金曜日のXは「バイデン大統領が撤退を表明する」という投稿で溢れていた。ついにアメリカと太いパイプを持つ長島昭久自民党衆議院議員まで「近い筋に聞いた」として今週末に撤退宣言があるかもしれないなどと投稿していた。
だが実際にはバイデン大統領に近い筋は撤退宣言を出していない。背景を探るとバイデン氏を取り囲む「情報バブル」の存在があるようだ。
バイデン大統領はテレビ演説に失敗した。このため一部のスタッフに大変腹を立てているようだ。また新型コロナウィルスに感染し引きこもってしまった。この2つの要因が重なりバイデン大統領と話ができるスタッフの数の数が限定的になっているとCNNが伝えている。
こうなると実際にバイデン大統領が選挙戦について何を考えているのかがわからなくなってしまう。
ところがこれだけでは情報が錯綜することにはならない。多くの人は明日のアメリカではなく自分たちの今の暮らしを心配している。
トランプ氏が二期目に官僚を大幅に入れ替えるのではないかというプロジェクト2025という計画がある。つまり、トランプ氏が勝ってしまうと多くの高級官僚が仕事を失う。また民主党議員のスタッフたちも選挙に負ければ解雇されるかもしれない。彼らが気にするのは未来の自分たちのペイチェックである。当然彼らはトランプ氏に勝てる候補を熱望する。
このためマスメディアには「オバマ氏もバイデン氏勝利に懐疑的、出馬再考すべきとの考え=新聞」「バイデン氏撤退、米に最善の利益となる兆候強まる=民主上院議員」「バイデン氏、大統領選撤退「真剣に検討」 時間の問題か=関係筋」「【米大統領選2024】 バイデン氏にいっそうの撤退圧力 民主党内で暗いムード漂う中」と言った記事が飛び交った。おそらく多くの人々が情報を流しているのだろう。
当然バイデン陣営にも「来週のペイチェック」がかかった人たちが大勢いる。「バイデン氏、来週の選挙活動再開に意欲 身内からは撤退圧力強まる」という記事が出ている。それぞれが好き勝手な観測をメディアに流しそれをメディアが右から左に伝えている。
まさにパニックだ。
民主党の重鎮たちは世論調査の結果を示し(重要なのは接戦州の情報だ)バイデン大統領に選挙戦撤退を迫っている。だがおそらく周りにいる人達は「楽観的な見通し」を伝えているはずだ。彼らには大統領に選挙戦を継続してもらわなければ困るという事情がある。つまりバイデン大統領は情報バブルに囲まれており実際に何が起きているのかがわからなくなっている可能性があるということになるだろう。世界中からどんな情報でも取ってくることができるアメリカ合衆国の大統領も殊自分のことになると何が起きているかわからないというのは極めて皮肉なことだ。
おそらく大統領選挙の行方は「落ち着くところに落ち着く」のだろうがこの空白の間にも世界情勢は変化しつつある。特にイスラエルの状況は予断を許さないものになっている。また、他の地域でもアメリカに挑戦するような動きが見られるかもしれない。
バイデン大統領が執務とキャンペーンを再開し民主党に広がる不安を払拭するか重鎮たちの意見を聞き入れて大統領選を撤退するまで世界情勢は極めて不安定な状況に置かれることになるのかもしれない。