AIツールの発展で苦手分野の記事の理解を深めることができるようになり、探索と発見により多くの時間を使える。ただし読者が知りたいのはこうした概念論ではなく「今すぐ真似できる具体的なやり方」なのかもしれない。
本日はREUTERSの「レーガン氏の自由貿易擁護演説が脚光、米カナダ間の新たな火種に」を読む。
表面的にはトランプ大統領の稚拙な経済と政治に対する理解を批判する結論だが、AIを使うとそれ以上の洞察が得られる。高市政権の選択的投資が国家経済に与える悪影響がわかる。
REUTERSの記事はトランプ大統領を激昂させたオンタリオ州のCMについて言及している。トランプ大統領は記事は切り取られたと主張するが本当にそれは切り取りだったのか?という内容。
記事はレーガン大統領の狙いについて議会をなだめつつも保護主義の激化を防ごうとしたと評価している。これについてChatGPTに聞いてみた。当然最初の質問は「レーガン大統領の意図」についてだ。本当に読み込みが正しいのかを検証する。
レーガン大統領は日本はダンピング協定に違反したと主張している。しかしながら協定は「日本の勝ちすぎ」を是正する内容。アメリカ人は「自分たちは世界一なのだから勝てないのはおかしい」と考えそれを他国に押し付ける傾向がありこれを「自由かつ公平」と言っている。
これはアメリカ人一般に言えることだが彼らの言う「公正(Fair)」はほぼ自分たちに都合よくという意味だと考えたほうがいい。英語のit is not fairは「お前、ズルいぞ」くらいの意味合いなのだ。
ただここでまとめを終えてしまうとアメリカ人は厚かましい人たちでトランプ大統領は当時の状況を理解していないダメな大統領だという結論で終わってしまう。
そこで「しかし日本は結局優位性を失った」という新しい事実を入れてみる。
- 日本は製造で勝ちすぎた
- しかし、それは価格競争が激しく利益率が低い分野での成功に過ぎなかった
- レーガン政権は「脱製造」に舵を切り、設計・アーキテクチャ分野に力を入れることにした
- この目標のもと研究開発に力を入れるようになった
- 次第に製造(アジア)と設計(アメリカ)の分業が進み、アメリカ合衆国の優位性が復活した
- その後クリントン政権により製造業(半導体)からサービス・インフラ(IT)への支援シフトが起きた
このときに「国家安全保障」の概念が取り入れられているが、これは議会に対して「半導体は重要産業である」との認識を示す役割が大きかった。
つまり、アメリカ合衆国が半導体で優位性を取り戻したのは保護主義の結果ではなく、危機感を背景にした構造改革だったということが言える。
先日来2024年と2025年のノーベル経済学賞の研究成果をご紹介している。国家を成長させるためにはイノベーションが重要。しかし国家がイノベーションを主導することはできない。だからイノベーションが起こりやすい環境を整える必要がある。さらに成果が得られない分野(イノベーションの「卵」過程と終わりかけたプロダクトの整理)の面倒は誰かが見なければならず、国家が担当するのが最も効率的だ。
今回のChatGPTを使った研究からレーガン大統領は「製造業から設計業へ」という道筋を作り、クリントン大統領は「製造からサービスへ」という道筋を作っているとわかる。これは日本がかつて国家主導(池田政権)で太平洋ベルト地帯という重工業軸を作ったの似ているのかもしれない。さらに外国からの研究者たちを優遇しアメリカ合衆国の産業が知的財産にアクセスしやすい知的環境を作っている。
トランプ大統領は名誉欲に駆られ「レーガン大統領の正統な後継者である」と考えたがっているが、レーガン政権の考え方の基礎はまるで理解していないということがわかる。それだけにオンタリオ州のCMはクリティカルヒットだったのだろう。
ニュースを読むだけでは単なるトランプ政権批判(トランプは何もわかっていない)で終わってしまうところだ。しかしながら、本来は資本主義におけるイノベーションの重要性と国家がイノベーションに果たす役割を理解することこそ重要である。
失われた日本の当事者である自民党の人気は「風前の灯」だ。このために高市政権は即効性がある対策をすぐに打ち出さなければならない。このために掲げているのがワイズスペンディング(責任ある積極財政)だ。しかしそれは政治的思惑に左右されやすい。
しかしながらこれは先細っている国家資金を「今すぐ儲かりそうな分野に投資する」ということを意味し、本来の資本主義の考え方を逸脱する。本当に儲かりそうな投資は「自由な」海外に流出し、国内には支援金目当てのプロジェクトしか残らない可能性が高いだろう。実際にこれは安倍政権以降のトレンドになっている。ChatGPTはこのトレンドを整理し「イノベーション環境としてはリスクが大きい」と整理している。
さらに本来は世界のイノベーション・エンジンだったアメリカ合衆国で「反イノベーション的な」動きが起きていることも懸念材料なのかもしれない。中国も日本もアメリカ合衆国の自由なイノベーションに依存した産業構造になっていると考えると、これも日本の成長にとっては悪材料と言えるだろう。
いずれにせよ、AIの登場によって記事の内容を理解するだけでなく、記事理解を下にしたちょっとしたおでかけ的な探索が楽しめるようになった。当ブログのコメント欄では限界も多いがQuoraの政治フォーラムではまとまった投稿も可能である。ぜひお時間があるときに覗いてみていただきたい。
