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バングラディシュの学生デモが過激化 テレビ局が燃やされ死者も30名以上に

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アメリカのニュースは大統領選挙の行方を夢中で追いかけている。まるで世界では大統領選挙以外のことは行われていないような印象を受ける。

そんななか「バングラディシュで学生デモ」というニュースを見かけた。「さほど大した問題ではないだろう」と考えていたがあっという間に死者が30名を超えた。テレビ局が放火され交通・通信インフラにも影響が出ているという。

一体何があったのか。

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バングラディシュの与党はアワミ連盟という。政権を担ったこともある有力野党(BNP)もあったが、2008年にハシナ政権が大勝すると強権化した。バングラディシュでは1975年にクーデターが起きている。ムジブル・ラフマン大統領は政府官僚の腐敗に不満を持つ軍人によるクーデターで殺害された。現在の党首のシェイク・ハシナ氏はこのムジブル・ラフマンの娘だそうだ。強権的にBNPを排除し国民は政治に関心を向けなくなった。

直近の選挙では野党BNPが選挙をボイコットしたこともあり2028年までハシナ政権が続く。バングラディシュのような後進国の場合「開発独裁」で経済成長が加速するということはよくある話でハシナ政権下での経済成長は好調だった。(バングラデシュ総選挙、「グローバルサウス」に広がる強権体制の行方 第一生命経済研究所

しかし経済は徐々に行き詰まりを見せ始める。相対的に政府機関の仕事の重要性が増した。ハシナ政権はパキスタンからの独立戦争の遺族を優遇する露骨な政策で求心力を維持しようとしたがこれが反発されている。

しかし単なる縁故主義だけで学生デモが過激化したとは考えにくい。

アワミ連盟の経済成長は主にインフラ開発を中心としたものである。開発したあとには産業が誘致されなければならないがそこまでの事は思いつかなかったのだろう。

徐々に「学校にも行っておらず仕事も見つけられない」という人が増えていった。国内の不満を抑えるためにはとにかく国を開発するしかなく(産業を誘致しようという気持ちにはならないのだろう)アワミ連盟は海外の援助に頼る。バングラディシュは中国と包括的パートナーシップを結びインフラ整備や防衛協力を加速させている。中国はインドに対抗したい。日本も中国に対抗するために円を貸し出してインドへの流通網を作っているそうだ。これが却って「インフラさえ作っていればなんとかなる」という政府を温存させてしまう。

政府主導のインフラ開発が主な産業になると当然政府の仕事は利権になる。CNNによるとアワミ連盟に近い学生運動が反政府デモを挑発し抗争が激化したようである。アワミ連盟側の学生にも「自分たちの利権を守りたいという気持ちがあったのかもしれない。この対立が激化しデモが急速に拡大した。

The demonstrations became violent on July 15 when members of the Bangladesh Chatra League – the student wing of the ruling Awami League party – reportedly attacked student protesters inside the Dhaka University campus.

Bangladesh has erupted over jobs reserved for the children of ‘freedom fighters.’ Here’s what you need to know(CNN)

バングラディシュはとにかくインフラを作り続けるしかないが、インフラは本来はお金儲けの道具に過ぎない。つまりインフラを使って何かをやらないと資金は回収できない。日本人から見れば当たり前のことだが。おそらくアワミ連盟にはそのような知恵はなく今回のようなデモが起きてしまったということになる。つまりデモが沈静化するような「落とし所」が全く見つからない。

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