当ブログを定期的に閲覧している人の中には「自分でも記事を読んで独自の考察をしたい」と考える人がいるかも知れない。確かにREUTERSやBloombergの記事は豊富に手に入るが専門用語が多くてわかりにくい。ただ、最近ではAIを使って記事を要約できるようになった。
巷にはAIを使った効率的な学習法のコンテンツが溢れているが「具体的にやり方を知りたい」という人も多いのではないかと思う。
今回は高市総理の所信表明演説の評価に挑戦してみたい。REUTERSにコラム:「サナエノミクス」、アベノミクス2.0とは異なる軌道へ=高島修氏という記事が出ている。冒頭は高市政権の方針はアベノミクスと異なり期待が持てると書かれている。つまり金融市場は高市政権の政策を肯定的に捉えたと読みたくなる。
実際の質問内容をコピーしたものを準備した。ポイントだけを抜き出すと次の通り。
- 記事要約ができるAIとできないAIがある。
- 要約してもらっただけでは「なんかよくわからない」という印象しか得られない
- ドリルダウンしてゆくと意外とAIは記事の趣旨をよく理解している
- ただ派手に間違えることもある
まずは「わからないなり」に記事を読んでみよう。記事はサナエノミクスの肯定から始まっているのだが途中で大きく展開しており違和感がある。おそらく文章構成作業に慣れた人が読めば「ああ言いたいことは後段に書かれているんだな」と理解できるだろう。
次にAIに評価をお願いする。ただしGEMINIは最近Web記事にアクセスできなくなった。一方でAtlasという新しいブラウザー(記事要約機能がついている)を出したChatGPTは記事要約ができる。AtlasとWeb版のChatGPTは連携しておりどちらからでも過去記事やプロジェクトにアクセスが可能だ。
「リフレ」という言葉の意味でつまづく人もいるかも知れないが、このあたりはAIの辞書機能を使えば理解できる。AIの要約段階でリフレ(金融緩和・財政刺激)と補足されている。
記事は片山さつき氏が財務大臣に入ったことで抑制的になるだろうと言っており、バランスが取れた布陣を評価しているように見える。
今週、船出した高市政権の経済政策は市場が懸念していたようなリフレ色の濃いものとはならないだろう。
コラム:「サナエノミクス」、アベノミクス2.0とは異なる軌道へ=高島修氏(REUTERS)
しかしながら、実はこの文章の肝は記事の中盤に出てくる。要約版では結論として使われているため、要約だけを見ると見逃してしまうかもしれない。
もしも高市政権が日銀に不用意な政治圧力をかけ、円安が加速するようなことになった場合、日本版ミニ「トラス・ショック」のようなことが生じかねず、場合によっては高市政権を短命に終わらせかねない。
コラム:「サナエノミクス」、アベノミクス2.0とは異なる軌道へ=高島修氏(REUTERS)
ということでこの記事は実は高市総理に読んでほしいという思惑で書かれている。つまり最初に動機を作りあとで「本当に言いたいことを言う」体裁になっているのだ。少し「おじさんっぽい」ひねたやり方という気もする。
そこで記事の要約ではなく「筆者はサナエノミクスを評価しているのか」と再確認してみた。意外と構成を理解しているのだと感心させられる。
結論から言うと、このロイターのコラムは 高市早苗氏(=「サナエノミクス」)の経済・金融政策をやや懐疑的(慎重)に見ており、肯定よりも“警戒・批判寄り”の評価 をしています。
ChatGPT
ではこの高島修氏の主張はどの程度正当なものなのだろうか。これを考えるためには別の課題設定をしてみるのが良い。別の登山口から登ってみて結果が整合すれば良いからである。
今回、高市早苗総理がアベノミクスの継続を打ち出したためアベノミクスそのものへの評価が進んでいる。その中に、安倍総理の狙いは日銀による財政ファイナンスだったが内外から批判が予想されたために「第三の矢=構造改革」を付け足したのだろうとする人が多い。いずれにせよ安倍総理は構造改革にはさほど関心を示さなかった。
日銀による財政ファイナンスは「改革のための時間稼ぎ」でありそれ自体が目的とされるべきではないというのが普通の考え方。円安などの副作用も大きく金利が上昇し始めたときの出口もないからだ。実際に現在の日本は円安によるコストプッシュ型のインフレに陥っている。
