新型コロナでアメリカの新規失業者数が4,200万人になったそうである。その一方でアメリカの富裕者の元に62兆円がなだれ込んでいるそうだ。これをみて資本主義は終わったなあと思った。「終わった理由」は極めてシンプルなのだが、これがそのままでは受け入れてもらえない。イデオロギーが入りこみ人々は話を複雑にしてしまうのである。
これまで今起きていることをなんども整理しようと試みたのだがそれはことごとくうまく行かなかった。どうやら信用が作り出す経済というのはゲームのようなものでこれまでの経済学が通用しないらしい。そこで詳細の解明を諦めて極端な仮説を作った。
- 国は信用を作り出す。
- 信用はお金という形で流れてゆき最終的には富裕層と言われる人たちか企業に吸着される。
- こうなると回路にお金が流れなくなる。するとその日暮らしをしている人は一ヶ月程度で餓死する。
- だから回路にお金を流し続けるために国は信用を作り続けなければならない。
そして予測を作った。
- 国はいつまでも信用を作り続けることはできないだろう。
- 富裕層も蓄積できるのは「仮想のお金」だけであり必ずしも実物資産を伴わない。
- ゆえにこれは中長期的にはインバランスを起こし崩れるだろう。
- どのような崩れ方をするのかはわからないしいつ崩れるのかもわからない。
- だから国はいつまでも信用を作り続けるべきではないだろう。
ちなみに、信用というのは平たく通用する言葉で言うと「国の借金」のことである。最終的な結論はおそらく左派政党が言っていることと同じだと思うが「人は平等であるべきだから格差はよくない」というような話ではない。また「過去に学んでハイパーインフレが起こるだろうから借金は良くない」と言っているわけでもない。単に簡単な予測を立ててその予測の結果を書いているだけである。
今回のアメリカの事例を見てみると、国が経済を再開しようとしてなんらかの手を尽くしてもその多くが「即座に」富裕層に吸着されてしまうということがわかる。つまり、経済を通じて(例えば企業を救済して賃金を払ってもらったりすることや国が公共事業をやって臨時の雇い手になること)はもはや意味がないという人がアメリカには4,200万人いたということのようだ。アメリカ政府が創造した信用がどれくらいのものだったのかということはわからないが(調べればわかるかもしれないがあまり意味がない)「多くの部分」がダイレクトに富裕層に流れ込んでしまう。
4200万人が明日死んでもいいというなら「まあそれも資本主義だ」と言えるわけだが、おそらく彼らは暴動を起こしたり政府に抗議運動をしたりするだろう。そもそも国が信用を創造するのは国民が生活しやすくするためである。つまり、経済の恩恵を受けられない人が4200万人もいるという状態はシンプルに間違っているといえるだろう。
ちなみに信用を創造しても実物資産は増えない。単に数字としてのお金が右から左に流れるだけでである。だがそれだけで多くの人がパンを買えるのだ。
であれば、政府ができるのは「彼らに直接給付をすること」しかない。政府がお金を使ってくれる人や使わざるをえない人にお金を渡すことができれば彼らは経済を回すだろう。やがてはそれも富裕層に吸着されるのだろうが政府の信用が膨張するスピードを遅くすることはできるはずだ。
EUは財政緊縮策をとっている。このためスペインは憲法を変えてまで財政緊縮策を取っている。このたびスペインの左派政権は「緊急時だから」ということでベーシックインカムを導入したそうである。そうしないとお金を直接必要な人に渡せなくなっているのである。これもとてもシンプルなことである。230万人に3,600億円を支給するそうだがこれは間接的な経済支援策よりも単純で費用もあまりかからない。
ただ、ベーシックインカムは緊急時の対応としては間違ってはいないが、おそらく根本の問題を解決することはできないだろう。最終的に問題なのは富裕層なり大企業がお金を吸着してしまい政府にも還元しないという点だ。本来大企業が政府に余剰資金を換言すれば政府の借金(つまり創造した信用)を減らすことができる。とりあえず回っていればみんな食べるのには困らないのだからそれでもよいはずなのである。だが、なぜかそうならない。
またベーシックインカムという言葉も一人歩きしかねない。おそらくは直接給付と言ったほうがよい。ベーシックインカムも直接給付も生活保護もみんな同じことなのだが、なぜか人々は言葉によってこれらを違うものだと錯誤してしまうのだ。
みんな難しく考えすぎている、と思う。