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スーパーシティ構想という無能なクーデターが監視社会批判につながるまでの絶望的な顛末

前回は、スーパーシティ構想が無能なクーデターだと書いた。こういう決めつけ的なフレーズは本質を表していなくてもTwitterで受けることがある。ただ、この話は何というかそれだけで終わらせるのは惜しいところがある。日本人が集団で無脳化している様子がよくわかるのだ。

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まず、なぜスーパーシティが監視社会につながるのかと聞いてみた。Quoraでは回答をひとつもらった。よくわからないが「政府には足かせをつけなければならない」と書いている。政府が言っていることはよくわからないのだがなんかずるいことをしているようなのでとにかく反対しなければならないというわけである。

この回答に「Society 5.0」という内閣府のウェブサイトへのリンクが貼られている。おそらく安倍政権の8年間というのは政権中枢が恐ろしい勢いで無脳化してゆく時代だったのだろうということがよくわかる。内容を見ても言っていることがさっぱりわからないのである。

これではどのように取られても仕方がないと思った。しかし、その無脳化プロセスには一つのパターンがある。西洋と肩を並べたいがどうしていいかわからないようなのだ。社会のレベルで西洋の合理的な思考が理解されなくなってきているのだろう。

まずドイツでIndustry 4.0という言葉が作られた。これはITを使って製造業のIT化を進めて行こうという意味のある言葉である。高生産性を山に例えるとそこに登るのにいくつかの登山ルートがある。Society5.0という言葉はこれに倣って作られたらしいが、安倍政権のもとで無脳化している。

  • ドイツに勝ちたい:新型コロナの緊急事態宣言終結の会見で見てわかるように、安倍総理は世界に勝ちたいという気持ちがある。だがその背景にある合理性や実態に興味がない。あくまでも勝ちたいだけなのである。だからドイツよりもバージョンが上がっている。
  • 公共と未来という言葉を使えば誰も反対できないことを知っている人たちがいる。そのため企業に投資するIndustryではなくSocietyが使われている。安倍政権のお友達にとって公共というのはつまり私物化のことである。
  • だが、何をしていいかはわからないしおそらく理解するつもりもないので「手近にあるなんだか凄そうなもの」を集めてきて壮大な未来予想図を作る。その結果一体何がやりたいのかがわからなくなっている。

長い間成長から取り残され続けた結果、何が成長なのかわからなくなっている。でも成長は続けなければならない。安倍政権流にいうと「やっている感」を演出し続ける必要がある。だから悪夢のようなプレゼン(よくポンチ絵という)ができてしまう。

おそらく少子高齢化が進んでおり先進技術を試すことができる市場がなくなっているのだろう。さらに今ある課題を解決できなくなっていることもわかる。高齢化した日本人は情報技術について行けなくなっており、少子高齢化が進行し地域社会を支える低賃金労働者が確保しにくくなっている。

内容は理解したくないし理解するつもりもない。だが、問題は魔法のように解決しているように見せたい。そこで頼ったのがIT技術である。世襲化した脳のない中枢議員にすり寄ってくる人たちはもう詐欺師まがいの人たちばかりだ。

言葉だけが一人歩きしそこに予算がつけられる。結局「特区」は安倍政権のお友達優遇に使われ、そのあとの効果検証はされない。例えば加計学園の獣医学部はかなり問題を抱えているようだがそれがマスコミによって検証されることはない。

そもそも何だかよくわからない絵なのだが取り立てて反対することもない。毒にも薬にもならないとされていたからだろう。実際にこの法律は成立したが中身は特区ごとに決めるので取り立てて賛成する要素も反対する要素もない。毎日新聞は「制度設計はこれから」と書いている。

政府は内容の希薄さを笑顔の絵でごまかそうとした。

そもそも理解させるつもりがない(あるいは提案している人たちも理解していない)のだからここにどんな絵をつけるかは受け手次第である。ネットでは例えばバーコードを額に印刷されている人たちや中国の顔認識システムを引き合いに出し「国家が監視するシステムなのだ」と説明しているものがあった。煽ったのは前回書いたようにおそらく共産党あたりの議員だろう。

高校までの12年間の間あまりにも自分の頭で考えない学習様式を刷り込みすぎた。もはや政治的議論をする能力すら奪われてしまっている。おそらくそれは国民だけの問題ではない。政治家からも政治的討論の能力は失われているのだろう。

おそらく政府の恣意的な権力乱用(いわゆる独裁化)ではなく予想もしない事故で個人情報が漏れるなどの問題がでるだろう。5月1日のシステムトラブルに見舞われた持続化給付金のシステムは電通などが関わる実体のないトンネル会社に丸投げされたそうだ。今の日本の政府は国民生活に責任を取らない。おそらくこの制度も予算だけとって実施は責任を取らない会社に丸投げされることになる。中間にいる人たちだけが儲かる制度がまた一つできてしまったことになる。願わくばこの新しい特区制度が「毒にも薬にもならない」ところで浪費されるのを祈るばかりである。国民生活に影響が出るところでやられると、誰かの命を奪うことになりかねない。

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