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ゲーム理論から考えるトランプ大統領の戦略とその副作用(中国の戦略使い分け)

12〜18分

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トランプ大統領が核実験の再開を指示し波紋と混乱が広がっている。今回はこれをきっかけにしてトランプ大統領の戦略の基礎とその帰結について考える。このエントリーで整理するのは中国である。

これまでChatGPTを使って長期ゲームと短期ゲームについて考えてきた。このフレームワークで分析できない国がある。それが中国だ。つまり中国のゲームを理解するとそのゲームにどうやって対峙すべきかが見えてくる。不安日本されがちな日本人の課題はまず今のゲームのルールと構造を理解することだろう。

日本の外交はつねに不安を軸に動いてきた。もともとアメリカ合衆国に対する巻き込まれ不安があり、安倍政権に入ってからはアメリカに対する見捨てられ不安が生じた。中国に対する警戒心はこの見捨てられ不安の一つの派生に過ぎない。さらにトランプ大統領の登場によってディール不安が生じている。

日本人が不安になるのは日本の安全保障が誰かの手によって作られて日本は受益者に過ぎないという基本認識を持っているからだろう。つまり理論的に不安を解消したいならば能動的に動く必要がある。しかし、80年も受け身だった国民がすぐさま能動的に動けるとも思えない。まずは、今の国際政治がどのようなルールで動いているのかを理解する必要があるだろう。

そこで今回は国際政治が長期ゲームから短期ゲームに傾斜しつつあるという整理をしChatGPTに状況を整理してもらった。専門的な知識がなくても短い質問を繰り返すことで状況を整理し提示できるようになった。便利な時代になったものだ。

アメリカ合衆国はトランプ大統領のもとで短期利益思考を強めておりこの傾向がしばらく続きそうだ。プーチン大統領とネタニヤフ首相は生き残りのための存在ゲームをプレイ中だがトランプ大統領のもとでは短期ゲームがやりやすくなっている。存在ゲームは一度始めると辞めることができなくなる。ゲームを降りた時点で死んでしまうからである。

しかしこの枠組みで整理できない国がある。それが中国である。ChatGPTによると短期ゲームと長期ゲームを組み合わせているそうだ。

中国は基本的には長期ゲームを行っているが、南シナ海などでは局所的な短期ゲームを繰り返している。同じような使い分けを国内でも行っているそうだ。

  • 限定的非協調のもとでの長期的協調を
  • 国家的制度的に制御している

ということになる。

ChatGPTに「日本はどうすれば限定的非協調のもとでの長期的協調戦略に対処すべきですか?」と聞いたところ14秒の長考のもと処方箋を出してくれた。興味がある人は実際に聞いてみればよいと思う。

しかしながらおそらくここで重要なのは日本政府が「中国は長期ゲームと短期ゲームを使い分けている国であり日本もそれに賢く対処すべきである」と国民に対して周知徹底することなのではないか。

高市総理は国内の支持を得るために中国には断固とした態度をとるべきであると主張してきた。このときに保守派が持ち出すのが「近年覇権主義的な動きを強める中国」の行動であり、ChatGPTに言わせれば「短期ゲーム的な動き」である。しかしおそらく中国が短期ゲーム的な動きに依存していると考えると全体の動きが読めなくなる。

REUTERSは次のように表現する。つまり高市総理と習近平国家主席は長期ゲームをやりましょうと約束したことになる。

習主席は、高市氏が首相就任後すぐに会談したのは中日関係を重視していることの表れと評価。日本は「重要な隣国」だとし、「中日関係を長期的かつ健全的に安定的に発展させることが、両国の国民、そして国際社会の期待でもあると思う」と語った。「中日の戦略的互恵関係を進めていきたい。新しい時代に合った安定的な中日関係を構築していきたい」と述べた。

高市首相と中国の習氏が初会談、「戦略的互恵関係」の推進に言及(REUTERS)

一方で日本側は中国の要求について発表しておらず日本のメディアもオリジナルの発言のリンクを掲載していない。中国の主張が反発されると警戒しているのだろう。中国の立場を紹介しただけで「このメディアは中国に支配されている」等と言われかねないほど、最近のSNSは近視眼的だ。

中国がアメリカに代わるルールメーカーになるためには長期的信頼を獲得する必要がある。このために日本とも戦略的互恵関係を維持したい。つまり戦略的護憲は中国にもメリットがある、しかしながら中国国内的には「日本が中国の秩序に服する限りは戦略的互恵関係網の中に入れてやっても良い」という極めて尊大な打ち出しをする必要がある。中国共産党は日本の帝国主義を打ち破り中国を救出したから統治に正統性があると宣伝しているからだ。つまりこの部分だけは生き残りゲームなのだ。

その根拠として使われているのが4つの政治文書である。

  • 日中共同声明(台湾に対する中国の言い分を十分理解するとした)
  • 日中平和条約
  • 平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言
  • 「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明

台湾について日本は「中国の立場を理解する」としている。また実際に台湾にある国民党政府の承認も取り消した。北京にある共産党政府はこれをもって「北京が台北を支配するべきだという原則を認めた」と勝手に合成している。

しかしながら冷静に考えるとこれは北京にある共産党政府が国内統治の正統性を示すための手段にすぎず、日本が「戦略的互恵関係の前提条件である」と平伏する必要はない。まただからといって長期的ゲームを捨ててまで中国の主張を拒否する必要もない。アメリカ合衆国が短期ゲームに傾きつつある中で日本も長期ゲームを必要としている。

具体的にはさまざまな処方箋が考えられるのだろうが、日本は外交と安全保障にアメリカから与えられた制約があることを理解しつつ、中国が長期ゲームと短期ゲームを使い分けていると冷静に問題を見つめるべきだろう。

日本国内には「中国の言い分は絶対に認めてはならず本来なら断交し経済的な関係も断つべきである」と考える極端な人たちがいる。こうした極論はおそらく高市総理がゲームを使い分けるうえでの制約になりかねない。