ざっくり解説 時々深掘り

中国が飛ばしたのは気象観測気球なのか偵察気球なのか問題

アメリカ合衆国に中国から気球が飛んできた。これが偵察気球なのではないかとして問題になりブリンケン国務長官の訪中が延期になった。

「気象観測なのか偵察気球なのか」を調べようと思ったのだがこれは調べるまでもなかった。アメリカはこれが気象観測気球だと認めてしまっているのだ。ではなぜ、これが外交問題に発展してしまったのか。やはり共和党と民主党の間の関係悪化が原因のようだ。つまりこれはアメリカの内政問題なのだ。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






調べる前は「そもそもこの気球がなんなのか」が主題になるのだろうと思ってた。だがその問題はBBCの記事で解決してしまう。BBCによるとアメリカはこれが気象観測気球であると認めている。だがどういう理由か「それを軍事目的に転用している」と主張している人がいる。主に保守系のメディアが騒いだようだ。

もともとアメリカ合衆国は旧大陸の迫害から逃げてきた人たちが作った国だ。このため、自分達の領域に他者が侵入してくることを嫌う。さらに9.11もトラウマになっているのだろう。自分達が他国の領土に出かけていて要人を殺害するようなことは平気だが観測気球だろうがなんだろうが自分達の領域に飛んでくると大騒ぎになるという非対称性がある。

自分達がやっていいことと相手がやっていいことは違うのである。

そもそも偵察気球に白という目立った色を使うはずはない。このことからもなんらかの間違いであったことは明白である。だが全米各地で騒ぎになったことでバイデン政権は引くに引けなくなった。

ここにトランプ前大統領が目をつけた。前大統領は撃ち落とせと言っている。仮にバイデン政権が中国に融和的な態度を取ればおそらく政治問題化していただろう。共和党に配慮した結果としてアメリカ合衆国は中国に対して対話姿勢が取れなくなっている。

頻繁に北朝鮮のミサイルが飛んでくる我が国からみれば「たかが気球」という気もする。北朝鮮のミサイル問題は所詮は他人ごとだが「自分ごと」になるとアメリカはこれくらい騒ぐ。

バイデン政権のこの問題に対する対応はかなり芝居がかったものだった。産経新聞が紹介している。「対応が遅れた」のではなく「安全なところに出るのを待って」バイデン大統領の支持によって撃ち落とされたと強調したそうだ。

もちろん中国側にも問題はある。

気象観測気球の制御を失ったのであればそれを事前にアメリカに報告すべきだった。一応は謝罪と協力も申し出ているが、ところが中国政府はこれまでも「民間」を装ってさまざまな軍事活動を行なってきた。官僚主義により失敗を恐れる人たちが上に問題を報告しなかった可能性も高い。加えて中国は極めて被害者意識が強い。今回も気球を利用してメディアと政府が中国を貶めようとしているなどと反論している。

いずれにせよ、今回の件でブリンケン国務長官の対話が阻害されたのは事実である。おそらく中国共産党もかなりイラついているだろう。この事実は重い。前回このブログでは「アメリカと台湾の政権切り替えをきっかけにして米中対立が起きる可能性がある」と心配する高位軍人の話を書いた。

今回は「たかが気球」でこれほどの大騒ぎが起きた。偶発的な衝突の可能性は意外に高まっているのかもしれない。つまり軍人たちの懸念が杞憂だとは言えなくなってきているのだ。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

“中国が飛ばしたのは気象観測気球なのか偵察気球なのか問題” への1件のコメント

  1. 辻英利のアバター
    辻英利

    気象観測用気球だと断定する根拠が薄弱!
    アメリカの二重性や非対称性は認めるが、それが気象観測の根拠にはならない。
    普通に考えて、気象観測用であっても高度80km以下は領空侵犯。
    また、1〜2万mの高度でアメリカ上空で具体的に何の情報を得て中国の為になると言うのか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です