9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方

トランプ大統領は強いメッセージと大胆な政策によってアメリカを再び豊かにすると約束してきた。しかし、その経済政策は場当たり的な対応の連続となっており、結果としてアメリカ合衆国政府と国民に新たなコストを押し付ける形になりつつある。関税政策、移民政策、軍事行動など、さまざまな分野で巨額の支出や制度的な混乱が生じている。

その象徴ともいえるのが、現在問題になっている関税還付である。トランプ政権の関税政策の結果として、政府は巨額の還付金を返還する必要に迫られている。しかし既存の行政システムでは処理が追いつかず、新しいシステムを急いで構築しなければならないという。

日本の有権者も、この問題を「他山の石」として、政治に対する白紙委任がどれほど危ういものかを改めて考えるべきだろう。

トランプ大統領の場当たり的な経済政策のために、アメリカ合衆国国民は高いつけを突きつけられることになりそうだ。関税還付が始まるが、手計算ではとても間に合わないため「新システム」を導入するという。

CBPは、連邦最高裁が無効とした国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税について、輸入企業が他の関税を含め一括で申告していると説明。IEEPAに基づく関税を除外するには手動で処理する必要も一部で生じるため、対応する人手が足りず、自動化する新たなシステムが必要だとしている。

関税還付「即時処理不可能」 45日以内に新システム―米当局(時事通信)

国際貿易裁判所は関税還付金の即時返還の命令を一時停止した。米税関・国境警備局(CBP)が「現在のシステムではとても対応できない」と申し出たためである。CBPは新システムを導入し関税の還付を始めるが、還付期限が伸びれば伸びるほど利子負担が重くのしかかることになる。関税さえ導入できれば所得税などが減免され、アメリカ人が豊かになるというトランプ大統領の言葉を信じた有権者は、新しい負担を突きつけられることになった。

アメリカ合衆国を安全にするという触れ込みで始まったICEキャンペーンでは、ノーム長官が2億2000万ドルをDHSの宣伝経費として浪費していた。内容を見ると、DHSの宣伝なのかノーム長官のプロモーションビデオなのかよくわからないものだった。結果的にノーム長官は議会から浪費を責められ、更迭されている。

トランプ大統領がイスラエルにそそのかされて始めたイラン攻撃も、最初の100時間で37億ドルの出費が必要になった。イラン側が体制転換や核兵器開発の放棄に応じなければ「全く無駄な出費」ということになってしまう。

このようにトランプ大統領のプロジェクトはどれも中途半端に終わっており、かなりの出費を伴っている。その一因は、トランプ大統領の力強いメッセージを信じ、「トランプ大統領には問題もあるが、結果的にアメリカのためになる」と安易な白紙委任状を手渡してしまったアメリカ国民にもあるといえるだろう。

しかし、これだけでは終わらない。対イラン攻撃で原油価格が高騰している。トランプ大統領が戦争をやめない限り、アメリカ合衆国のインフレは高止まりするだろう。当然、金利は下げられなくなる。

さらに雇用環境が悪化している。2月の新規求人は予想を下回った。政権に批判的なメディアは「アメリカ合衆国の景気が悪化している証拠だ」と言っているが、寒い冬の気候が影響した可能性がある。

ところが、そもそも「なぜ厳しい冬の寒さで求人が下回るのか?」という問題がある。実はアメリカ合衆国で「常時雇用」が少なくなっているのではないかと感じるが、この仮説は検証のしようがない。終身雇用がベースだった日本と違い、そもそもアメリカ合衆国には正規・非正規という考え方がない。だから「非正規雇用化が進んでいる」という統計が取れない。このためアメリカ人は「なぜ自分たちの暮らしが余裕を失っているのか」を言語化できない。

アメリカの就職事情は、おそらくかなり不安定化しているのだろう。しかし統計がないために誰もそれを指摘できず、したがって「政治に対するうっすらとした不満と諦め」が交錯している。仮にこのままコストプッシュ型のインフレと景気悪化の組み合わせ、いわゆるスタグフレーションが進めば、FRBの金融政策はかなり厳しい選択を迫られることになる。2つの問題を同時に解決することはできないため、一旦どちらかを犠牲にする必要がある。

米FRB、雇用と物価の板挟み 労働市場悪化と原油高「二重のリスク」(REUTERS)

実はアメリカ合衆国は一度このスタグフレーションを経験している。1979年はイラン革命が起きた年だが、原油価格が高騰した。当時のFRB議長だったボルカー氏は「ボルカーショック」と呼ばれる痛みを伴う改革を行った。その後、結果的に原油価格が落ち着き、レーガン政権が金融・IT企業が牽引する新しい産業構造を推進したため、「ボルカーショックは成功だった」という評価になった。しかし、戦略的に産業構造を転換し、なおかつ原油価格という外部要因も味方しなければ、たとえ第二のボルカーが現れたとしても、今のアメリカ経済の問題を解決することはできないだろう。

確かにトランプ大統領は場当たり的な政策でアメリカ人の税金を浪費している。しかしそれはあくまでも表面的な問題にすぎない。アメリカ経済が直面する問題を正面から捉えようとせず、「小手先の解決策」を乱発することで、かえって高い代償をアメリカ国民に負わせようとしていることこそが問題なのだ。

あくまでもこの問題は日本人にとって「対岸の火事」と言える。しかし、負担を避けようとして高市総理に白紙委任を渡してしまった日本の有権者も、この構造を「他山の石」と捉えるべきなのではないか。

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