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個人主義と民主主義の関係

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前回までのエントリーでは「日本には個人の契約に基づく民主主義が成り立たない」という嘆きについて考えた。確かに、西洋流の民主主義は個人の契約に基づいて運用されるように見えるのだが、日本では別の行動原理が働いているのではないかと考えた。
そもそも、民主主義は個人主義社会でないと成り立たないのか、疑問に思ったので実際に調べてみた。
ホフステードの個人主義指数と民主主義ランキングをプロットした。最近まで日本は「完全な民主主義国家」だったのだが、安倍政権ができてからランキングを落として「欠陥のある民主主義」に転落した。日本語版のWikipediaは2014年版なのだが、英語版は2015年版だ。もっとも、それほど嘆くことでもなさそうだ。最近テロが頻発するフランスも順位を落としている。合格ラインは8なので、日本はぎりぎり当落線上にいる。
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結果は一目瞭然だ。民主主義と個人主義の間には相関がありそうである。だが、これだけではちょっと弱い。コスタリカ・台湾・韓国などの国で民主主義が成立していることが説明できないのだ。
ということで、今度は権力格差について調べてみた。数値が高いほど権力格差が高い。また権力格差が大きくても民主的な社会と非民主的な社会に拡散することが分かる。ここでも日本は中位である。たとえばアメリカ人は権威を振りかざされると怒りだす。アメリカが権力格差の小さな社会だからだ。権力格差も民主主義と関係がありそうだ。当然、負の相関である。
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ということで、二つを単純に足して(100-権力格差)+個人主義と民主主義指数を比べた。
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依然相関があるようだが、グラフの左の方は相関が薄くなる。イランがアウトライヤーになっているので、相関は弓なりだ。この図を見ると、日本は平均線上にあることになる。
このグラフは2つの要素の合成になっているので、質を表すために権力指向と個人主義指向をプロットした上でグループ分け(kmeans)してみた。日本はオレンジ色グループに入る。
特に後進的なグループということはなく、ベルギー、フランス、スペインなども入っている。その他の国はインド、台湾、ブラジル、トルコなど。ちなみにフランスは多党連立型だそうで、アングロサクソン流の二大政党政治ではない。スペインは全国政党の他に多数の地方政党がある。ベルギーはそもそも全国的なまとまりがなく、最近では首相が出せない事態に陥ったばかりだ。ブラジルも多党型らしい。
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日本は自民党による政権維持が長く続いたが、長い間複数派閥による非公式の(つまり選挙によらない)派閥政治の時代が長く続いていた。こう考えてみると、日本が小選挙区二大政党制を指向したのは「気の迷い」だったしか言いようがない。
もちろん、今回はたまたま入手可能だった数字を当てはめてみただけなので「科学的でない」という批判もあるのだろうが、それでも思い込みたっぷりで作られた「国柄」に陶酔するよりも多くの洞察を与えてくれる。また、日本はそれほど特殊な国ではないということが分かるのではないか。