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中華人民共和国という異物に翻弄される西側社会

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カナダ下院がウイグルの弾圧をジェノサイドであると抗議する決議を出した。トルドー首相が率いる政党は決議に参加せず法的拘束力もないそうだ。ここに興味深い条項が入っている。中国政府が説明をしないなら「北京オリンピックの開催地を変えるように」という要求が入っているのである。

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この決議は興味深い。あるいは日本もこれに乗って北京五輪をボイコットすべきだという人が出てくるかもしれない。一方、実は日本も同じような視線に晒されている。最近日本で森元会長の女性蔑視とみられる発言が物議を醸したばかりだ。欧米社会は日本を女性蔑視的だとみなしている。日本政府はそのことを知っているのであえて森元会長をかばうようなことはしなかった。西側諸国の厳しい目を恐れているのだ。

一方で中国の王毅外相が「中国政府の統治下でウイグルとチベットの人権は向上している」と演説して見せた。大国らしい振る舞いのつもりなのだろうが、この「反省しない」姿勢が各国の国民議会では反発の対象になっているということになる。

中国の報道機関が独自の調査をして政府を批判することはできない。中国政府が自分たちの立場を説明して見せても自由な報道に慣れた西側の人たちは納得しない。そして中国政府はそのことが理解できない。この二つの世界は永遠に折り合えないのである。

「政府は人権を擁護すべき」というのは政治的イデオロギーなのか価値観なのかという問題点もある。フランスのリヨンでは子供の給食に肉を出すかどうかが政治的イデオロギーとして語られている。当然両者は地続きになっていて区別ができない。

政治的イデオロギーだとみなせばオリンピック・パラリンピックに政治を持ち込むべきではないということになる。一方で人間の可能性を最大限に生かすのがオリンピック・パラリンピックの精神だということにするとオリンピック・パラリンピックが価値観とは不可分であるという全く逆の結論になる。

中国という「異物」が欧米社会では問題になりつつある。

それに対抗するために日本・アメリカ・オーストラリア・インドは「日米豪印戦略対話(クアッド)」という準同盟体制を作ろうとしている。Newsweekが強大化する中国を前に日米豪印「クアッド」が無力な理由という記事を出している。記事は中国のいないクアッドではなくRCEPこそが重要になるだろうと言っている。つまり経済問題こそが重要だというのだ。

だが実際には経済的脅威と軍事的脅威はしばしば混同され、あるいはわざと一緒くたに語られる。

そもそも「本当に問題なのは中国なのだろうか?」という点も気になる。

オーストラリアではターンブル首相が親中派と見られていた。これと対抗する勢力が2018年に自由党内に現れて今のモリソン政権ができた。つまり国内政局に中国が利用された側面があるのだ。今のモリソン政権が中国に対してきつく当たるのは成立の経緯が反中国的だからだ。つまり、カナダの決議も結局はカナダ内部の政局である可能性がある。注意深く記事を読むと「野党が決議を出してトルドー首相の政党は決議に参加しなかった」と書いてある。

実は日本にも潜在的にこの問題がある。二階派は中国とうまくやってゆきたい。一方で自民党内には台湾を支持するアメリカに追随すべきであるという議員が大勢いてTwitterなどを使って盛んに宣伝活動をしている。

西側世界が中国という異物に戸惑う一方で実は中国も自由主義社会の世論操作をやっている疑惑がある。最近Yubeで多くのチャンネルが削除された。Coordinated Influence Operations(協調的影響作戦)というそうである。自由主義社会は国民世論が政治をつくるということになっているのだが、中国はそうではない。

おそらく中国の指導者たちにとってみれば世論というのは情報次第であっちに行ったりこっちに行ったりする不確かなものに過ぎない。だから、自国では「世論誘導は厳しく監視されなければならない」一方で、自由主義社会の世論は簡単に操作できると考えてしまうのだろう。BBCが中国を追放される一方でYouTubeを使った政治宣伝が行われているのである。

価値観があまりにも違いすぎるため、この二つが折り合うことはない。我々は今後数十年折り合わない二つの価値観が存在する世界を生きてゆくのかもしれない。最終的に戦争になるのではという人もいれば人口動態的には中国はやがて失速すると考える人もいる。先行きは見通せそうにない。

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