今回は根拠がないのでちょっと短く行きたい。本予算関連の質問が始まったのだが安倍首相の表情が朝から何かおかしかった。でも「何があったのか」という報道は出ないと思う。
普通の自民党の質問は、安倍首相を讃えるコメントを自民党の議員に言わせ、得意げに安倍首相がそれを読むというのがお決まりである。午後はそうなっていて得意げになんたら5.0とか言っていた。
しかし、今回の岸田文雄の質問は質問というか自民党から官邸への要求リストのように聞こえた。安倍首相の顔は疲れ切っており、世耕大臣(解答者席)や小野寺元防衛大臣(質問者側)の顔もこわばっている。何か心配事がある感じなのである。一方で石破茂さんの顔はいつものようにニヤニヤして隣の何かの失言でちょっとだけ話題になった議員と楽しげにおしゃべりしていた。
岸田さんの質問はちょっとショッキングな内容から始まる。「これからも政府は税金を上げ続けなければならないから今回の消費税増税はちゃんとやれよ」というのだ。あからさまに自民党はばらまくカネが必要だからお前らが調達しろよと政権に迫っているのである。一方で企業が人材育成にかける費用をコストとして認めるようにも迫っていた(コストが控除されると法人税が下がる)ので、増税とはすなわち消費税を引き続き上げろということだ。
岸田さんたちが不満に思っているのは東京の一極集中化が是正できていないという現実だ。地方には不満が溜まっていてそれが政策要求という形で岸田さんにあがってくるのだろう。表の議論はなんとなく普通に進んでゆくのだが、裏では相当いろいろなことが起こっているのではないかと思った。嘘をつく子供(安倍さん)の動作はよくわかる。言い訳をしているうちに手の動作と声が大きくなり、同時に話すスピードが早くなってしまうのだ。だが、どんなに嘘をついても自民党のナカノヒトたちは納得していないのではないかと思った。安倍さんは焦ってどんどん喋りが早くなってゆく。
野党は自民党の党内基盤には全く関係がないので、安倍首相は彼らに嘘をつくことにそれほどのためらいはない。だが、地方は違う。彼らは裏ネゴを通じて安倍さんに「お前の言っている地方創生なんか絵空事だろう」と突きつける。そしてさらなる補助金や追加公共事業を要求するのだ。ファイナンスはお前らがなんとかしろと言っている。一方安倍さんは社長としてやりたいペットプロジェクトをたくさん持っておりそれを自慢しようとする。それにもお金は必要だが、岸田さんたちは笑って「そんなメシのタネにならないことはどうでもいいから」と聞き流すのだ。
すでに自民党は県知事選挙の候補者をまとめられなくなっている地域があり、これは国政選挙にも拡大しそうだ。読売新聞によると岸田さんはあからさまに二階幹事長に不快感を示したそうである。
自民党は村なので「岸田と二階のどっちが偉いんだ」とか「麻生と福岡県連のどっちが正しいんだ」などという話は全て安倍首相に持ち込まれるはずである。人事で二階さんの顔を立てたんだから、今度は政策で岸田さんの意見を聞いて顔を立てろみたいなことを言われたのかもしれないなどと勝手に想像した。そうでもしないとあのこわばった顔の意味がわからない。
表向きは和やかに議論を続けているが、彼らの緊張した表情が多くを物語っているように見えた。日本人は裏ネゴが全てで議会は単なる儀式(リチュアル)にしか過ぎない。それを探るのが新聞の役割だったわけで、いよいよ記者たちが大好きな政局の季節が始まったのかもしれないと思った。
ただ、村人が政局に夢中になっている間も、野党は統計偽装の問題を追求し、省庁は権益を手放すまいと自己保身に走り、そしてその裏で静かに「賃金上昇なき名目成長」が始まろうとしているように見える。どこかでバランスが崩れたときに何かが起こるはずなのだが、それは果たして国会議員たちが制御できるものなのだろうか?とも思う。