維新が「大阪都構想」への執着を捨てきれず、結果的に自民党との交渉が難航している。おそらく維新は「自民党が約束を守ってくれない」と苛立つのだろうが、彼らの議論が難航するのにはそれなりの事情がある。
大阪からこれを読んでいる人を除き「都構想は他人事」なので大阪人が飲み続けている「青いピル」について理解するのは容易い。ただ「あれ、実は我々も維新型の論理構成を採用しているのではないか?」「まわりのみんなも似たような状態にあるのではないか」と気がついてしまうと厄介だ。
それはもう「赤いピル」になっている。一度飲んだら引き返せない劇薬といえるだろう。
維新が自民党と協議を行った。「特別区」がない地域は副首都としてふさわしくないという謎の定義が生まれており、事実上大阪以外の都市を副首都から排除する法案になっているそうだ。時事通信の短い説明では「何を言っているのか分からない」という印象だが、おそらく詳しく話を聞いてもわからないのではないか。
背景が行き詰るロジックは極めて簡単だ。
- 吉村洋文体制は「有権者は難しいことはわからない」し「テレビでは伝わらない」と考える。
- このためロジックの起点が情緒になっている。
- 気合を見せるためには1割位定数を削減すべき
- 東京みたいに特別区ができれば東京みたいな気分に浸ることができる
- 法的な理屈はあとから作る。
- ところがここで「維新ばかりが」「大阪ばかりが」と情緒的に反発される
- 最初の説明の起点が「気合」とか「風格」など曖昧なものなので説明に行き詰る
- エラーを出して議論が止まる。
- 吉村知事はおそらく何度も停止する理由はわかっている。
問題なのはこのわかりやすさこそが維新人気を支えているという点にある。だから行き詰まりを抱えつつもそのまま突き進むしかないというジレンマと付き合ってゆくしかない。
このわかりやすさは例えば
- 東京03はカッコイイが、武蔵野・三鷹0423はカッコ悪い
というような理屈と同じ。
尼崎も大阪と同じ06だが巨額の費用を支払って編入させてもらっているそうだ。一体感という気分だけでなく「電話がつながりにくい」とか「市外通話料金が高い」という事情もあったようだ。
バカバカしいと言えばバカバカしいが0423などの4桁地域は2006年に「大都市っぽい」042に統合されている。「理屈の上では単なる電話番号に気分を求めるのは馬鹿げているしかし「だがそれでも」と思ってしまうのが日本人だ。
つまり「維新がやろうとしていることはどこかバカげている」と考える限りは安心な薬なのだが、実は「あれ自分たちも実は同じような思考に陥っているのでは」とか「まわりの理屈はなんだか情緒的だな」と思った瞬間に赤いピルになってしまう。
電話番号程度の問題は整理が難しくないが、副首都をどこに置くのかという問題は予算審議などと複雑に絡み合い、政治の意思決定の上では「無害とは言い切れない」ノイズとして作用する。さらに、実は高市政権はこの無害とは言い切れないノイズによって支えられた政権であるという気づきも得られるのだ。
だから高市政権は長く続かないのではという疑念を持つ人も多いのだ。気が付きたくなくても気がついてしまう人が出てきたときにその政権が指示できなくなってしまうからだ。

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