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麻生太郎さんに教えてあげてほしい難民のこと

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麻生太郎副総裁が、北朝鮮有事の際には武装した難民が押し寄せてくるかもしれないから真剣に議論すべきだなどと言っているようだ。

この発言は背景がよくわからない。麻生さんがおかしくなっていて妄言を繰り返している可能性もあるし、安倍首相へのカウンターになっている可能性が捨てきれない。つまり、難民について想起させると、安倍首相の北朝鮮への挑発に対して「これはまずいのでは」という感情が生まれる可能性がある。そうなると総選挙で不利になり、自民党が政権を維持する程度に負けることで安倍首相の退陣や弱体化につながる可能性があるのである。一方で、麻生さんは過去にもヒトラー発言を連発しているので、単におかしくなっているのかもしれない。さらに、おかしくなっていて、なおかつ安倍首相を後ろから撃とうとしているのかもしれない。

ということで麻生さんを避難していても仕方がない。だが、自称リベラルの人たちは反論する枠組みがないので、関東大震災などを持ち出してまた朝鮮人を虐殺するのかなどとやっている。この類の脊髄反射がよくないのは、実際に何が起こるのかという現実的なパースペクティブが失われ、概念的な「人道」の話になってしまうという点だろう。

つまり、安倍首相が国際的な場所で北朝鮮を煽れば(たとえそれが相手の挑発に乗った結果であったとしても)それは現実的に北朝鮮の人たちに大きな害を及ぼすことになる。だが、それが朝鮮中央放送の中で怒っているだけならまだ「まし」と言えるかもしれない、実際には国内問題として対処する必要が出てくる。

北朝鮮から武装した人々が難民として流れてきた場合にはどうなるのだろうか。日本は難民条約を批准しているので、押し寄せてくる人々にどのような庇護を与えるのかを国際的に宣誓する必要がある。だが「当時の難民について」の規定だったので、のちに「同じようなことが起きた時」の規定が加えられた。だから日本は北朝鮮難民に保護を与えなければならない。

もちろん、この時に国内の治安維持のために必要な措置がとれるので、武装していれば解除を求めることは可能だろう。日本国民は武装してはいけないことになっているので、北朝鮮から渡ってきた脱落した軍人が武装していたら武装解除を求めなければならない。だが、国際的な交戦ではないので一方的に射殺することは許されない。また、彼らを追い返すことはできない。難民条約でそう決まっているからだ。日本には難民を保護する法的な義務があるのである。

さらに、難民をいつまでも収容所に閉じ込めておくこともできないようだ。他の外国人に与えているのと同じ権利を認めて保護しなければならない義務が生じるからである。難民に対する身分証明も行わなければならない。

ほとんど不法移民のようにして渡ってくるように見えるのだが、非常事態においては不法ではなく「合法な難民」であるという点に関する理解が必要だ。日本は審査を厳しくして渡ってくる人たちを「難民であると認めない」ことでこれを乗り切っている。しかし、北朝鮮の場合はこれが当てはまらない可能性が高い。

第一に難民は船を使って大量に渡ってくる可能性がある。これまでは飛行機で限られた数の難民が渡ってきただけなので「処理」ができたわけだが、普通の港や海岸に流れ着く可能性がある。つまり、新潟や福井の海岸に常駐の職員をおいて、武装しているかどうかを検査した上で、収容施設に連れて行く必要が出てくる。中国やロシアも同様で北朝鮮から流れてくる人を追い返すことはできなくなってしまう。陸続きなのでこれはかなりの数になるだろう。だが、日本にも漁船などが流れてくる可能性は排除できない。普段から日本海で操業している北朝鮮の漁船などがあるからだ。

次に日本はこの件に関して「非当事国」とは言えないので、もし「この人たちは難民ではない」とは言って追い返すことはできない。北朝鮮がアメリカや日本への脅威であるという理由だけで北朝鮮を攻撃することはできないので、必ず人道上の懸念があり北朝鮮国民を保護できないというような「言い訳」が出てくるはずだ。となると、一方では人道上の危機があると言っているのに、日本に流れてきた人は「難民とはいえない」と言えないということになるだろう。

もともと難民条約は、第一次世界大戦と第二次世界大戦で出てきた無国籍者保護のための取り決めが元になっているものと思われる。このために、難民を経験したことがない日本から見るとかなり手厚い(あるいは過剰に見える)保護になっている。ヨーロッパの状況を見ると「国境を閉めて追いかえせばいいじゃないか」などと思ったりすることもあるのだが、それができないのは難民がヨーロッパにとって現実的な問題だからなのだろう。北朝鮮で混乱が起これば日本も同じ経験をすることになる。

もちろん北朝鮮の状況が整えば難民扱いは解除されて、難民を国に返すことができる。しかし、何年も(あるいは何世代も)状況が混乱し続けると、実質的に日本に定住することになる可能性もあるだろう。日本は旧植民地の人たちすらうまく扱えていないので、これは社会に新しい混乱を与えるだろう。

安倍首相が「北朝鮮を追いつめろ」というのは、確かに日本人としては当然の感情とも言える。核兵器を突きつけられて脅されているからである。確かにアメリカが背後にいるので勝てる見込みも高いだろう。だが、どんな発言であっても責任が伴う。国連で堂々と「北朝鮮を追いつめろ宣言」をしたのだから、日本はアメリカの後方支援として軍事的な費用負担をすることになるだろうし、難民に対しても「知りません」とは言えなくなった。国内的にはいろいろ言い逃れができる安倍首相だが、海外の世論まではコントロールできない。ヨーロッパはすでに難民を抱えているので、日本が同じ状況になれば同じような待遇を求めることになるだろう。

安倍首相の国連での発言は、考えようによっては日本が真に国際社会の一員でいるというのがどんなことなのかを学べる機会にはなるかもしれない。さらに、無謀な首相を抱えることがなぜ危険なのかということを身を以て知ることになるかもしれない。

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