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正解学習型の学校教育が消費税増税論議を暴走させる

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軽い気持ちで実質賃金も下がっているらしいので消費税増税はしない方がいいのでは?と聞いた。当然、延期すべきという答えがたくさんかえってくると思っていた。

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回答は4つしかなかった。延期が3で延期しなくてもいいが1だった。世間の評価というのはその程度のものなのだと思った。つまり、それほど大きな消費税反対のうねりはないのである。

それよりも驚いたのは知識の断片化だ。反対派の意見は野党のコピペであり短いものだった。唯一の容認派は「外税方式にしたら増税になるが内税にすると物価上昇だ」と言っていた。SNSからの知識は恐ろしく断片化している上に、与党も野党も情報が欠落しているので(隠していたり、自分たちがわかっていなかったりといろいろだが)おそらく情報の受け手は自分なりの見方が再構成できないのだろうと思った。

消費税に対する意見を固定するのは案外難しい。財政健全化、地方有権者への分配、市場の安定という3つの要素のある方程式を解かなければならない。パラメータは膨大なので自分なりの仮説を作ってモデル化した上で膨大なニュースを処理しなければならない。つまり、問題を自分で作らなければならないのだ。学校に入ってから「先生が出す問題」ばかりを解答し続けてきた日本人にはこれができないのではないだろうかと思った。

学校では数学ができなくても「誰か難しい問題を理解している人がいるんだな」と思えばいい。だから消費税の問題も「まあ、難しいことは誰かが考えてくれているんだろう」と思えれば、それはそれで良いのかもしれない。

仮に消費税増税を延期してしまうと、今度はもっと大変なことが起こるのではないかという恐怖心もある。無駄を省けば消費税を上げなくて良いと言っていた野田政権も結局諸費税増税を回避できなかったし、安倍政権も一回延期したが今回はやる気のようだ。少なくとも政府にはシナリオがあってその通りに進んでいるはずであると思えばそれから先は考えなくても済む。

だが、本当にそうだろうか。実は軽減税率の還元を巡って不安なニュースがある。時事通信社が伝えている。

今回の増税では食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率も導入される予定。複雑な仕組みに反対していた業界側も渋々、顧客対応などの準備を急いでいる。そんな中でポイント還元という新たな負担要因が突如現れ、反感を増幅させた。
 「この政策、ちょっとおかしいよ。なぜ現場の声を聞かずに強行するんだ」。業界筋は憤りを隠さない。詳細な制度設計はこれからだが、強引に事を進めれば混乱と不満の拡大は必至。夏の参院選もにらみ拙速に実施を決めた政府・与党の責任も問われそうだ。

https://www.jiji.com/jc/article?g=eco&k=2019020300279

これは2018年のニュースではない。2019年の2月になってもまだ設計さえ始まっていない。クレジットカードの中の仕組みがどうなっているのかはよくわからないが、クレジットカード会社は総額さえわかればそれを銀行に引き当てて小売に渡してやればいい。ラベルは必要なので「何を買いましたよ」という名札はついているが、それをシステム的に「これは食品だ」など識別する仕組みにはなっていない。だからポイント還元の仕組みを作るということはクレジットカードシステム全体を基礎から再編することになるということを意味している。クレジットカード会社が「顧客が何を買ったか」を管理しなければならなくなり、そのためには小売店がいちいちそれをクレジットカード会社に報告しなければならなくなる。

例えば、顧客が「私は8%の食品を2000円分買ったはずだ」とクレームを入れてくるとする。それを処理するのは、小売店なのかそれともクレジットカード会社なのかという話になる。つまり、要件すら決まっていないのだ。

だが政府はそれを考えずに、産業界側でなんとかしてくれるだろうとして「投げて」しまったのだ。

前回まで何回か北方領土の話を観察した。安倍首相は「私が北方領土を取り戻す」ということを言っていたが専門家たちは「どう考えても無理なのだから何か秘策があるのだろう」と思ったはずだ。つまり、答えがあるから安倍首相はこう言っているのだろうと思った人が多かった。しかし、実際には答えなどなかった。安倍首相は「プーチン大統領が落とし所(答え)を用意して問題を出してくれている」と勝手に思い込んだだけだったのだろう。

日本人はこうして全体的になんとなく「誰かが答えを持っているだろう」と考えてふらふらと漂流を始めた。これまでの正解学習型の学校教育が暴走を始めていることを意味している。そして何かが起きた時我々はまたあの「想定外だった」という馴染みの言葉を聞くことになるだろう。

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