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小泉進次郎対小林鷹之 自民党総裁選挙は脱派閥・若手対決へ

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自民党総裁選挙の前半戦の構図が見えてきた。脱派閥と世代交代がメインテーマとなり、小泉進次郎対小林鷹之と言う図式になりそうだ。現在立候補が確実視されているのは、小林鷹之、小泉進次郎、石破茂、林芳正、河野太郎氏の5人である。

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詳細を見る前にまず全体像を見てゆく。最初の投票は734票を巡る争いになる。国会議員が367票を持っていて党員の票も367票となる。誰か一人が過半数を獲得すればここで選挙は終わる。だが、過半数を獲得した人が出なければ地方票が47票に減り上位2名の決選投票となる。あらかじめ裏で「最初の投票では支援しないが、最後まで勝ち残ってくれれば応援しますよ」と派閥の領袖が持ちかけていれば、その派閥は次の総裁選の主流派になれると言う仕組みである。告示は9月12日で投票は27日だ。

過去の事例によれば国会議員内での本命ではなかった小泉純一郎氏が地方票で圧倒し二回戦なしで総理大臣になった事例がある。

自民党総裁選は20日、投開票が行われ、小泉純一郎首相が国会議員票と地方票を合わせた全体の約6割にあたる399票を獲得、他3候補に大差をつけて第1回投票で再選を決めた。同日夕の記者会見で首相は衆院解散について「緊迫した気持ちで臨時国会に臨む」と述べ、26日に臨時国会を召集し、10月中に解散に踏み切る考えを表明。21日に自民党役員人事、22日に内閣改造を行う方針も示した。首相支持派内では、山崎拓幹事長の処遇を最大の対立点に主導権争いが激化しており、首相が政権の新たな基盤を確立できるかどうかが課題になる。

小泉首相、大差で自民総裁再選 10月解散を表明(朝日新聞)

また安倍晋三氏は第一回目は高市氏を推していたが「本線では岸田総理を推して主流派入りするのではないか」などといわれており実際にそうなっている。つまり、一回戦で誰かを立てたとしてもそれが領袖の本音であるとは限らない。安倍氏の場合は派閥内で明確な後継を作らず自分の権力基盤を維持しつつ、最後まで日和見をきめこみ最終的に勝馬を見極めるという戦略だった。今回、麻生太郎氏がこの戦略を取る可能性がある。麻生氏にとっての高市氏が河野太郎氏なのだ。

これを踏まえて今残っている候補者たちを分類する。

  • 刷新感を演出するための替え表紙の若手2名:小泉進次郎氏と小林鷹之氏
  • 昔の若手1名:河野太郎氏
  • 安定志向の2名:現政権踏襲の林芳正氏と石破茂氏

今回の選挙では「未来志向のメッセージング」に特徴がある。

これまでの古い問題は岸田総理がすべて背負い退陣する。岸田総理は「自民党のために身を引いた」「素晴らしい功績を残した」と持ち上げられる。次世代の候補者たちは政治とカネの問題や統一教会の問題などにはあまり触れず「未来へのビジョン」を宣伝する。さらに古い体質の原因だった派閥には依存せず「若手中心」で新しいリーダーを支援するという空気が醸成される。

この自民党の刷新感戦略が「全部盛り」だったのが小林鷹之氏の会見だった。鷹は換羽するとの表現を用いて過去からの脱却を訴えた。さらに、各派閥の4回当選組以下の若手メンバーを26名集め「派閥からの支援は受けません」と宣言した。

さて、当然この話には裏がある。まず最初に動いたのは菅義偉氏だった。菅おろしで岸田総理を恨んでおり岸田政権ではほとんど表に出てこなかった。菅義偉氏主流派復帰を狙う中、最初に目をつけたのは世論調査一番人気の石破茂氏だった。だが、現代ビジネスによると石丸旋風を見て「時代は若手だ」と気が付き小泉進次郎氏に乗り換えたのだそうだ。

