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安倍政権時代の負の遺産が日本のコロナ対策に暗い影を落とす

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これまでブログの中で日本医師会は自民党の支援団体だから菅政権は日本医師会が嫌がるようなことはできないのだろうと書いてきた。だがある記事を読んで「そういう単純な話でもなかったのだな」と感じた。安倍政権時代に溜まった不満が爆発し官邸と医師会の協力関係が壊れている。これが国民の命と安全を脅かしているという図式である。安倍政権時代の負の遺産は統計偽装と衰退する地方経済の放置である。ではそれが具体的にどう影響しているのかというのが問題になる。

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NHKによると2020年に日本医師会で選挙があったそうである。4期8年にわたって会長をやってきた横倉義武さんが退任の意向を決めていた。中川さんが後継になるという目算だったようだ。だが、コロナ禍で事情が変わり「横倉さんがもう一度やる」ということになった。これに腹を立てた中川さんがどうしても会長になると言い出して誰も望まないのに選挙になったそうである。医師会を二分する争いになり17票差で横倉さんが破れた。中川さんのクーデターだと書いている記事もあった。

マスク

現在の国民皆保険制度が出来上がったのは1960年ごろのことだという。もともと厚生省の一存で診療報酬改定ができるような制度が想定されていたようだが当時の武見太郎会長が「全国一斉休診」というストライキをやった結果、自民党が介入して診療報酬が決まることになった。ここから日本医師会は利益団体化してゆく。NHKの記事によると与野党に5億円の資金供給をしているほか自民党には2名の国会議員を出しているそうだ。

特に横倉さんは安倍政権との近しい関係で知られていた。福岡の病院の理事長をやっているので麻生財務大臣とも近い。選挙戦では二階幹事長も横倉支持に回ったのだが再選は叶わなかったという。当時の記事を改めてみて見ると「政界にはショックが走った」と書いているものが多い。

だが、なぜ横倉さんが勝てなかったのかはよくわからない。2017年に財務省が診療報酬の引き下げを提案した時に横倉さんが強く異議を申し立てたと書いている東洋経済の記事があるが「恒例だ」と書かれているのでこれが原因になったとは思えない。

この記事には気になる部分がある。そもそも病院の経営や医師の給料についてはわからないことが多いのだそうだ。地方経済は悪化していて病院の倒産も増えている。つまりよくわからないうちに地方の医療体制が溶けている。安倍政権は文書偽装政権だったから厚生労働省に「不都合な統計」を出させて問題に取り組むことなどできなかった。つまりこれは安倍政権の負の遺産である。

NHKの記事には「横倉さんと安倍政権が近すぎることを好ましく思っていない人がいるのだろう」と書かれている。地方の不安とは関係がない東京都医師会が中川支持に回っているところからも別の不満はあったのだろうなと思う。

中川新会長は「是々非々で政権に対して意見を言ってゆく」という姿勢のようだ。これが非協力的・防衛的な姿勢につながっている。退任後の横倉元会長は文藝春秋に「日本医師会はなぜ嫌われるのか|横倉義武」という記事を出している。無料部分しか読んでいないのだが現在の中川体制は国難とも言えるコロナ診療に協力的ではないと批判している。

おそらく現在の中川体制が政権のコロナ対策に協力的でないという見立ては正しいのだろう。注文はつけたいが余計な協力はしたくないというのが現体制の本音なのかもしれない。ただ、このままではコロナ禍は収まらず医療機関にも人は戻らない。全体最適が図れず部分最適化することで国民全体が損をしているのだが利益団体化した医師会にはそのような大きな絵は見えていないのかもしれない。

中川医師会は政権とのパイプが弱いというのが弱点になっているそうだ。だがこれは菅政権にも同じことが言える。協力を依頼できないし刺激したくもないという微妙な関係があるのだろう。東京都と官邸の意思疎通は問題になることが多く政局を絡めて面白おかしく取り上げられることがある。医師会が安倍政権時代に蓄積したなんらかのの将来不安問題が日本のコロナ対策に影を落としているのは間違いがなさそうだがその理由は表に出てこないように思う。

ただ地方の医師会の中には行政と協力した体制を構築しつつあるところもあるし東京都でも墨田区のような事例がある。各所が切羽詰まってくればそれなりのところに落ち着くのかもしれない。だが、その間は重症化した人が多くの軽症患者の中に埋もれてしまうのだろうなと思う。

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