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維新が陥った蟻地獄 自民党幹事長が定数削減の今期中の成立を否定

9〜14分

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鈴木俊一幹事長がテレビ番組に出演し12月17日の会期末までに結論を得るのが難しいと発言した。当然と言えば当然の発言だ。今回の鑑賞ポイントは維新の藤田共同代表がどのように連立離脱のゴールポストをずらすかにあるのだろう。そもそもなぜ藤田幹事長がそのようなジレンマに陥ったのかを考えるのは面白いが、日本全体に「要求を出したら負け」という変なゲームが始まっている。

自民党の鈴木幹事長は「会期末までに全て各党各会派の理解を得るための協議を終え、具体的なところまで決め切るかというと、なかなかそうはならないのではないか」と発言した。当然と言えば当然の発言である。

ただしこの発言は「この程度の改革が実行できないような自民党とは組めない」と主張した吉村代表・藤田共同代表の発言と矛盾する。吉村洋文代表によると高市早苗総理を信頼しており法案の提出までは約束しているのだそうだ。

ただし吉村代表は「連立を組む条件」を言っているのであって実現しなかった場合に「離脱する」とは言っていない。更に踏み込んだのは藤田文武共同代表だ。「自民がやめると言って、法案提出までに至らなかったら完全にご破算だ。党内をまとめきれず、やる気がなかったと判断せざるを得ない」と発言している。

今となってはこれもニヤニヤポイントなのだが、実は藤田さんも「ご破算」と言っているだけで離脱とは言っていない。なぜこれがニヤニヤポイントになるかというと藤田氏がゴールポストを持ち上げて移動させる準備を始めているからである。藤田さんご本人としては「こっそりと」のつもりなのだろう。

われわれが約束し、正しいと思うことが理不尽につぶされるなら解散すればいい」と言っている。解散は総理大臣の専権事項であるとは断っているようだが、要するに自分たちのメンツを守るために議員全員の首を切れと言っている。言っていることが無茶苦茶だが、まあ藤田さんならいいかねないという気がする。

そもそも今回「自民・維新連立政権」と言われているのは自民党と維新がそう主張しているだけ。内閣に人を送っていないのでそもそも厳密な意味では連立と言えない。つまりそもそも成立していない連立から「離脱」することなどできない。

これではまるで一休さんの世界だ。

そもそもなぜこんな事になってしまったのか。それは維新の支持者が持っている要求を幾重にもシュガー・コーティングしているからである。自分の要求を伝えることに罪悪感を抱く人が多いのかもしれない。

大阪以外に拡張することを諦めた維新は大阪の人に夢を与えるために「政治が頑張ったら東京みたいになれるかもしれない」という幻想を振りまく必要があった。つまり「大阪は一所詮地方都市であり東京ではない」「いつかは東京みたいになりたいなあ」というコンプレックスが背景にある。

しかし表立ったおねだりもできないので「あくまでも日本全体のことを思っていっている」との建前を持ち出し「大阪以外の都市も副首都になれるかもしれない」としたうえで「政治改革とセットである」と打ち出した。

背景にある抜き差しがたい劣等感を隠すために幾重にも「注意深い仕掛け」が施されている。これがシュガーコーティングである。

ただこれが却って維新の足を引っ張っている。そもそも政治資金改革を訴えながら現実的には「政治を動かすためにはカネ」がかかる。政党助成金を引っ張ってきて秘書が管理する企業にお金を流したのではないか?と疑われているが「もうやりませんから、過去のことは水に流してください」と言っている。

大阪のコンプレックスを利用した利益誘導というといかにも単なる大阪の悪口に聞こえるかもしれないがそんな屈折した態度こそ改めるべきだ。

今の日本は「自分の要求を言いだしたら負け」という奇妙なゲームをプレイする人が多い。要求を口にした人の足を引っ張って罰したがる人が多いのだ。

高市早苗総理大臣は自身と閣僚の給与を月115万円削減する方向で検討を始めているという。これも身を切る改革の一環。議員定数削減がなくなってしまうと更に「身を切る改革」を求める声が出てくる可能性がある。

ここで一度冷静になって考えてみよう。高市総理はワーク・ライフ・バランスを軽視する発言を繰り返しており生産性の低い状況を温存したままでスタッフたちに午前3時からのミーティングを強要している。さらに「大臣としての適切な対価」までなんとなく「悪」であるかのような印象付けを行っている。

結果的に高市総理大臣のメッセージは(本人が総意識しているかは別にして)みんな死に物狂いで働け。対価など求めるな、生産性の低さは根性で乗り越えろというものになる。労働組合連合を支持基盤に持つ玉木雄一郎氏は高市総理の任期にあやかって自民党に接近したいが、支持者からの反発も恐れているのだろう。給与削減に反対している。

維新が自分たちの過去の言動にとらわれて蟻地獄に陥ってしまうのはまあ仕方がないことだと思うのだが、日本全体に謎の「努力に見合った対価を求めたら負け」という変なゲームが流行の兆しを見せているようだ。

日本人はもっと「私はこれが欲しいんです」と積極的に自己開示する練習をしたほうがいいのではないか。

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