トランプ大統領がベネズエラへの陸上攻撃を主張した。これが即戦争につながることはないのだろうが「戦後秩序の破壊」という意味では危険な兆候である。トランプ大統領は軍事(戦争)と警察(治安維持)の区別が付いていないのだが、「ラジオでちょっと自慢するくらいなら平気だろう」位に思っている。そしてそれを止める人はアメリカにはだれもいなかった。
トランプ大統領のラジオ番組での発言は極めて曖昧なものだった。なんらかの施設に攻撃を加えたがそれがどんな攻撃なのかはよくわからないというのである。
皆さんが見たのか読んだのかは分からない。だが、大きな工場か施設を破壊したと言っている。
とにかくトランプ大統領に認識では「なにか大きな打撃を与えた」ことだけが印象に残っているようだ。
したがってこのニュースから
- トランプ大統領が発表できる成果がなかった=作戦が失敗だった
- トランプ大統領は個別の作戦には興味がなく、ベネズエラになにかどでかいことやってやったことだけを覚えている
- 陸上攻撃を行ったという既成事実を作って撤退しようとしている
のかはよくわからない。
これまでのトランプ大統領の言動を見ると「そのどれもが全部正しい」可能性がある。
ニューヨーク・タイムズは「おそらく麻薬施設の排除はできたがそれ以上のことは伝えなかった」としている。そしてこの攻撃には法的な問題があると考えている。ここからもいくつかの仮説が作れる。
- そもそも成果がなかった
- 成果はあったがそれを示すと法的根拠を問われかねないため公にできなかった
ということになる。
となると
- 軍事攻撃は行われたが詳細を示すと法的根拠を明らかにしなければならなくなるため詳細を発表することを止められたが、ラジオ番組に出演しつい自慢してみたくなった。あるいはラジオくらいなら言っても大丈夫だろうと思った。
ということになる。
これは、軍事攻撃(戦争)と治安維持(警察行為)の意図的な逸脱なのだが、実は議会共和党からも目立った反論が出ていない。つまり議会共和党はこの逸脱行為を暗黙の内に承認しつつある。さらにニューヨーク・タイムズも「この攻撃がアメリカを危険に晒す」というトーンではなく、あくまでも「国内の法律に合致するかどうか」を問題視しているようだ。つまりアメリカ合衆国は国際的な法秩序にあまり関心を持っていない可能性が高い。あくまでもアメリカ国内の法的整合性が大切なのである。
これまでアメリカ合衆国は既存の国際秩序を守ることこそがアメリカ合衆国の国益だと考えてきた。ところが今回の一連の出来事でアメリカ合衆国はこの役割を放棄し国際秩序の破壊者の側に回ってしまった。
そしてこれはこのままでは危険だという将来に対する警鐘ではなく、今現実に起こってしまった事実なのである。

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