えている。

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