アフォーダビリティ問題が選挙の争点であると認識したトランプ大統領が全国ラリーを再開した。合理的に考えるならば経済問題は自分がなんとかするから「心配しなくていい」と訴えるべき局面なのだが、演説は脱線し移民や意識高い系民主党への攻撃に終始したそうである。トランプ大統領は政治的問題を誤魔化すために外に意識的に敵を作っているわけではないことがわかる。もともとそういう人なのだ。この「内なるものへの攻撃」は徐々に外に向かいつつある。ベネズエラのタンカーをアメリカ合衆国が拿捕した。
今回テーマにしているナルシシズム政治は「(本来は疑いを持っている)美しい自分」という自己像を維持することを目的とした政治である。アメリカ合衆国ではこれが「内なる夾雑物」の排除という方向に進みつつある。
「夾雑物」は主に
- エスタブリッシュメント
- 意識高い系民主党
- 「第三世界(定義はされない)」からの移民
である。
トランプ政権はメガチャーチに観衆を集めて宗教的な熱狂を作り出し「美しい我々」と「外のよごれた世界」を明確に区分している。
トランプ大統領は経済ラリーの演説を始めるが、演説はすぐさま脱線し国内にいる「第三世界(定義されない)から来た移民」と「意識高い系民主党」の攻撃に転じたそうである。
さらにこうした攻撃をエスカレートさせており、ベネズエラの政権を攻撃するために収入源となるタンカーの拿捕に踏み切った。公式には「イランに石油を送ろうとしていた」ということになっているが、真偽の程は定かではない。送り先はキューバだった可能性もある。
ベネズエラは「厄介事を持ち込む外のきたない世界」という位置づけになっている。また、議会対策としてネオコン(ルビオ国務長官もその代表格とされる)と呼ばれる人たちの強力を維持するためにも重要な装置だ。つまりトランプ大統領には全く計算がないとは言い切れないが感情的に攻撃も抑えきれないということになる。
こうなると「アメリカ合衆国は好き放題に暴走するのではないか」と思いたくなる。
しかし、ChatGPTはアメリカ製のAIなので「アメリカ合衆国には権力者の暴走を押さえるレジリエンス(耐性)がある」と主張する。そこで今回のナルシシズム政治のチャットの中で「そのレジリエンスを示すエビデンスがありますか?」と聞いてみた。いくつかの記事を当たったがChatGPTはエビデンスを示すことはできなかった。
民主党の支持者や中間層はトランプ大統領の政策に疑いを持ち始めているが、岩盤支持層は却って態度を硬化させている。もともと心理的補償だったと考えるとこの帰結は合理的に理解できるが、やはりそのバランスは危うい。
そもそも「間違いを認められない」という気持ちがあるため、トランプ大統領はポリティコのインタビューにおいて「アメリカの経済はAプラスプラスプラスプラス」だと主張。外から見ている人たちは「このひとは何を言っているんだろう」と思うのだろうが、メガチャーチの中にいる人達の結束はますます高まるのかもしれない。
ただしアメリカ合衆国の攻撃性は今後ますます外の世界に向かう可能性が高い。これを機関的抵抗(独立性のあるFRB、議会、裁判所)などでかろうじて押し留めているのが今のアメリカ合衆国の現状と言える。
こうした「これは違うんじゃないか」という気付きはすでに選挙結果にも現れている。トランプ大統領のお膝元のフロリダ州にあるマイアミ市は30年ぶりに民主党の市長を選んだ。
機関的抵抗と言ってもそれは穏やかなものではない。
メディアはますますトランプ政権についてネガティブな報道を行い、トランプ政権は報復のために「メディア恥の殿堂」を立ち上げ、メディアを晒し者にしている。
これについてChatGPTに質問したところ興味深い回答が得られた。
- そもそもアメリカ合衆国のメディアは脅迫の法的対処をコストとして織り込んでいる
- 政治が暴走すると、カウンターとしての報道機関を支援する人も増えて購読者が増える傾向がある
そうだ。
第1次政権ではトランプ大統領の批判をすると購読者が増えるTrump Bumpという現象が見られた。バイデン政権で一時下火になったそうだが、今また復活の兆しがあるようだ。強いナルシスズムは強力なカウンターを生むということなのだろう。
個人のナルシシズムは反動として強い罪悪感をもたらすことがあるが、アメリカの場合はそうならず経済的な活況がもたらされる結果になっている。

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