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ChatGPTと考える日本の賃金を上げる方法

12〜18分

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Bloombergの「植田日銀総裁、「大きな負の需要ショック」なければ賃金圧力続く」という記事を読んだ。

この中で植田総裁は政府が政策的に賃金が上げる努力をしなければ人手不足が続き賃金上昇圧力が高い状態が続くであろうと言っている。基本的に労働力が不足しているという認識があるのだ。

しかし記事を読むと植田総裁は悪い人手不足について語っているだけ。良い賃金上昇を起こすためには何をすればいいかについては「日銀の仕事ではない」と考えているのだろう。

これまではこうした状況を整理することは難しかったが最近ではAIに疑問をぶつけ「要するに」と統合する事が可能になった。ここではChatGPTを話し相手に日本が何をすべきなのかを考えてみたい。

記事によると日本は「外的ショック(新型コロナやウクライナの戦争などを指すものと見られる)」デフレ状態を抜けインフレ状態に入った。その要因の一つが人手不足による賃金上昇である。

そのうえで労働力不足を解消するためには3つの政策が有効であると言っている。

  • 女性が正社員として働けるように支援体制を整える
  • 外国人に積極的に参加してもらう
  • AIの活用を通じて生産性を高める

しかしこれは悪い物価上昇を避けるための方策に過ぎずいい物価上昇を起こすための処方箋ではない。

そもそも日本がアメリカ市場で稼いでそれを地方に分配するという基本構想を捨て去らない限り効率化だけを進めても賃金上昇に繋がらないのではないかと感じた。ChatGPTも輸出依存型モデルでは人工的に国内還元をしない限り価格競争力の維持が優先されやすい傾向にあると言っている。

ChatGPTのと会話の中ではドイツは製造業中心から内需拡大に転換に成功したが日本ではこれが起こらなかったとしている。国内市場が冷えたままなので企業は日本市場に投資せずしたがって内部留保だけが増えていった。

ドイツは中間層を増やすことを優先したがアメリカ合衆国やイギリスは格差を拡大し富裕層に消費を牽引してもらおうとしている。アメリカはこのやり方で成功しているが政治的な不安定さという副作用も現れているようだ。

日本が内需拡大型に転向するためには戦略的なアプローチが必要。ただし日本人はそもそも戦略について考えるのが苦手。ここは実利的に「ゴールを決めて制度を設計し組み合わせる」のが重要と言い換えたいう。

ChatGPTのおすすめは次のとおりだった。まず産業転換を起こしてそれを中小企業や労働者に拡大させてゆくと言う順番だ。

  1. 付加価値の高い製品・サービス産業への転換(単価を上げられる市場)。
  2. 中小企業・下請けへの価格転嫁の仕組み改善
  3. 地域消費を支える賃金政策・教育投資・リスキリング

日本は企業の儲けを一旦は国が財政投融資で集めることで地方への分配を行っていた。一方でドイツは企業の取組が自発的であり政府は社会保障や教育への再分配を通じてこれを後押ししているという。

戦後連邦制に移行したことで地方の競争も盛んだったと考えられている。

このように考えるとドイツの成功した制度をそのまま移入したくなる。さらにドイツは外的な変化による挫折を経験しているため「ドイツ型制度は間違っていた」と言いたくなる人もいるかもしれない。

しかしながらChatGTPと問題をドリルダウンしてゆくと別の印象が得られる。日本は明確なゴールを設定せずあれこれと細かい政策を繰り返し「ああ、これもダメだった、あれもうまくいかなかった」と考える傾向がある。一方でドイツの制度はゴールを明確に示しており、したがってKPI(パフォーマンス測定の指標)も立てやすい。

卑近な例で言えばダイエットで説明できる。戦略的ダイエットというと何やら勇ましいが痩せるためにやるべきことは簡単だ。

摂取している総カロリーを計算し支出のバランスを整えるところから始めるべきであろう。つまりダイエットの場合は痩せることがゴールであり、そのためには摂取カロリーと消費カロリーの割合を計測する必要がある。そのうえで体重の変化を測定しこれをKPIにする。

これを「戦略的ダイエット」といえば多くの人は笑うのだろうが戦略とはつまりその程度のこと。

一度痩せだすとダイエットそのものが楽しくなる。これをChatGPTはウィンシクル(win cycle)と表現する。日本語では賃金・物価上昇のスパイラルというそうだがスパイラルにはネガティブな響きもあるため「好循環」という言い方が好まれるという。

一旦、好循環が作られるとこれをサポートするために最低賃金を上げることができるようになる。

この順番を間違えたのが韓国である。

ChatGPTに韓国の事例を聞いてみた。文在寅政権はまず最低賃金をあげて国内市場を作ろうとした。ところが却って労働市場を萎縮させ失業者の増加・未払・経営悪化などの深刻な副作用を経験している。政府による直接的な賃金上昇はあくまでも補助的に用いられるべきであって賃金上昇の主体にはなり得ない事がわかる。

さて、ここまではChatGPTを話し相手に(ChatGPTが明確な回答をくれるわけではなく考えをまとめるために利用しただけ)散漫に色々と考えてきた。

ここからわかったことは2つある。1つは日本には「デザイン型の政策立案」という概念が不足しているということ。もう1つは利益分配型の代表者(つまり国会議員たち)がいくら集まっても日本を成長させることはそもそもできないだろうということだ。

日本は「官邸主導型」「政治主導型」を志向する時期が長かった。安倍総理の官邸主導を思い浮かべる人もいれば民主党の政治主導に起源を求める人もいる。政治主導の要諦は「政権に責任を持つ人達」が国家プランをデザインしそれを大胆に実行するというものだったはずだが、日本の官邸主導はそうならず、総理大臣の思いつきを遂行する装置として官僚機構や地方自治体を振り回すだけに終わっている。

しかし日本は最初からそうだったわけではない。日本に高度経済成長をもたらした所得倍増計画は下村治氏らが共同でデザインしている。大蔵官僚という共通言語を持った人たちだった。こうした対立は戦後すぐにはすでに存在した。官僚派と呼ばれる人たちがおりそれに抵抗する人たちは党人派と呼ばれた。おそらく官僚派は吉田茂が意識的に作り出したものだろう。

こうした学派(スクール)を人工的に作る努力をしなければ日本では戦略的な思考が作られる環境を整えることは難しいのかもしれない。

清和会も福田赳夫氏が作ったときにはもともとはこうしたスクールの一つだったのだろうが、いつの間にか選挙互助会となり政治とカネの問題を乗り越えることはできなかった。官僚出身者が減り二世政治家の力が強くなってしまったからだ。

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