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トランプ大統領が生み出した不安が世界に拡大している

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日本のニュースは当然ながら台風19号の被害一色になっているのだが、アメリカのABCニュースは時間を割いてシリアの事情について扱っていた。

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アメリカはクルド人を支援してきたのだがトランプ大統領が軍隊を一部撤収してしまった。バランスが崩れ虐殺や爆撃が起きているという。トルコはシリアを助けテロリストを殲滅するために侵攻したことになっていたはずなのだが、シリア政府はクルド人を支援し始めた。建前が完全に消滅しているが国際社会は非難はするが結局は何もしない。しないというよりそんな余裕がないのかもしれない。

民間人が犠牲になったという報道があり、例によって犠牲になった子供の映像なども流されてる。トランプ大統領のために子供が死んでいるという図式である。そのあとにトランプ大統領が身勝手なTweetを繰り返すという反発を生みやすい状態になっている。

そのあとに流されるのが弾劾プロセスの話である。ウクライナへの軍事支援をディールとして利用して選挙に有利になるような取り計らいをしてもらったという疑惑だ。やはりこの二つを結びつけてしまうので、シリア撤退も経済絡みなのだろうと結論付ける人も多いだろう。結局は内政の対立に利用されてしまうのである。

対立や宣伝が激化するのはトランプ大統領の支持率はそれほど下がっていないからだ。この辺りは安倍政権の岩盤支持がなくならないのに似ている。アメリカでは支持しない人のほうが多数派なのだが、岩盤支持層が40%以上もいてそこから下がらない。こうした岩盤支持層が何を望んでいるのかはわからない。外国への支援が「自分たちの取り分が取られている」という被害者意識になっているのかもしれない。

トランプ大統領は原因ではなくこうした気分の結果である可能性が高い。共産主義が消えてしまった今、アメリカは世界の警察官であるべき理由を見つけられなくなっている。かといって撤退してしまうと世界各地に混乱を引き起こしかねない。また軍事産業が巨大化しており戦争がやめられない。確かにアメリカは世界情勢に必要以上にコミットしており、実際には撤退したほうが良いのではないかと思える。問題なのは撤退ではなく中途半端な関与なのだろう。

生の情報に接する限り、我々がアメリカに依存するリスクは増えていてる。

第一のリスクはアメリカ撤退することによって一夜にして安全保障環境が変わることである。トランプ大統領のその日の機嫌によって政策は変わるだろう。記者とのやりとりに腹を立てて夜中に決めたことが日本に大問題を起こす可能性があり事前2予想できない。本土が脅かされることはないのかもしれないが、沖縄・北海道などの周辺地域には極度に不安定化するだろう。すでに朝鮮民主主義人民共和国籍と見られる漁船が日本海に進出してきている。アメリカの動向を見ないと対北朝鮮政策が決められないので日本は黙って大和堆を明渡すしかない。日本海は安全保証問題の最前線になっている。

保守を自称する人たちの中には「憲法第9条を改正して北朝鮮を攻撃すべきだ」と夢想する人もいる。護憲派をやっつける想像は気持ちがいいかもしれないが、それ以上の意味合いはない。当たり前のことだが武力で気に入らない政権を制圧することなどできないからだ。

次に逆にトランプ大統領のディールに付き合わされてしまう可能性もある。日米貿易協定がどうなったのか結局よくわからないのだが、中国とは一部妥協したとも伝えられている。つまりトランプ大統領の気まぐれに付き合わされている。経済だけではなく安全保障面でも気まぐれに付き合わされるか、逆に気まぐれに付き合わないように遠巻きになり何も決められないという状態が最悪あと5年も続くことになるだろう。

新興国情勢は自由貿易に依存する日本の経済に影響を与えるだろう。その原因は新興国ではなくアメリカの利上げなのだが一度危機が起これば元々の原因など誰も気にしなくなるだろう。トルコの経済はそもそも不安定になっており、その不安を背景にエルドアン大統領がシリア攻撃に踏み切った可能性も高い。しかし、そのシリア攻撃が経済制裁につながりトルコ経済を破壊する。ロイターはエルドアン大統領の軍事行動によってトルコ経済の軟着陸が難しくなったと伝えている。つまりトルコ経済はどのみちなんらかの形で不況入りする可能性が高くハードランディングの可能性も高まっている。新興国で危機が起きると資金の引き上げが起こりそれが周辺経済に波及する。軍事的な第三次世界大戦は起こらないかもしれないのだが、代わりに連鎖不況が起こる。

最後にトランプ大統領はアメリカ以外の武器使用国を見つけようと懸命になっているという問題がある。アメリカ政府は軍事費を削減しメキシコへの壁の建設に充てたい。すると武器業界が困るのでトランプ大統領は別の国に武器をセールスすることになる。必要かどうかは関係ない。とにかく買えというわけだ。消費税が上がっていることもあり「あの武器を買わなければあれができたのに」と指摘する記事も増えるだろう。これは日本の納税者に直接関わってくる問題である。

そんな中、日本は高齢者が多くなり「とにかく今動いているものはもう変えないでほしい」という気分になっている。このため日米同盟にしがみつかざるをえない。不安なものは見たくないので日本ではアメリカの国内ニュースが一切流れなくなった。世界の動向に注目しなくなった日本人は今後「想定外」の不安にさらされ続けることになるだろう。変えないツケを支払うのは多分将来世代だ。

与党は自分たちの対米追従政策を正当化し続け、野党も「与党の失策」ばかりを追求する。そんな中基本的な政策を見直すべきなのではないかという声は不安にかき消されてしまうのである。

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