OpenAI社に対するキャンセル運動が始まった。アメリカ民主党や日本の立憲民主党のような「中途半端な意識の高さ」が、どのように崩壊していくのかを示す事例として興味深い。
意識高い系政党・意識高い系企業の崩壊過程には、一種の共通した構造がある。高い理想を掲げ、生成AIの旗手となったOpenAI社も、いまやその構造に絡め取られつつある。
ChatGPTは「政治的に正しい」回答が多く、一部のユーザーからは「どこかお高く止まっている」という印象を持たれてきた。一方で、技術系企業であるGoogleが運営するGeminiは、ユーザーの意欲を阻害しにくい設計となっている。
アメリカのAI企業と創業者には、いくつか異なる心理的バックグラウンドがある。現在の社会を非効率なものと捉え、テクノロジーによって改造すべきだと考える思考と、人類の叡智をAIによって高めようとする思考である。OpenAI社のサム・アルトマン氏は、後者の立場から崇高な理想を掲げてChatGPTを開発した。
しかし、その「意識の高さ」ゆえに、ChatGPTには「どこかお高く止まっており、前置きが長く、肝心の質問には答えない」という評価もあった。
もともと営利企業にはならないとしていたOpenAI社だが、マイクロソフトなどから資金供与を受けるようになると、先行投資を正当化するため、それなりのビジネスプランを求められるようになった。柱は三つある。第一に医療・金融などのプロフェッショナル向けサービスへの浸透、第二に政府など公共事業への傾斜、第三にコンシューマー向け市場への展開である。
ここで大きな問題が生じた。Claudeを展開するAnthropic社が、国防総省へのフルアクセスを拒否したのである。人殺しの道具と評価されることを避けたかったためだ。これに対し、国防総省はAnthropic社を排除し、取引先にも同様の対応を求めた。
- 米防衛企業、アンソロピックAI技術排除へ トランプ氏の禁止措置で(REUTERS)
これを好機と捉えたサム・アルトマンCEOは、急いでアメリカ政府との契約を結んだ。ところが、これがユーザーの離反を招いた。ドナルド・トランプ大統領がイラン攻撃に傾斜するなか、「人殺しに協力する企業のアプリは使えない」として削除するユーザーが増えていると、BBCが報じている。
政党対知識人という対立構造が形成されるなかで、政府に協力しつつ一般ユーザーの支持も得るという戦略は、次第に難しくなりつつある。
広告展開についても取り組みは中途半端である。古くから広告事業を展開してきたGoogleは、社内倫理体制を整備し、広告主や一般ユーザーの信頼を獲得してきた。一方、OpenAI社には、いまだ広告事業の責任者が明確に存在せず、倫理体制も十分に整っていない。
ChatGPTに広告展開について尋ねると、当初は「広告依存になればOpenAI社は終わりだ」と出力していた。しかし、広告関連の記事を読み込ませると態度が一変し、「今後は広告事業が重要であり、そのためにはユーザーの生活に深く浸透し、信頼を勝ち取る必要がある」と回答が変化した。
これに呼応するように、ChatGPTは摩擦の少ない、いわば「お高く止まっていない」新しいGPT-5.3 Instantを導入した。しかし、従来の路線を引きずった改良にとどまったため、Geminiと比べると中途半端な印象が拭えない。
さらに、実際に使ってみると、基本的な構成機能が明らかに低下している。メモリなどのリソースを節約しようとした結果、文章の途中から精度が落ちる場面も見られる。短文応答に過度にチューニングしたため、従来の「深く使い込むユーザー」への対応力が弱まっている。
自ら掲げた高い理想を維持する環境を整えられず、中途半端な妥協を重ね、既存の支持層も失い、新たな支持層も獲得できない。この構造は、多くの意識高い系企業・組織・政党に共通して見られるものである。現時点では、OpenAI社もまた、その道を歩みつつあるように見える。

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