アメリカが海上からナイジェリア北西部にミサイル攻撃を行った。かつて、経済・軍事・ソフトパワーで覇権を維持してきたアメリカ合衆国だが、軍事がわかりやすくコスパの良い「選挙ツール」になってしまったことが分かる。
このニュースが異様だったのはクリスマスの盛大なパーティーのニュースと一緒に伝えられた点にある。AFPの記事には「米フロリダ州パームビーチのフロリダ州の私邸「マールアラーゴ」でクリスマスディナーに出席するドナルド・トランプ大統領(2025年12月24日撮影)」というキャプションが付いている。
アメリカ合衆国側の声明では「ナイジェリアでキリスト教徒を攻撃するIS」が攻撃されたことになっている。だから「くず」なのだ。クリスマスというキリスト教最大のイベントで敵であるISを攻撃する。そしてアメリカ人兵士の血は一滴も流さない。このコスパの良さは極めて緻密に計算されている。
一方でこれが国際社会とアメリカの地位にどんな影響があるのかと言う点は一切考慮されていない。
おそらくトランプ政権からはこれまでのアメリカの同盟戦略を支えてきたエスタブリッシュメントが追放されている。一部はMAGAと折り合ってきたのだが次第に亀裂が明らかになり静かな退出も始まった。
トランプ政権にとって重要なのは「眼の前にある現実を利用して最大限の利益を得る」ことなので、システムが軋み音を立てたときにどう対応しシステム破壊をどう防ぐのかという処方箋を持たない。そもそも興味がないからだ。
トランプ政権の誕生から1年たち、我々はこうした混乱に慣れつつある。たしかにトランプ政権はめちゃくちゃだったがアメリカ合衆国は崩壊しなかった。解放の日というショックもあったが株価はもとに戻った。このため現在の株式市場は一種の多幸状態を示すVIX15以下という状況になっている。
つまり、人々がリスクを意識しながらも「これまで破綻なくうまくできてしまった」ことが最大のリスクになっているというわけだ。
さすがにBBCは今回のニュースをナイジェリア視点(つまり軍事攻撃)として描いている。これはこれまでの戦争報道の反省が活かされていると見るべきかもしれない。作戦司令室やクリスマスパーティーの会場から「安全な戦争」が行われているという印象を付けたくないのではないか。多幸状態に抗うBBCなりの良心という気がするが日本の報道はこれをどう伝えるだろうか。
今後のアメリカと世界の運命はこの作戦がナイジェリアにどんな影響を及ぼすかではなく、静かにトランプ政権からいなくなった人々がこの先アメリカの政治に戻ってくるかにかかっているのかもしれない。
仮に彼らが戻ってこないと考えるとアメリカはブレーキの壊れた自動車状態のまま「最近揺れが激しくなっているが事故は起きていない」と考える大勢の人を載せたままで走り続けることになるだろう。

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