トランプ大統領がガザ和平の議席をお金で売ろうとしていると書いた。この記事だけを読むと「トランプ大統領のせいで国際秩序が崩壊した」と考える人が出てくるだろう。だがそれでは終わらない。実はこの話にはエスタブリッシュメントの崩壊という別の側面がある。トランプ大統領はエスタブリッシュメントに対する疑いの結果として生まれた大統領なのである。
トランプ大統領の就任前後に「ザ・テクネート・オブ・アメリカ」という構想が話題になった。アメリカ合衆国には政治家に対する根強い不信感があり「技術に詳しい人達が直接統治したほうが効率的な国家運営ができる」という考え方がある。この技術官僚が西半球に自立圏を作ってアメリカを立て直すというのが・テクネート・オブ・アメリカの骨子だ。
実はこの技術官僚支配がガザで採用されそうになっている。
米国の計画では、ガザの日常的な統治はパレスチナ人15人で構成されるテクノクラート(専門知識をもった官僚)による委員会が担う。ホワイトハウスによると、同委員会は、ガザ地区出身のパレスチナ人で、パレスチナ自治政府で複数の役職を歴任したアリ・シャアス博士が率いる。同委員会は、ガザの生活の安定化を支援するため、中核的な公共サービスと制度の再建に重点を置く。また、元国連特別調整官(中東和平担当)のムラデノフ氏がガザの上級代表に就くという。
ガザ暫定統治機関、米国務長官や英元首相が参加(CNN)
トランプ大統領は従来から国連やヨーロッパなどのエスタブリッシュメントを激しく憎悪してきた。おそらく自分の商売(ビジネス)を邪魔する存在だと考えているのだろう。しかしそれだけでは新しい統治機構を正当化することはできない。そこで「今の政治は腐ったフリーライダーとレントシーカーに支配されている」と考える人達が加わり「技術官僚主導の帝国主義」が生まれている。
実はこの技術官僚主義は日本でも導入されている。
日本の議会政治が行き詰る中で革新官僚と呼ばれる人たちが満州で実験的に国家運営を行った。岸信介などはその後紆余曲折を経て総理大臣に上り詰めている。彼らが持ち込んだ計画経済的手法は日本の行動経済成長の一つの要因となった。
これを定式化したのが野口悠紀雄氏の「1940年体制」だ。Geminiに総括させると次のようになる。
経済学者の野口悠紀雄氏などが提唱する「1940年体制」という概念では、戦後の高度経済成長を支えた仕組みの多くが、実は戦時下の統制経済の中で生まれたと指摘されています。
- 官民一体の護送船団方式: 大蔵省や通産省(現在の経産省)による強力な行政指導。
- 間接金融中心の体制: 銀行が産業資金を配分する仕組み(戦時中の軍需融資が原型)。
- 企業内組合や終身雇用: 戦時下の労使一体化(産業報国会など)の流れを汲む。
ここからトランプ大統領のガザ和平10億ドル構想には別の目的があることが分かる。それがエスタブリッシュメント排除だ。
国連とヨーロッパに対して「いままであなた達は国際協調の所有者として振る舞ってきたが、これからは対価を支払ってもらいますよ」ということだ。つまり高い値札を付けてフリーライダーやレントシーカーを排除している。
トランプ大統領の作る新しい国際秩序は住民を排除し利益を私物化するという「新植民地主義」なのだが、それがうまく行ってしまうのは背景に「エスタブリッシュメントが我が物顔で国際秩序を支配してきた」とう反発によって裏打ちされているからなのだ。
しかしながら実は日本もパックス・アメリカーナにフリーライドしてきたといえる。特に自民党の戦略は一貫して「フリーライド」的だったが、集団的自衛権の限定行使容認を受任した立憲民主党も「フリーライド」していることになる。
リスク・損出回避傾向が強い日本社会がこの問題を自ら解決することはないだろうが、これは中長期的はアメリカが付けた値札通りに安全保障を買い戻すと言う極めた割高な戦略的選択だ。
ガザ和平でみたように「はい10億ドルね」と言われればそれが値札になってしまう未来を我々は「力強く」掴み取ろうとしている。

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