そこで高島修氏の「そもそも時代錯誤だったが更に状況が変化した」という認識を確認してみることにした。時代が変化しているのになぜ政府はそれを認めることができないのか。
アベノミクスの建前はデフレ構造からの脱却のためには積極的な財政出動が必要だというものだった。しかしながら構造改革を先送りしたためアベノミクスはデフレ敵構造とデフレ心理を残したままでインフレ状態という「出口」に陥ってしまった。
結果的に岸田政権は有権者に説明ができずデフレ脱却宣言が出せなかった。デフレを脱却したのに、単に物価が上がっただけで政府が約束していたバラ色の未来は訪れなかったからだ。
さらに、そもそも安倍政権の政策とは距離を置こうとした石破政権はこのフレームワークを使わなかったというのがChagGPTの整理である。
結果的にChatGPTは次のようにまとめアベノミクスはその役割を終えたと評価しており、高島修氏の意見と整合する。そして間違った診断に基づいた処方箋は間違えたものになる。
ChatGPT
- 物価が上がっている以上、「デフレ克服」を掲げ続けるのは時代錯誤。
- 金融緩和・財政出動の副作用(円安・格差・財政圧迫)が顕著化。
- 政策の焦点は「構造転換・生産性・賃金」へ移すべき。
- 政府が「脱デフレ宣言」を避けているのは、この切り替えの正当化が難しいため。
実は我々が抱えている「なんとなく岸田・石破政権は何かをはぐらかしている」という評価はアベノミクスの評価が進まなかったことに起因している。AIに質問をしつつ記事を読み事で我々が持っている違和感をかなり明確に言語化できる。実に便利な時代になったものだ。
ただしChatGPTは大きくコケることがある。
今回はこのコラムを田巻一彦氏の著作だと勘違いしていた。田巻一彦氏と考えが近いからこそ高島修氏のインタビューを掲載したのだとは思うのだが、やはり間違いは間違いである。
相手は「所詮は機械」なので、なぜ間違えたのかを聞くのは時間の無駄である。再学習させて訂正を求めるようにした方が良いと思う。
ありがとうございます、ご指摘のとおりこの記事は 高島修さん(シティグループ証券チーフFXストラテジスト) によるコラムです。
ChatGPT
この点を踏まえると、前回の回答のうち「筆者の立場」の説明にはいくつか修正が必要です。
以下に、高島氏の視点に即した正しい整理を示します。

“AIを使って小難しい経済記事を読む 高市総理の所信表明演説を評価する” への3件のフィードバック
[…] まず結論を書く。別の投稿で整理した通り現在の自民党政権の問題はアベノミクスの総括が終わっていないところにある。すでにデフレからは脱却しコストプッシュ型のインフレに陥っているが未だにデフレ脱却宣言が出せずにいる。治療の成果がでないうちに患者の症状が変わってしまったのに医療ミスを指摘されたくない医者が新しい診断書を出せない。結果的に間違った処方で薬が出されることになり効果が出ない。そんな状態だ。 […]
色々なAIツールが増えて、GEMINIやChatGPTだけではないツールも増えましたね。最近だと、GoogleのNotebookLMを知って試している最中です(全然使いこなせていませんが)。自分でPDF・テキストデータ・URLを用意して読み込ませることで、文章の要約などをするだけでなく、音声解説や動画解説までしてくれるところがすごいなと思いました。
ただ、こういうAIサービスは海外が多いので、さらに日本のデジタル赤字が増えるんだろうなということと、でもこのAIを使うことで日本の産業が効率的になって利益が増えれば、デジタル赤字というのも問題ないのではないかということを思いました。
コメントありがとうございます。
機械要約が進むとこれまで手が回らなかった「これってどういう意味なんだろう?」という探索に時間が使えるようになるなあと感じています。ただ、そもそもSNSで情報が溢れているので多くの情報にさらされる危険も増大するわけですよね。アウトプットをまとめる時間が必要ですが、みんなに読んでもらって初めてモチベが上がるような側面があり、これはこれでなかなか心理的な敷居が高い……
個人的にはAppleユーザーなので動画まとめなどはOSで処理してほしいところなんですが、Appleはどうもこの分野ではちょっと後発になりつつあるようです。GEMINIは最近URL参照ができなくなりましたが、これはNotebookLMを使えってことなですかね。