ざっくり解説 時々深掘り

菅総理の2050年温室ガスゼロ宣言で立憲民主党は追い込まれるだろう

ある場所で海外のニュースと国内のニュースを紹介している。一時期は中国に関する投稿が多く、中国の名前の人たちが盛んに自己弁護の書き込みをしていた。最近ではアメリカに関する投稿が多くなった。史上最悪の大統領選挙が進行しつつあるからである。こうしたニュースには色々なコメントがつく。

ところがここに高評価がつかないニュースがある。それが国内ニュースである。おそらくは突然鏡を見せられるような気分になるのだろう。久しぶりに鏡を覗いた時のようなあの嫌な感覚が最近の国内ニュースにはある。その気分を左右対立でごまかしているというのが今の日本の政治言論の状況だと思う。

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いよいよ国会が始まる。菅総理大臣は冒頭で力強く温室ガスの削減を提唱した。ただ中身をよく聞いてみると目標は2050年に設定してある。欧州では温室ガス削減議論が高まっており付帯したビジネスチャンスもあるようだ。ここには乗り遅れたくないので日本も目標を設定して置きたい。国連のグレーレス事務総長には褒めてもらえたようだ。

ただ、最近の政府主導プロジェクトは全て失敗している。おそらく今の政府には企業を先導する力はない。また企業も政府のいうことを聞くつもりはないだろう。企業が狙っているのは延命のための補助だけである。

企業を変える力がないことがわかっているからこそ菅総理大臣は目標を設定しなかったに違いない。

所信表明に関する評価には辛口のものが多かった。共同通信は淡々と言い間違いを数えた。あまりにも露骨に読んでいたからである。毎日新聞は単に政策を並べただけだと評した。安倍政権の時は憲法改正に意欲を見せていたのでそれを批判すればよかった。おそらく批判するようなものもなくかといって画期的な新機軸もないというダラダラした国会になりそうである。

二階幹事長は選挙のことにしか頭にないようだ。先進国に褒めてもらえる上に女性が票になるのだから女性の国会議員をさっさと増やせばいいと言い放った。だが、実際に自分の選挙区の代議士を女性に変えるなどないだろう。西村経済再生担当大臣が正月休みを伸ばしてはと提案したのに対して「国会の日程に影響が出るではないか」と不満を漏らした。確かに予算編成はギリギリになることが予想される。3月末までに予算が成立しなければ菅政権の責任を問う声が出てくるだろう。逆に言えば失点さえ避ければ現状は維持できる。

菅政権の環境政策はいかにも危うい。原発依存からは脱却できず諸問題は全てイノベーション頼みである。だが環境省にはおそらくやる気はないだろう。成果は出なくても今あるプロジェクトだけは維持したい。仕事がなくなるのは困るからである。結果は単なる問題の先延ばしである。

ただ、皮肉なことに窮地に立たされているのは自民党ではない。実際に窮地にあるのは野党、特に立憲民主党である。菅総理大臣の発言を聞くと環境問題関連では原発再稼働が暗黙の前提になっているようである。日本の在来左派は反戦・反核・反米が基軸になっている。実は新しい環境派の人たちと反米の部分で折り合えない。単にこれまで受け皿がなかったので野党支持だった人たちは与党側に流れてしまうかもしれない。

与党がアジェンダセッティングしてしまったので野党が対抗するためにはなんらかの新しいアイディアを引っ張ってくるしかない。野党に先読みする力があれば、ドイツあたりの事例を研究して反核と環境問題を両立させるようなプランを組み上げてくるだろう。

では今の立憲民主党にその力があるだろうか。立憲民主党の安住国対委員長が「立憲民主党の時代が来た」と発言し社会党の残党(つまりは福島瑞穂さんのことなのだが)を怒らせた。国民民主党が消え、社会民主党も消えようとしている。そんな中立憲民主党だけが生き残ったと言いたいのだろう。

支持者たちの間でいい気持ちになりたいという安住さんの気持ちはわかる。だが、よく考えてみれば立憲民主党の時代など来ていない。世間からは完全に忘れ去られようとしている。だが、安住さんは支持者たちに囲まれていて上機嫌なのだろう。自分たちの時代が来たと王様気分なのである。そんな人たちに新しいアイディアを持って来て党勢の拡大を図るなどというビジョンが持てるものかどうか。極めて怪しい。

新型コロナに怯えつつ明日も見えない。甘利税調会長は先に日本はL字回復だろうと言っている。回復と言っているが要するに落ちた後に戻らないだろうと言っている。では消費税などを減免して消費を回復してくれるのだろうか?と思うのだが、甘利税調会長の発言は「だから法人税を減免して企業を助けなければいけない」と続く。

野党が支持者たちに囲まれて現実から目を背けている一方で、自民党は静かに安倍政権からの方針転換を模索している。衰退を前提にした国家運営に移行しようとしているのである。国民がそれに憤ったという話は聞かない。おそらく高齢者を中心にした国民はすでに諦めており、若年層はそもそも政治には期待していない。

静かに衰退していく国で「我々はよりよく変われる」と訴えかける野党の言葉だけが虚しく響く。日本ではそんな政治風景がしばらく続きそうだ。

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