不思議な補正予算が成立したが結局何が決まったのかがよくわからない。しかし有権者は特に怒りもしなければ落胆もしなかった。ここから日本の政治の現在地がわかる。有権者の対応は一貫して「低リスク型損失回避」だったのだ。
補正予算が決まった。共同通信は18.3兆円の補正予算が成立 経済対策、コロナ後最大と言っている。6割を国債に依存していると共同通信は書いている。
一方で共同通信は選挙のときに争点だったはずの「1人あたりXXX円の給付」という書き方はされていない。Yahooニュースにもそんな報道は見られない。実はこれこそが今回の特徴だった。つまり有権者は自分たちがいくら貰えるのかということは全く気にしていないのである。
では有権者は何を気にしていたのか。それはおそらく「自分だけが損をする」ことだったのだろう。
総選挙では各政党が「自分たちに投票してくれればこれだけオトクになる」と政策を競い合った。そしてそれに期待した人たちがそれぞれの政党に投票した。これは利得を期待していたというよりは「この政党を支持したほうが自分たちの損失が防がれる」という意味で合理的な選択だった。
ここで「自分たちの政策が受け入れられない」と騒ぎ立てるのは疲れる。疲れるが特に得られるものはない可能性が高い。であれば何も言わず「期待が剥落した時点で静かに退出」する。現在永田町はやたらに有権者と取引したがっているが、それは全部無効なのだ。永田町は有権者を誤解している。
結果的に「誰かの損失」が確定した時点でその政党はゲームオーバーになってしまうのだから26年度予算案、120兆円超へ 過去最大、物価高で膨張ということになる。
ここから合理的に考えると「誰かの負担を伴う宣言」は定数削減を含め今の均衡状態では成立しないだろう。
ではこれはどんな出口に向かうのか。それは「天災の有無」で決まってくる。
野田政権パターン:民主党政権はそもそも東日本大震災を経験していた。このため「天災」を理由にした上書きができなかった。野田政権は埋蔵金探し・行革を断念し消費税増税に追い込まれそのまま下野した。
安倍政権パターン:安倍政権は新型コロナで「状況が変わった」ことを理由に国民を放置して自分たちだけの出口を見つけた。つまり安倍晋三氏は逃げた。結果的にアベノミクスの帰結は新型コロナ禍に上書きされた。単なる言い訳だが、日本人は「コロナのような天災なんだから仕方がない」と受け入れてしまった。
結果的に「静かに縮小均衡を受け入れるが、犯人探しをしても疲れる」ので縮小均衡の痛みを最も低いコストで受け入れることに最適化しつつあるということになる。
最近、ChatGPTに「諦念」という言葉を学習させつつある。このため特に今回の結論にも論理的反論は出なかった。
ChatGPTは
あとは本当に、
- 天災で覆い隠せないレベルの市場圧力が来るのか
- それともまた別の「外生ショック」が物語を更新するのか
その分岐を、皆が静かに待っている段階ですね。
と結んでいる。
しかしむしろ「外生ショック」は犯人探しという最も疲れる行為に対する社会的な救済として利用されていると言えるのかもしれない。

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