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バカが最高責任者になるとどうなるか – 安倍首相という実験

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安倍首相が、産経新聞の正論という雑誌の講演会で、獣医養成学校の認可を全国展開し、なおかつ自民党の憲法改正案を臨時国会の会期末に提出すると発言したそうだ。これを聞いて、安倍首相というのはバカが権力を握るとどうなるかという壮大な実験なんだなと思った。

最初にお断りしておくと「あいつはバカだから」というレッテルを貼ることで印象操作をしようとしているわけではない。もし、仮にバカ以外のニュートラルな言い方があれば言い換えても良いと考えている。。

前回、前川善事務次官の記者会見について観察して「頭のいい人」に対して絶望的な違いを感じた。我々のような凡庸な人間と違って、頭の良い人は物事の本質だけを抜き出して、それを相手にわかりやすく説明することができる能力を持っている。複雑な問題のパターンを抜き出せるのが「頭が良い」ということなのだ。

中でも顕著だったのが頭が良い人間は、最も複雑な事象である感情についても理解をしているという点だった。人を動かすためには他人の感情を理解できなければならない。前川さんの会見からはその意味のインテリジェンスを感じることができた。

ここから逆にバカの定義ができる。重要な部分が見出せないなりに間違った類推を行うのがバカなのだろう。いわゆる「本質」が抜き出せないのか、豊富な情報量に圧倒されて間違った本質を抜き出してしまうのだ。

安倍首相を見ていてわかるのは、本質について間違った理解をすると、自分たちが作ったストーリーに合わせて周りを改ざんすることことでつじつまを合わせようとすることになる。過去の記録、法律や憲法の解釈、人の気持ちなどが自分たちのストーリーに合わせて都合良く歪曲されている。それでも隠しきれなくなってしまったので、ついに記録がなかったことにしてしまった。

例えて言えば天動説と地動説に似ている。地動説の方が簡単に惑星の動きを開設できるのだが、地球は動かないという前提を置いてしまうと、かなり複雑な模型を作って惑星の動きを正当化しなければならなくなる。

これまで、法律の制定や運用といった問題はバカに攻略されてしまった。だが、安倍首相の「バカレベル」は次のステージに至っている。このストレスに耐えられるかが次の注目点だろう。次のレベルというのは党内統治である。

安倍首相にとって今一番大切なことは総裁選に向けて党内地盤を固めることである。このためには直近の選挙でぜひ勝たなければならない。他の党の党首は国政選挙並みの体制で東京都議会選挙に注力しているのだが、安倍首相は距離をおいてしまった。小池都知事の登場で東京都の自民党が不利な状況に置かれているので、距離をおいて責任を追求されないようにしたと考えられる。

確かにかけ学園の問題さえなければ「関係ない」と言い張ることができたのかもしれない。しかし、下手な言い訳に終始した上、実際に資料が見つかったので不利な立場に置かれている。

であれば黙っていれば良かったのだが、正論という右翼系雑誌の講演会で気分が良くなってしまったのだろう。冒頭の憲法発言に至る。苦境にさらされている都議会議員やそれを取りまとめる国会議員は「選挙を差し置いて憲法かよ」と思ったに違いない。

そればかりか、この動きは谷垣総裁事態に作った憲法草案を何の手続きもなしに全否定している。河野太郎衆議院議員は自身のブログの中で「悪ノリだった」と言っているのだが、党内では総括が進んでいないのに「あれは単なる悪ノリだった」ということになってしまったのだ。多分、悪ノリ認定された人たちは今回の議論には参加しないだろう。

ここまでは「安倍首相がバカでした」で済む問題なのだが、正論という雑誌がそもそも「バカ」が作った雑誌だ。バカというと聞こえが悪いので、アンチインテリジェンスと言い換えてみても良い。反知性的という人もいるが、これは御用だという話があるそうだ。

もともと日本はインテリが左翼運動を推し進めてきた。理性的に政治を行えば、貧困問題や社会矛盾が解決するのではないかという見込みがあったのだろう。社会主義といっても濃淡は様々であり、ソ連の急進的な社会主義を推し進める共産党から、ヨーロッパにあった民主主義と共存した社会主義を推進する人までがいた。

しかし、インテリの人たちが左派運動を支援すると、当然それに反発する人たちが出てくる。「何を偉そうに」というわけだ。自分たちがいくら聞いても良くわからない理想をを押し付けてくるうえに、社会に反抗し、中国やソ連と仲良くしましょうなどという主張に危機感を募らせる。そこで作られたのが右派系の雑誌だ。右派系の雑誌では「人(主に敵のことだが)は理性的に行動できないのだから、対抗措置として強い軍隊を持たなければならない」などという主張になる。

正論にしても安倍首相にしても本質が分からないので、人がどのような動機で動くかはわからない。そこで期間を区切って命令すれば人は動かざるをえないと考えてしまったのだろう。結論がありそこに向けて行動するという意味では頭がいい人たちとそうでない人たちに違いはない。が、頭がいい人たちが、心理的なルールを抜き出してどうしたら人が動くだろうかという作戦を練ることができる。一方、頭の良くない人たちは他人がどのような理屈で動くかということがわからないために「偉い人が命令すればいいのだ」というような単純化を行う。そして、その通りに人が動かないとなると、恫喝したり泣きわめいたりするのだ。

バカが政治を支配しても日本にはさほどの混乱は起こらなかったし、これが直接戦争に結びつくということはなさそうだ。しかし、統治にバカが発揮されてしまうと統治機構が脳死状態を起こす可能性がある。官僚の賢さは目的の遂行にできるだけ無駄な動きをしないということなので、そもそもの目的にエラーが起きると何も解決できなくなってしまうのだろう。例えて言えば、超高性能のコンピュータでエラーばかりのコードを走らせるようなものだ。高速でわけのわからない文字列を出力することになるのだ。

さて、ここまでは安倍首相と右翼がバカだという話を書いてきたのだが、一方の左翼側も「相手をどう動かすか」ということがわからなくなっているようだ。現在の左翼運動はこちらが主流になっており「デモで安倍首相を退陣させよう」と言っている。右翼にも左翼にもそれなりのインテリジェンスを持った人たちがいたはずなのだが、なぜこのように劣化してしまったのかはわからない。

一生懸命結論を出そうとしたのだが、これといった結論は出なかった。かろうじて思ったのは、人を動かせる人たちは政治のような不毛な議論には没頭しないのではないかというものだ。偉い人が命令しないと社会は変わらないと思っているような人たちだけが、政治に集まるのかもしれない。

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