ところがこれが面白くないと考える議員がいる。それが福田達夫氏だった。清和会はもともと福田氏の祖父である福田赳夫氏が創設した。つまり達夫氏は創業家のプリンスである。しかし森喜朗氏の登場で雲行きが怪しくなり最終的に岸首相の流れをくむ安倍晋三氏に派閥を簒奪される。その後も森喜朗氏は自分の取り巻きを徴用し福田達夫氏はプリンスでありながら清和会の主流になれなかった。

福田氏にとって見れば小泉純一郎総理大臣ももともとは祖父の徒弟に過ぎない。大した学歴もない使用人の孫がマスコミに持ち上げられるのが面白いはずはない。現代ビジネスは菅義偉氏と福田達夫氏を対にしたストーリーを構築しており(真実かどうかはさておき)なかなか良くできた怨念物語が構築されている。

「福田氏は当選4回、小泉氏より1期下になるが、どちらも将来は自民党を背負って立つ人物です。小泉氏は岸田首相の派閥解消もあり、総裁選には確実に出てくるでしょう。今回出馬を見合わせた福田氏は小泉氏をライバル視しており、小泉氏の台頭には我慢ならないところがあると思う」(A氏)

【独自】「進次郎つぶし」のために小林鷹之を出馬させた「ライバル政治家」がやっていること《自民党総裁選》

菅義偉氏は岸田文雄氏を恨んでいて福田赳夫氏は小泉進次郎氏に嫉妬している。自民党は生まれ変わったというイメージの下ではドロドロとした個人の怨念が渦巻く一方で政策についてはほとんど話題になっていない。とにかく権力を維持し続けることが大切であり、そのためには選挙に勝ち総裁選で勝馬に乗るのが重要なのだ。

今回の混乱ぶりを見ると「いったい国民が何を望んでいるのかがわからなくなっている」からこそまずは予備選で候補者を乱立させて状況を見極めようとしているのだということもわかる。

だが表面上は小林氏は26人の「派閥に関係ない若手」から支援されており、其の対抗馬となる小泉進次郎氏も負けじと「いやいやこっちには40人も支持者がいます」などと競い合っている。

そもそも石丸旋風とはなんだったのか。

若い有権者は政治が理解できなくなっている。自分たちの言葉で政治について語ってくれる「俺達の候補」がいない。とはいえどこから手を付けていいかわからない。そこで「議論に勝ちさえすれば相手を言い負かして状況が変えられるのではないか」と考える人達が出てきた。つまり国語能力を失った人たちが「議論は勝ち負けであり論破してなんぼ」と考えて応援したのが石丸伸二氏だった。

おしらく菅義偉氏は「石丸氏は若いからウケたのだろう」と考えている。これが今後どう展開するかがこの選挙戦の見どころとなる。いくつかの可能性が考えられる。

第一に若者が早々に背景にある構図を見抜き白けてしまうというシナリオが考えられる。脱派閥を主張するが二階俊博氏にはきちんと断りを入れており、支援者26名の大多数は復権を願う安倍派の若手である。実は小林氏は派閥にどっぷり使った旧来型の候補者だ。

第二の可能性は小林氏や小泉氏が若者が期待するような現状破壊・現状打破を言い出さないことで若者が失望する可能性だ。小林氏は財務官僚出身という背景から国民の負担増につながるような提案もしないだろう。下手をすると増税を言い出しかねない。また、小泉進次郎氏の発言はすでに意味不明だと言う評価がある。ネットでは「意味不明発言の製造者としての小泉進次郎氏を称える」ミームが溢れている。小泉語録は今やブランドである。

第三の可能性は「高齢者への反発から小林人気・小泉人気が沸騰する」という真逆のシナリオだ。小林氏の言動はあまりにも分かりやすい守旧派発言だった。このためワイドショーでは早くも小林氏批判が展開されている。また田崎史郎氏のようなベテランの記者は小林発言は面白くないという。それってあなたの感想ですよねとと若者が反発しても不思議ではない。

若いコメンテータの中には「小林さんの言っていることは理解できた」という人がいる。今までの政治家の発言があまりにもわかりにくかったことの裏返しだろう。

つまり、高齢の「識者」たちが小林氏を批判すれば批判するほど「小林さんは若いから高齢者にいじめられているのだ」という印象がつく。これが小林・小泉人気に火を付ける可能性があるのだ。

