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高市・トランプ関係が早晩行き詰る理由

13〜19分

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一部で日本は右傾化・ポピュリズム化しているという懸念がある。しかし実際には無責任化がさらに進展している。AP通信の選挙レポートを読むと無責任化はきちんと認識されているようだ。

まず「日米関係が行き詰る」とはどういうことかを定義しておきたい。日米の期待が裏切られると「蜜月は苛立ちから衝突へ」変化する。逆に期待のズレが管理されていれば衝突は起こらない。

結論を書くとおそらくトランプ大統領か高市総理がこの期待のズレを露呈させることになるだろう。起きるか起きないかではなく「いつ起きるか」の確率的問題だ。

アメリカ合衆国はアメリカの株式市場を支える低金利が崩れ、日本国債金利の高騰が世界的に波及することを恐れている。またアメリカ合衆国の覇権を維持し中国を抑えるために、日本が安全保障面で具体的に貢献してくれることを期待している。

一方で日本は世界一強い国アメリカ合衆国の力強いリーダーであるトランプ大統領が高市政権を支え、これまでと同じように中国を抑えてくれることを期待している。またアメリカ合衆国が資本主義・自由主義をこれまで同様に支え続けてくれると信じている。

しかしこのズレは長い間「安全保障と外交について詳らかにすることは差し控える」との答弁で管理されていた。

日本は右傾化・ポピュリズム化するのではないかと懸念する欧米メディアも多い中、AP通信は冷静に高市総理の提示した有権者に対する契約書には実質的に何も書かれておらず有権者も何も理解していないと記述している。つまりnew conservative shiftには内容がないと書いている。

小谷哲男氏によるとアメリカ合衆国の関係者からは「高市政権は本当にアメリカ合衆国議会の懸念を理解しているのか」と苛立つ声が多く聞かれるという。

声が伝わらないのは当たり前だ。REUTERSによると高市総理は閣僚とは話をしていない。このREUTERSの報道は日本の週刊誌新潮にも同じような記述があり、高市政権の内情を正確に捉えているものと推定できる。

では、実際に高市総理はなんでも一人で決めることができるのか。

実は社会保障の負担の議論を国民会議に押し付けようとしている。経済成長関連の会議を高市総理周辺が独占していることから「使う議論は自分たちでコントロールし、徴収する議論はこれまでの枠組みの外で責任を分散したい」という傾向がある。国民会議の前提は少数与党だが、衆議院の3分の2を獲得した現状では意味がない。

金融市場は冷静に「高市政権の財政はそれほど拡張的にならない」と見ている。高市総理の言葉の端々に「検討を加速」「環境整備に務める」という言葉が使われている。これは「やらない」という永田町独特の表現だ。

実は憲法改正においても同じようなことが起きている。衆議院の3分の2を獲得したので自民党だけで憲法改正案が発議できる。しかし実際には国論を二分することを恐れ「環境整備に務める」を連呼している。

実際に憲法改正ができるのにやらないのだから、当然支持者たちは高市総理を疑うことになる。すると高市総理は中国に強硬な発言を繰り返すだろう。トランプ大統領から絶大な支持を得ているのだから「何を言ってもトランプ大統領が守ってくれるはずだ」という期待がある。

これは「モラルハザード」の典型的な症状だ。アメリカ合衆国はこうした表面的で依存的な勇ましさを最も嫌う。

ではこれはいつ崩れるのか。

最初のルートはトランプ大統領経由だ。アメリカ議会は早晩高市総理は官僚とのコミュニケーションを重視していないと気づくだろう。結果的にコミュニケーションパスがトランプ・高市ラインに集約される。

トランプ大統領の選挙キャンペーンが順調であればよい。トランプ大統領はヨーロッパのエスタブリッシュメントを敵視しつつ、グリーンランド、ベネズエラ、イランなどの問題に夢中で、日本のことなど気にしないだろう。しかし、選挙キャンペーンに行き詰まれば、別の成果を求め日本や韓国などに注目するかもしれない。

仮に中間選挙でトランプ大統領・共和党が負けると、形式的にはオバマ大統領時代の逆バージョンの状況が起きる。オバマ政権下のアメリカ合衆国は水面下で集団的自衛権の行使を日本に働きかけていた可能性が高い。だから安倍総理の説明には無理はあったが破綻はなかった。しかしトランプ大統領はあからさまに日本に対して圧力をかける可能性が高い。

昨今のトランプ大統領の発言を見ると「ディールを総合パッケージ化」する能力を喪失しつつある。ベッセント財務長官が財政はうまく仕切るだろうが、ヘグセス国防長官に同じ役割を期待するのは難しいのではないか。

日本のメディアでもトランプ大統領の言動や政府閉鎖については伝わっている。しかしこれらがけっして「アメリカ合衆国の政治が行き詰まっている」との結論に結びつくことはない。日本のメディアは注意深く骨を取り除いた魚だけを消費者市場に流している。つまり突然日本が「主語」になった瞬間にかなり大きな動揺が走るだろう。

一方でモラルハザードに陥った高市総理の失言が発火点になる。これまでの伝統的な日本の統治システムでは官僚がうまく「政治の介護」をしてきた。しかしそもそも高市総理は官僚と話をしていない。

加えて総務大臣時代には総務省から出てきた文書を「捏造」と言い放ち総務官僚を不機嫌にしている。安倍総理時代の財務省では安倍総理時代の不始末から死者が出ている。またそれを庇った官僚も無惨に切り捨てられている。これは森友学園問題として知られる。

こうした経験が積み重なった結果、官僚はもはや総理大臣を守る意欲を失った。高市総理の「台湾有事発言」は彼女のモラルハザードの結果と言えるが、ブレーンだった今井尚哉氏との不仲を招いた。また、外務省の官僚も総理大臣を守ることはなく「国会答弁で自分たちはできる準備はしていた」と自己弁護に終止している。

欧米では「日本もポピュリズム陣営に加わった」とか「保守化・右傾化が心配だ」とほのめかす媒体も多いが、APの記事を読むと、日本政治に詳しい専門家たちが、今回の選挙には中身がなく「日本はおそらく何も約束を実行しないだろう」と冷静に見ていることが分かる。

しかしながらこの構造は明らかに持続可能性を欠いている。さらに日米両国とも様々な矛盾をリーダーが抱え込む「ダム」のような役割を果たしている。ダムは計画的な放水を通じて治水を行う装置だ。しかしその管理機能は徐々に失われつつあるようだ。放水機能が失われたダムは単なる水爆弾ということになるだろう。

では「日米同盟に溜まり続ける水」とはなにか。それは対立ではなく無責任の蓄積から生まれる意識のズレである。

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