10月の実質消費が3%減少したというニュースを見た。国民の間に節約志向が高まっているという。このニュースはある意味では納得感があるがある意味では意外だった。そして「国民は高市総理の「経済成長」という約束は信じていない」が「支持率は高いんだな」と感じた。おそらく支持が高い理由は「思考停止」の現状を肯定してくれるとみなされているからだろう。
REUTERSが実質消費3%減について伝えている。こんな一節がある。節約志向が高まっているという。
自動車等購入が前年比25.3%減少。自動車購入世帯割合は前年と変わらないものの、中古車や小型車の購入が増えており、世帯あたりの平均支出額が減った。携帯電話通信料の減少は安い料金プランに移行するユーザーが増えたため。家庭用耐久財は11.7%の減少だった。
実質消費支出10月は3.0%減、6カ月ぶりマイナス 車購入など減少(REUTERS)
まず、自分の消費行動を見て「それはそうだよな」と思った。
が同時に実質消費の減少が6ヶ月ぶりだった事に驚いた。物価上昇が生活必需品中心だったことが影響しているのかもしれない。支出を下げたくても下げられなかったという人が多かったのだろう。
つまりREUTERSのこの一節は「国民は次第に新しい形のインフレに最適化しつつある」ということを意味している。
2024年8月には時事通信が「中古品販売、2030年に4兆円市場へ 「リユースネーティブ」消費の主役に【けいざい百景】」という記事を出している。
高度経済成長期を知っている世代は「本来は国内ブランドの新製品を買うべきなのに」「仕方なく100均一に頼る」生活を選択してきた。しかし円安で100均も成り立たなくなりつつある。そこで徐々にセカンドハンド市場が拡大している。しかしセカンドハンド市場が当たり前になると「リユースネイティブ」という新しい消費者が生まれてしまう。
もう一つ驚いたことがある。高市政権の支持率は高い。それは高市総理が「再び経済成長を起こしてくれる」という期待があるからだろうと思っていた。これから経済が成長すると確信するならば有権者は節約志向を高めて防衛的になるはずはないが、現実の消費者は徐々に節約経済に適応しつつある。つまり高市政権に対する期待は経済成長ではないということになる。
では一体彼らは何を期待しているのか。
高市総理は「高市政権の間は増税はしない」と言っているような印象があるが実際には「税率を大きく変えなくてもすむように経済成長を実現する」と言っている。つまり「税額が増える」可能性は残している。よくよく考えてみれば国民がこれを「増税はないんだ」と都合よく解釈しているに過ぎない。
しかしながらこうした曖昧なロジックが批判されることはない。おそらく有権者はそもそも高市政権の政策を理解しようとまでは考えていないが「面倒なこと=将来の負担増」を考えなくてすむと理解しているのだろう。
つまり、有権者は「負担増という面倒事を考えなくてすむ」という理由で高市政権を支持しているが、実際の消費行動では「おそらく将来はもっと厳しくなるだろうから今のうちに節約生活に慣れておこう」と考えていることになる。つまり将来の負担増をほのめかされた瞬間にこの政権は終わる。
ただ、おそらく消費者・有権者の予想は当たっている。日本の潜在成長率は0%近辺と言われているが、商社株・長期金利などは拡大を続けている。10年国債の金利は1.9%台まで上昇し2%台が見えてきた。この線を突破すると心理的な抵抗線はなくなると言われている。つまり日本は長く続くインフレ社会の入口にいる。
もちろん日本経済は3%台の物価上昇を経験したこともあるがその時の前提は「経済と人口の成長」だった。今回は少子高齢化の中での3%インフレということになり前提が大きく違っている。
かつて日本の個人消費は6割を超えていたがその割合は徐々に縮小しつつあるようだ。個人消費の伸びを前提としない経済成長は短期的には可能だろうがおそらく中長期維持は難しいだろう。結果的に日本社会はいつか問題を先送りできなくなるものと容易に予想できる。

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