第四の可能性は「若者の声」があまり浸透せず従来型の候補者が勝ち上がると言う可能性である。今立候補がほぼ確定している人の中では林芳正氏と石破茂氏がそれに当たる。林氏は岸田路線踏襲だが石破氏はそうではないという違いがある。高齢者が「とにかく医療福祉で現状維持」を求めて変化を嫌いこの2名に投票すると言う可能性も残されている。

小林氏も小泉氏も総裁選挙が正式に告示される9月12日までの間にどれだけ一般有権者の支持を獲得できるかが勝負だ。自民党の党員は総選挙になれば周囲にいる人達に自民党を勧めなければならない。このときに「今の自民党はちょっとねえ」などと言われたくない。このため一般国民(ネットの極端な声ではなく)の評判の良い人が一回戦で勝ち残る可能性は高い。

なおかつてはなにかやってくれそうな若手代表だった河野太郎氏に対する国民期待は失速している。現役世代からはIT世代の旗手として期待されていたが、ワクチン政策とマイナンバー健康保険証問題では点数が稼げなかった。自分の思い通りにならないと部下を厳しく叱責するナルシシスト型の行政管理スタイルで、Xのブロックとミュートの区別もつかないと言われるほど知識は中途半端である。麻生太郎氏は表向きは河野氏を支援すると宣言することで中立の立場を保つことができる。あとは候補者同士のつぶしあいを眺めつつ最後に勝馬が決まったところで乗ればいい。ライバルの菅義偉氏が小泉進次郎氏を支援していることから考えると小泉氏が勝った場合には対立候補に乗り「労せず主流派を確保することも可能」ということになる。

河野氏の周辺にもドロドロとした恨みの堆積がある。麻生太郎氏の政権担当時に石破茂氏は麻生おろしに動いた。これに追従したのが平将明氏だった。平氏はこれをきっかけに麻生氏にいじめられるようになり麻生氏との仲が険悪になってゆく。

さらに石破氏に先駆けて、現在石破派に所属する後藤田正純元内閣府副大臣(49)、平将明元内閣府副大臣(51)らも麻生氏退陣を突きつけていた。石破派に対する麻生氏の恨みはさぞ深いだろう。

石破茂元幹事長の過去つつく麻生太郎副総理 「麻生降ろし」の恨みか…(産経新聞)

前回の総裁選挙では河野太郎氏を推していた。麻生氏の制止を振り切って出馬したために応援しやすかったのだろう。だが今回は麻生氏に「自分はチャーターメンバーだから麻生派を出ることはない」と誓ったと言われている。

関係筋によると、麻生氏の琴線に触れたのは、河野氏が麻生派(志公会)を離脱することはないと明言したことだ。河野氏は「自分は麻生派(為公会)発足時(2006年)からのチャーターメンバーだ」と語ったとされる。

岸田首相を退かせ、勝ち馬に乗り換える…自民党の新旧キングメーカーが推す「本命の総裁候補」の名前(President)

河野太郎氏は新世代の代表になるか派閥長老の競走馬として走るかの二者択一を迫られた結果、黙ってその場を立ち去ったそうだ。

平氏は、裏金事件を受け、大半の派閥が解散方針を決めたのを踏まえ「麻生派だけが残っている。解散すべきだ」と訴えた。国政報告会には河野氏も出席しあいさつしたが、平氏の発言前に退席していた。

平氏「河野氏は麻生派離脱を」 前回総裁選の推薦人(共同通信)

一方で小泉進次郎氏も小林鷹之氏にも河野太郎氏のような国家プロジェクト級の失敗経験がない。つまりどちらかが総理大臣になると「総理大事が初めての失敗経験」になる可能性がある。また「若手ホープの先輩」である河野太郎氏の事例を見るとそもそも水面下では個人の恨みに基づいたドロドロの人間関係に縛られて自分が良いと思った政策が実現できない可能性も高い。つまりこれがよいと思った政策があったとしても「あの人とこの人は中が悪いからなあ」という理由で実現できない可能性があるのだ。

このため「刷新感」戦略が成功するとその分だけバックラッシュの危険性も高まるということになる。

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