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女たちの怒りが動かすアメリカ政治 エプスタインファイルを巡り

7〜10分

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トランプ大統領が女たちの怒り(Wrath)に怯えている。エプスタインファイルを巡る動きに進展があった。これまで敵を作り自分の政治的エネルギーに変えてきたトランプ大統領だが今回は「敵」になってしまうかもしれない。

エプスタイン氏の被害者たちが議事堂前に集まりトランプ大統領にメッセージを伝えた。トランプ大統領は直前に公開に反対しないと表明したことで難を逃れたかに思えたが、女性たちの怒りは収まらなかったようだ。これまで何年も問題を「なかったこと」にされてきた。

何もトランプ大統領だけが悪いわけではない。アレクサンダー・アコスタ氏がエプスタイン氏を起訴に持ち込めなかったときにトランプ氏は大統領ではなかった。しかしトランプ大統領がこの問題を民主党に結びつけて利用してきたことは確かだ。また第一次政権当時にアコスタ氏を労働長官に起用しているがエプスタイン問題への対応を問われて辞任に追い込まれている。

彼女たちや国民の怒りの原因はトランプ大統領が政治的な目的を達成するためにエプスタイン問題を利用した点にあるようだ。政治的闘争に夢中になりその後ろにいる被害者女性たちのキモチをないがしろにしてきた。今回民主党が火をつけた電子メールの大量公開により人々は被害女性たちを思い出し、さらに同情論が広がっている。

ABCニュースはトランプ大統領が司法省に命じれば明日にもファイルが出てくるのに……と疑問を投げかけている。まさにそのとおりだろう。

もちろん政治闘争的な思惑もある。マージョリー・テイラー・グリーン下院議員は自分はMAGA運動の初日(DAY1)から運動に参加していると言っている。元々は反グローバル運動を盛り上げるためのトランプ支援者の集まりだったが、後に様々な人々が「バス」に乗り込み、MTG氏は脇役に追いやられていた。

穏健派のトーマス・マッシー議員も怒れる女性たちを背景にしてトゥーン上院院内総務を牽制している。ジョンソン下院議長は抵抗を抑えきれなくなり公開法案に賛成するのだがトゥーン院内総務に「法案の内容を修正するように」働きかけている。マッシー議員は「どうか法案をめちゃくちゃにしないでくれ」とトゥーン氏に公開で呼びかけた。ジョンソン議長とその背景にいるトランプ大統領を牽制しているのだ。

劣勢に立たされたトランプ大統領は今度は有権者を買収するようだ。2026年までに2000ドルの関税配当金を支払うと言っている。これによりこれまで徴収し「税外収入」として当て込んできた関税が帳消しになる。

そもそも関税は代替税的な意味合いがあり減税とセットになるはずだった。しかしこれを配当金にすると配布費用がかかる。その額はある試算によると4500億ドルと見積もられているそうだ。そもそも取らなくていいお金をアメリカの消費者と企業から徴収しそれを多額の税金を使って払い戻そうとしている。

これまで敵を設定し大衆を先導してきたトランプ大統領だが、今回は敵として設定されかかっている。仮にトゥーン上院院内総務が下手な小細工をすればおそらく彼も敵認定されてしまうだろう。少なくともトランプ大統領は「最後には小切手を叩きつければ国民を説得できる」と考えているようである。最後は金目でしょというわけである。