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深刻化するデジタル化の遅れ このままではGDP1割減の衝撃

10〜16分

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経済産業省が産業構造審議会(経産相の諮問機関)の有識者会議で試算を示す(示した)という記事が出ている。おそらく経済産業省としては高市総理の主導する財政拡張作を正当化したいという狙いがあるのだろう。

しかしメディアが注目したのは「ここままではGPDが1割縮小する」という脅しのほうだった。特にデジタル化の遅れなどが影響しそうだ。

この記事を読んで個人的な経験から「おそらく問題はお金ではないのだろうな」と感じた。政府組織・公的機関・地方自治体が疲弊で諦めを感じている。特にデジタル人材の不足が深刻だ。将校たちはもっとお金があればうまくゆくと考えるのだろうが兵は疲弊しきっている。

タイトルは76兆円減というネガティブ要素にフォーカスをあてているが、冷静になって記事を読み直してみて「経済産業省はおそらく高市総理の財政拡張プランを支援したいのだろう」と感じた。高市政権の首席秘書官は経産省の事務次官経験者の飯田祐二氏である。

レポートを素直に読むと高市政権の経済政策を推し進めれば2040年のGDPは750兆円になると書かれている。しかし「仮に必要な政策を取らなければ日本のGDPは76兆円減少するだろう」と脅している。

共同通信と時事通信が見出しに取ったのはその脅しの方だった。

共同通信の記事は

経産省は各事業者に対し、デジタル化や他社との協業などで、採算性を向上するよう求めた。

人材不足でGDP76兆円減 経産省が試算、2040年時点(共同通信)

という一文で終わっている。

これがレポートとどんな関係があるのかはわからないが、政府でお金を出して民間のデジタル化を推進しろという意味なのではないかと理解した。

ただここで個人的な経験がよぎった。先日ある用事で省庁・公的機関に連絡をした。マイナポータル経由の電子申請でわからないことがあったからだ。そこで担当者に「紙の申請に戻してはいかがですか?」と言われた。

担当者はそもそもマイナポータルを使ったこともそれにつながる電子申請サービスも触ったことはないそうだ。紙の申請であれば馴染みがあるのでそれに戻してはどうかということなのだろう。説得してみたが態度は頑なだった。

マイナポータルも様々な申請書のワークフローを整理しないままでサービスを組んでいるのでこのボタンを押すとどんな申請書が作られそれをどれくらいごとに更新する必要があるのかがよくわからない。

そもそもマイナポータル自体もあまり使い勝手の良いサービスではない。マイナポータルから認証情報を各システムに渡す仕組みになっているがセキュリティ要件が厳しすぎるためエラーが頻発する。

現場の人は「そもそも私にデジタルなんかムリ」と思いこんでいるためそこから先を勉強しようとしない。現場は諦めている。

このあきらめは政権の都合によって次々と繰り出される愚策によって更に加速する。千葉県の熊谷知事は「配布対象の線引きに批判が出る可能性がある、面倒な事務作業を地方に負わせるのはどうかと思います。」と言っているが政府は聞く耳を持たない。

そもそもなぜ現場は疲弊してしまうのか。デジタル化に限って言えばトップがユーザーではないからだろう。何しろ高市総理は「最新鋭のFAXを導入したからもう大丈夫だ」という認識の持ち主。意思決定者がそもそもデジタル機器のユーザーではないため使い勝手の評価などできるはずはない。

結果的に既存のワークフローを温存したままで(そもそもなぜそれを整理すべきなのかという発想が持てない)経費削減のためにデジタル化を推進しても、現場の担当者の背中に石をつみあげるようなことにしかならない。高市総理は働いて・働いて・働いて・働いて・働いてと根性で乗り切ろうとし朝3時からの勉強会を開いて周りを更に疲弊させている。

さらに高市政権は維新に成果を挙げさせるために日本版DOGEを作りそこに遠藤敬氏を送り込む。大臣や長官にせず補佐官にしたのは国会答弁対策だろう。維新が強調したい成果はおそらく削減額だけ。

つまり政府は資金を提供してデジタル化を推進しようとしても実際に使う人達はすでに疲弊している。各事業者は「そもそもうちにはデジタル人材などいない」と考えるだろうし、問い合わせ先もすでに疲弊している。

この構図もやはり第二次世界大戦の敗戦直前に似ている。将校たちは自分たちの方針が間違っていないことを示すために「成功敵ないのは投入資源が足りないからだ!」と声高に主張する。しかし現場の兵士たちは疲れ切っておりもう前進の気力がない。しかし将校たちに現場の声は届かない。単に根性がないだけだからだ。

なお時事通信のレポートにはこんな一節がある。もう資本主義の枠組みでは過疎化した地方は支えられないので「住民自治でなんとかしろ」と言っている。ついに資本主義放棄宣言まで飛びしている。

小売店や医療・介護事業者などの撤退で生活環境が悪化し、人口流出に拍車が掛かれば、地域のサプライチェーン(供給網)全体に悪影響を与える可能性がある。有識者会議では、過疎地域などを念頭に、住民主体の非営利組織を新たなサービスの担い手に位置付ける方向で検討する。

40年度の実質GDP76兆円減 過疎地のサービス供給不足で―経産省試算(時事通信)

小さな成功体験を積み重ねて少しづつデジタルに対応するしかなさそうだが、おそらく将校たちは国から予算を勝ち取ることだけに夢中になっており現場の状況など気にしていないのだろう。

だからこそメディアが注目したのは悪い方のシナリオだけなのだ。