国家情報長官室から出された台湾有事リポートが物議を醸している。中国は2027年までに台湾へ侵攻する計画を持っていないとしつつ、日本の高市総理が「政策を変更」して中国を刺激する可能性に言及する内容だった。日本の親台湾・親中国双方の論者は、これを「ギャバード・レポート」と矮小化しようとしている。
なぜこのようなリポートが出たのかは定かではないが、日本での解釈は主に二つに分かれる。中国との経済ディールを優先するトランプ大統領の意向を反映したという見方と、ギャバード氏個人の問題意識が色濃く出たとする見方である。あるいは、アメリカが「日本の暴走」を懸念しているのか、あるいは将来問題が生じた際に「日本の責任」とする布石なのかもしれない。
いずれにせよ日本の親米・親台湾派の議員はかなり慌てており「あんなものはギャバードレポートだ」と考えたがっている。
しかし、より深刻な問題がある。トランプ大統領は今回のイラン攻撃において、米側(軍および情報機関)のリスク評価を軽視し、イスラエルのインテリジェンスに依拠した可能性がある。そして複雑な問題を体系的に理解することを避け、最終的には直感で判断し、誤れば「知らなかった」「関係ない」と距離を置く傾向が見られる。
今回も中国と日本の関係について問われた際、「詳しいことは分からないから高市総理に聞いてほしい」と対応を委ねている。関心そのものが薄い可能性すらある。
この結果、アメリカ外交において本来重視されてきた積み重ね型の関係構築は機能不全に陥り、国家情報機関の分析でさえ政策決定に影響を及ぼさなくなりつつある。
こうした状況を補うため、「トランプ大統領のインナーサークルに入り込み、直接コミュニケーションを取る関係を構築すべきだ」と焦る専門家もいる。しかし、内側に近づけば近づくほど、気まぐれな意思決定に巻き込まれるリスクもまた高まる。
今回の問題を大きく捉えれば、1945年体制が1989年、そして2026年と二度にわたって大きく揺らいだと見ることができる。国家中心の秩序は経済ネットワーク中心の秩序へと移行し、さらにそれが属人的な意思決定に左右される段階へと変質しつつある。いわば「悪夢のような世界秩序」の入口である。
しかし目の前の現実を見る限り、日本はこうした変化を受け入れきれず、従来の秩序に依存し続けたまま、その崩壊に巻き込まれているように見える。それは日本人にとって、直視することの難しい現実である。

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