9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


長期金利と商社株の高騰

9〜13分

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先日2025年12月4日に金融市場で興味深い事が起きた。長期国債の金利が上がりそれにつれて商社株が4%ほど値上がりしたのだ。「株高」に喜んでいる人も大勢いたのではないかと思うが、生活者にとっては増税と同じであり(インフレ税)必ずしも朗報とは言えない。政府もインフレにで税収が増えるので生活者だけが負担を押し付けられるということになる。しかし、おそらく有権者は不機嫌になるだけで何が起きているかには気が付かないだろう。

高市政権は現在円安を容認するかインフレを甘受するかの二者択一を迫られている。政治に責任を持つと宣言していたが徐々に発言をトーンダウンさせ「日銀の独立性」について発言することが増えた。難しい判断を日銀に丸投げするリスクコントロールの一環と考えられる。

その後、長期金利(10年もの国債の金利)が1.935%まで上がっている。これは2007年7月以来の高水準だった。また30年もの国債の金利は3.3-3.6%と高い水準になっている。事前には「金利がこんなに高くなっているのだから誰も買わないのでは」などと思われていたわけだが。30年もの国債の入札は事前予想されていたような危機も起こらず無事に通過している。

もちろん機関投資家が未来を予測できる水晶玉をもっているわけではないが、この行動(30年もの国債入札の順調さと商社株の値上がり)が合理性を持つためには機関投資家が3%前後の期待インフレを織り込んでいると考える必要がある。なおREUTERSは長期金利(ターミナルレート)が2.0%近辺で止まるのかに注目しているが、2%を超えると「心理的な節目がなくなる」と言っている。

高市総理と片山財務大臣がこのことを知らないはずはないので「おそらく日本経済はこれからも2%〜3%のインフレが続く」事はわかっているはずである。それをあえて言わない理由はよくわからないが、年金で生活する人が増え、なおかつ地方にこれといった成長牽引型の産業がないことを考え合わせると、投資家以外の生活が苦しくなることを意味しているからではないかと思う。

つまり「既得権維持のために不毛なゲームをやっている場合ではない」ということに気がつくはずだが、彼らが党内に向けて強いレッドアラートを発信したというようなニュースは全く聞かない。

日本が近年経験したことがないとはいえ、今予想されているインフレは高度経済成長期には普通に見られたノーマルなものだ。一方で人口動態などの背景が異なるため単純にインパクトを比較するのも難しいと感じる。

不幸なのか幸いなのかはよくわからないが、おそらく商社株の高騰を見ても「ああ株価が上がった儲かった」と考える人はいても「今後日本はインフレになると身構える人はいない。そもそも株式投資をしない人はその事実すら知らないままかもしれない。

しかしながら十分に事実を認識している人は(きちんと自分で調べたうえで)インフレヘッジのための行動を取るだろう。

余談だが今回も調査のためにGEMINIとChatGPTを使った。GEMINIは10年国債と30年国債の金利差から「正当化されるインフレ期待」を出力したが、ChatGPTは激しく抵抗した。GEMINIへの質問を書いてはじめて「いい指示ですね」と折れて計算を始めている。出力も「実質利回りの仮定」をわざわざ出してレンジがあると示している。

  • 実質利回り ≒ 0.0%(ゼロ実質) → 期待インフレ ≒ 3.40%
  • 実質利回り ≒ 0.5%(控えめな実質) → 期待インフレ ≒ 2.90% ← GEMINI の 2.9% と一致。
  • 実質利回り ≒ 1.0%(やや高めの実質) → 期待インフレ ≒ 2.40%

さらに。今回の動きが「政府に対する不信任に直結するわけではない」とか「市場の動きを予言するわけではない」など」何度も念を押された。ChatGPTにはかなり強い良心回路が働いていることがわかる。情報が独り歩きすることを強く恐れているのかもしれない。

正直ChatGPTは面倒くさいなと思うのだが、AI同士のクロスチェックは思っている以上に重要なのかもしれない。なお記述が慎重になるChatGPTさんの主張も最後に残しておくことにする。読者に向けたメッセージも付けてくれた。このあたりは主張を明確にするアメリカで作られた事がよく分かるサービスだなと感じる。

なおChatGPTに対する説得はその後アメリカの事例に移っている。日本は低成長から普通の国になりつつあるが、アメリカは潜在成長率以上のターミナルレートを織り込んでおり「トランプ大統領の後の大統領はかなり大変になる」ことが容易に予想できる。つまり日本の話だけを読んでいるとかなり悲惨な話のように聞こえるが比較対象が生まれることで「まだマシ」ということもわかってくるのである。と同時に日本は現状の潜在成長率は0近辺であり仮に予想されるインフレ期待が3%だったとすると「かなり大変なことになる」ということも付け加えて起きたい。

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