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南米でチリのトランプが勝利

6〜9分

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南米で大統領選挙が行われ「チリのトランプ」が大統領に当選し、また一つ左派政権が瓦解した。原因として大きかったのがベネズエラからの不法移民だったそうだ。カスト新大統領は北部に壁を作りますと宣言しこれが有権者に受け入れられた。

スペインは南米を収奪の対象としか見ておらず強い国家制度を残さなかった。この地域ではペルーに副王領があり強い既得権が残る。ペルーは今でも地方の既得権と大統領の間に激しい対立があり政治が安定しない。一方チリは辺境地域をまとめてできた国だった。内戦のあとに強い大統領制度が作られ結果的にペルーよりも国家制度が安定している。

そんなチリの政治史の一大イベントはアジェンデ・社会主義政権の崩壊だった。1973年9月11日にアメリカの支援を受けたピノチェト陸軍総司令官によるクーデターが起こりアジェンデ大統領は官邸で自殺した。

その後、ピノチェトはアメリカ合衆国主導の政治・経済システムを作り上げ「新自由主義=シカゴ学派の優等生」と呼ばれる。ミルトン・フリードマンはチリの経済を「チリの奇跡」と呼んで称賛した。チリは比較的国家基盤が安定し資本主義が充実した国でこの地域では経済的に成功した国とみなされている。

ただ結果的にこの「優等生」が作り出した国内格差は国民の反発を生む。2019年に地下鉄料金問題に端を発するデモが起き2021年の総選挙で左派のガブリエル・ボリッチが大統領に就任している。今回当選したカスト氏はこのときの対立候補で当時はピノチェト体制の擁護に回っていたそうだ。

ではなぜ今回左派は支持を得られなかったのか。

まず当時彼らが約束していた憲法改正は果たされなかった。ピノチェト時代に作られた憲法からの急激すぎる修正と理解されたからだ。とはいえ、右派が提唱した憲法改正案も受け入れられることはなかった。

しかしながらそれよりも大きかったのがベネズエラの政情不安だ。現在ベネズエラはアメリカ合衆国から攻撃を受けているが、実は経済が破綻状態になっており難民の発生国になっている。

しかし、政情不安と社会経済の混乱、食料難、そして人道危機等から、ベネズエラ人の4人に1人、790万人以上もの人々が避難を強いられ*、多くが安全を求めて国境を越えています。 2024年7月の大統領選挙、2025年1月の大統領就任式以降も情勢不安に陥った状態が続いており、ベネズエラは南米最大の難民危機となりました。

南米ベネズエラ難民危機 故郷を追われる人、790万人(UNHCR)

この経済破綻を作り出したのが左派のマドゥロ政権だ。マドゥロ大統領は能力ではなく忠誠心でウゴ・チャベス大統領に指名されたと言われている。このため「本当はベネズエラから逃げようとしているのではないか?」と囁かれることも多い人物だ。

マイク・ポンペオ米国務長官は、マドゥロ氏が同日、航空機でヴェネズエラを出国しキューバに渡る準備をしていたが、ロシアに説得され取りやめたと述べた。ただしポンペオ氏は、証拠は示さなかった。

ヴェネズエラで「クーデター」失敗か 野党指導者が軍に決起促す(BBC)

結果的にチリの北部にもベネズエラからの難民が滞留しており社会問題になっていた。前回大統領選に敗北したカスト氏は「眼の前にある危機」を利用して、左派が政権を維持したままでは「自分たちもベネズエラのようになる」と訴えたうえで、北部に壁を作りベネズエラ化を防ぎますと主張したのだろう。

結果的に市民蜂起は国民生活向上には繋がらず再び親米の政権が作られることになった。カスト新大統領は非常事態を宣言し減税と移民排除に取り組む意向を示している。

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