9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


今、「あまり」株を動かすべきではないかもしれない理由

8〜13分

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日経平均が一時1000円以上下げる動きがあった。世界的なリスクオフの動き人連動したものだ。ここで資金を動かしたくなる人が多いと思うのだが、一旦深呼吸をして考えたほうがいいかもしれない。連邦政府の統計が滞っておりいつ統計が回復するのかがよくわかっていないからである。ちなみに「あまり」動かすべきではないと書いたのは責任回避である。なぜ責任回避しているかは最後に書く。

今回、日経平均が下がったのは前日のアメリカ株式市場の下落を受けてのものだった。FRBのパウエル議長が12月の利下げを確約しなかった。その後FRB高官からタカ派的な発言が相次ぐと投資家の不安心理に火が付いている。この火を鎮火するために役立ってきたのがアメリカの好調な労働市場と消費意欲だった。ところが連邦政府閉鎖の影響で数字が出てこない。チャベスデリマー米労働長官は「政府統計をいつ再開させられるかわからない」と表明しておりこの統計欠損は暫く続くものと見られている。統計当局が悪い数字を出してしまうとトランプ大統領が「政治的に操作する」と騒いで責任者を再び更迭しかねない。

Bloombergはパウエル議長が手探り状態に置かれており12月の利下げに踏み切れないかもしれないと言っている。つまり経済が闇鍋状態になるなかで金利も高止まりするという厄介な状況になりつつある。

代替的に使われる民間統計もかなり悪い数字が出ている。

NASDAQが下落するのはアメリカの消費が落ち込むと予想されているからだ。しかしながら消費が落ち込むと金融当局は利下げする。利下げをすると割引率が下がるため、割引現在価値が上がるため将来の収益を睨んだ株(例えばハイテク株)などは上がる。景気の悪化=株式市場の崩壊とならないのはそのためだ。

また金利が上がり景気が悪化しても値上げをそのまま利益に転嫁できる企業の株価は動揺しない。これをインフレヘッジ株という。三菱商事はエネルギーなど資源事業依存が高いためインフレヘッジ株の側面を持つが、商社はそもそも借入金に依存する資本コストが高い事業帯なので行き過ぎたインフレはやはりマイナスに働く。

ダウ・ジョーンズの下落はアメリカ経済の先行きに不安感が高まっていることを反映している。企業が不安な予想をすれば実際にリストラが行われアメリカの経済は悪化するため「主観」は重要だ。

しかしNASDAQにとっては金利の引き下げを意味するのだから資金が集まってくる可能性があった。しかし金利がある程度高いままで景気悪化が続くと予想されるとNASDAQも下がってしまう。現在価値が既存されるからだ。

金曜日の株式相場においてNASDAQは前日より下がった点から出発した。これは下落のニュースを後で知って慌てた株主が多かったことを意味しているかもしれない。しかしその後冷静さを取り戻し買い戻しの動きがあり一時前日価格を越えるところまで上昇した。しかしその後再び下落に転じている。方向性を失っているか売りと買いが交錯しているということになる。

このため現在は「とりあえず株を買ってみた人」が、手持ち株が一体何によって動いているのかを学び直すのには非常に良いタイミングと言える。AIを使うとなぜ特定株が動いているのかを親切に教えてくれる。

一方で連邦政府統計が回復するまではちょっとしたサプライズが株価を大きく揺らしかねない。株価を一斉に揺らすことができるのは多くの株を持っている機関投資家なのだから小口投資家は情報戦で太刀打ちできないだろう。

最後に冒頭で「あまり動かさないほうがいい」と書いた理由を述べたい。

最近のXにはS&P500の好調さを背景に「これで億り人続出だ!」というようなクリック数稼ぎの投稿がたくさん出ている。これに追従してゲーム感覚で「俺の考えは間違っていなかった、手元の数字が上がってキモチがいい」というような投稿も多く見かけた。しばらくは単なる調整局面だという言動になるのだろうが好調さを煽る人たちが下落局面で責任を取ってくれるとは限らない。

この手の投稿に群がる人々はおそらくみんなが株を買ってからかなり高い水準で株を買っているものと考えられる。仮にアメリカの景気が後退局面にあるとすれば逃げ遅れてしまうことはあきらかである。

このため、あの時に「動かすな」と言ったじゃないかと言われても困るという気持ちがある。つまりこれまでコツコツと分散して投資をしていた人にとってはこれまでの資産を整理するために冷静になる局面かもしれないが、高値づかみした山が崩れて生き埋めになった人を救うことまではできない。

つまり「あの時に逃げるなと言ったから生き埋めになった」と責められても困るのである。