昨日から蓮舫民進党代表が戸籍を開示するかしないかということが大問題になっている。が、答えは明白で蓮舫代表は戸籍を開示すべきではない。が、それは代表がかわいそうだからという理由ではない。
厚生労働省のウェブサイトを見ると、就職時に戸籍の開示を求められても応える義務はないとしている。これは出自による差別につながるからである。裏を返せば、企業には出自差別が横行しているのだ。
確かに、国籍要件がある国会議員と一般企業は違うという話はあるのだが、だとしても候補者の段階でクリアしておくべき問題で、全国民に晒し者にするというのは筋が通らない。
加えて、ここで戸籍を開示してしまうと「疑わしいやつは戸籍を開示して、自己責任で自らの血の正統性を証明せよ」という主張を認めたことになる。帰化者が戸籍を提示しても台湾の血が入っているのだから日本のために死ねるはずはないという人は残るはずで、全く意味がないだけでなく、こうした人権無視の主張を後押ししてしまうことになる。が、民進党は全くこのことが念頭になかったのだろう。人権意識の希薄さがうかがえる。
厚生労働省のウェブサイトを見ると、採用時にこうした方針が取られるのは、採用は「個人の実力によってのみ決定されるべきである」という建前があるからだ。保守の観点からすると、一人ひとりの国民が実力に沿って社会に貢献できる国の方が国際競争力の面から望ましいはずであり、イデオロギー的にも理にかなった政策だと考えられる。もちろん左派リベラルの観点からも一人ひとりがそれぞれの実力に見合った社会参加ができるということだから、社会包摂的な政策だと考えられるだろう。
すると、民進党が、女性で外国人の血が入った人を党首に採用しているのはなぜかという話になる。建前上は蓮舫が優れた政治家だからということになる。出自は関係がなく、性別も関係がない。蓮舫に優れた資質があるから党首にまで登り詰めたのだ。
多分それは違っているだろう。民進党は多様性を大切にする政党ですよということを誇示したかっただけなのではあるまいか。付け加えればテレビ映えするきれいな女性を飾り物にしたかったのだろう。が、まだそこまでは許せる。TVポリティックスというのはそういうものだし、有権者も政策よりは好き嫌いで支持政党を選びがちだからだ。
が、今回の話はそれとは違っている。民進党で蓮舫の二重国籍問題を槍玉にあげた人たちは、自分たちの政党が有権者の信頼を得られそうな仕事を全くしてこなかったことを棚上げして、党首の資質に話をすり替えようとしている。だから、いつまでたっても有権者の支持が回復しないということに全く気がついていないのだ。
加えて、戸籍の開示を要求することで、プライバシーを守りたいと考えている多くの日本人にリスクを与えてしまった。外国の出自を持っている人や非差別集落の人たちに影響が及ぶばかりではなく、普通の日本人として暮らしている人たちもいつ「お前は怪しいから戸籍を出せ」と言われる可能性があるということを全く考慮していない。
民進党にいるいわゆる「保守」の人たちは人権というものを全く理解していない。多様性を政治的に利用していただけで、そんなものは最初から信頼しておらず、理解もしていないかったのだろう。こうして底の浅さを露呈してしまったのだが、この「浅さの露呈」は民進党につきもので、有権者を失望させ続けている。
結局は「選挙に勝つか負けるか」ということだけが重要で、その度に派手そうな政策や与党批判に手を出しては中途半端に撤退するということを繰り返しているだけの三流政党なのだ。
もはや蓮舫が二重国籍かどうかということはどうでもよい。だが、どうか日本国民を巻き添えにすることだけはやめていただきたい。だから国籍を開示すべきではない。彼女が台湾人の子孫であることはみんなが知っているわけだから、出しても出さなくても同じだと思っているのだろうが、出してはいけない。
もう民進党は完全に終わったと思うので、早く解体するのが良いだろう。人権の基礎すらわかっていないこうした議論がまかり通るところを見ると、そもそも政党を組んで政権を取ること自体が間違いだったのだろう。