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ゲーム理論から考えるトランプ大統領の戦略とその副作用(ニューヨーク市長選)

9〜13分

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トランプ大統領が核実験の再開を指示し波紋と混乱が広がっている。今回はこれをきっかけにしてトランプ大統領の戦略の基礎とその帰結について考える。今回はニューヨークの市長選について考える。

ニューヨーク市では資本主義に対する反乱が起きている。しかし民主党はこの動きを全国展開しきれていない。なぜニューヨーク市では過激な社会民主主義待望論が広がり、その他の地域には波及しないのか。

トランプ大統領のディール戦略の基礎については別のエントリーでまとめた。

今回はこのゲームが進行すると何が起きるかを考える。

ニューヨーク市長選挙で社会民主主義者のマムダニ氏が躍進している。これはトランプ流の不動産取引の帰結であると捉えられている。ChatGPTの整理によると次の通りだ。

不確実性背景にしたトランプ氏のディールはニューヨークやラスベガスなど限られた土地を巡るかなり特殊なビジネスゲームを背景に構築されている。

  • 許認可の境界線を突き破り強引な開発を進める
  • 公共区間を私的資本で囲い込み高級化を図り価値を創出する
  • 自分たちに有利なルールを作るように政治に働きかける
  • 自分たちは既得権に反対しているという分断構図を作る

つまり前のエントリーで整理したように「一回きりゲームの繰り返し」を行い自分たちに有利な状況を作り出してきた。結果的に住民は行政を疑うようになり社会民主主義の台頭を招いた。

マムダニ氏だけでなくアレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員もこうした主張を行っている。しかしこの流れは全体に広がっているわけではない。

ChatGPTは「議会選挙が2年(下院)または4年(上院)」のサイクルで行われる一回ゲームだという認識のせいだと主張する。ニューヨークの有権者は長年の「一回きりのゲーム」が実は一回きりのゲームではないということを学習したが、アメリカ全体にまだそのような認識が生まれていない。

こうした認識が生まれるためには

  • 将来の相互関係に期待ができる(長期・未来志向)
  • 裏切りのコストが大きい
  • 全体利益の可視化

が重要だという。つまり短期ゲームを防ぐためにはゲームを長期ゲーム化しなければならず、そのためには協力が必要になる。

このまま協調主義が成り立たないと囚人のジレンマ状態が定着し全体の利益が低下する。社会民主主義が資本主義と邂逅することなく過激化すればニューヨーク市のビジネスセンターとしての価値は維持できなくなるだろう。

これは短期的な利益を搾り取りたいトランプ氏のようなビジネスマンにとっては有利な環境だが長期的な利益を維持したい伝統的な共和党にとっては脅威となる。

トランプ大統領は現在共和党に対してフィリバスター(少数派の議事妨害権)を廃止するようにと求めている。これは歴史的に上院で獲得されたルールで予算や人事などの承認には過半数+α(現在は60)の同意が必要というもの。

上院共和党の指導者たちはこのフィリバスターを温存したいと考えている。短期的には自分たちの要望が通りやすくなるが長期的には協調が失われ結果的に過激主義化が進行するとわかっているからだ。すでに共和党はMAGAに侵食されているが民主党も過激な社会民主主義が浸透しかねない。分断されたアメリカ合衆国はもはやイデオロギーで統合された国ではなくなってしまう。

上院共和党は「民主党が議会を奪還した場合悲惨なことが起きる」と考えている。そして民主党が政権を奪還するかどうかは全体の選挙ではなく一部のスウィングステートの動向に左右される傾向があるとされる。

しかしながら上院の議長は副大統領であり職権でフィリバスターを停止することは可能だとAxiosは指摘する。

選挙サイクルが短いアメリカ合衆国は構造的に「短期思考」に政治が侵食されやすい。そもそも小選挙区制・二大政党制の国なので対立構造が温存されやすいのである。この対立構造はアメリカの議会に「人質政治」を蔓延させている。

対立政治の激化をかろうじて食い止めてきたのが上院のフィリバスターだったわけだがこの最後の砦もトランプ政権によって壊されようとしている。結果的に対立と揺り戻しの激化を招き、アメリカ合衆国の分断はより深刻なものになるのかもしれないと予想できる。