9,100人と考えAIとも議論する、変化する国際情勢とあいも変わらずの日本の行方


「貧しい人がお腹をすかせてもそれは民主党のせいだ」 共和党の兵糧攻め

9〜13分

イイネと思ったら、Xでこの投稿をシェアしてください

今回のメインニュースはトランプ大統領の訪日である。勝ち負けにこだわる人たちは「世界で最も卓越した日米同盟」を勝ち取った高市総理がチャンピオンになったと理解すればいいだろう。

一方で政治を理解したい人はこの裏にある米軍の資金問題について学習する必要がある。このときに欠かせないのがアメリカ合衆国の連邦政府閉鎖問題だ。

アメリカ合衆国で連邦政府の閉鎖が続いている。政府はSNAPと呼ばれる食糧援助プログラムを打ち切り民主党に圧力をかけている。共和党側は貧しい人たちがSNAP打ち切りで困ってもそれは過激なマルクス主義者のせいなのだと説明している。そしてこの恫喝は民主党攻撃には極めて効果的であるとみなされている。

Could halt in SNAP benefits, paychecks pressure lawmakers to strike shutdown deal? (ABC News)

ただ冷静に考えるとそもそもなぜ共和党が医療福祉予算を盾にとって立てこもらざるを得ないのかがわからない。つまり」「勝ってどうするんだ?」ということだ。

そこでChatGPTに質問してみた。

こうした手法は人質型政治(hostage politics)と呼ばれている。第1段階は1970年代に始まったが対立はあくまでも理念的なものだった。最初に社会福祉予算を人質に取り政府を閉鎖したのはクリントン政権のニュート・ギングリッチである。さらにオバマ政権下で経済が回復せず共和党が議会の多数派を握ったことで人質型政治が制度化されてしまう。

オバマ政権下では共和党が社会福祉費を人質に取り民主党が軍事費を人質に取るという人質政治が蔓延。おそらくはこの余波で日本の自衛隊に対して米軍機能の肩代わりというアイディアが出てきたものと類推できる。安倍総理は外圧を利用できず解釈改憲と限定的集団的自衛権の行使容認に踏み切った。

ではなぜこのような人質政治が制度化されてしまったのか。アメリカ合衆国が貧しくなり格差が拡大したからなのだろうか。

ChatGPTは3つの理由を挙げる。実は選挙制度の問題なのだそうだ。

  • アメリカ合衆国は二元代表制でありねじれが発生すると予算を通すのが難しくなるため、相手を交渉に引きずり込むためには何らかの人質が必要になる。特に政策を止められない野党は予算(過半数+αが必要)を人質に取るしかなくなってしまうのだ。
  • 小選挙区制度であり選挙区の多くが「共和党・民主党のどちらしか勝てない安全区」になっている。このため残りの選挙区の競争が激化する。
  • 与野党対立が激化したことで有権者が「自分がどちらの政党に属しているか」を基準にするようになった。これをアイデンティティ政治と言っている。リリアナ・メイソンはこれを宗派的党派対立主義(political sectarianism)と表現しもはや宗教対立のような状態が生まれている。

ゲーム理論では協力の不在は全体利得を減らすということになっている。つまりアメリカ政治はゲーム理論的に見ると「協力均衡(cooperative equilibrium)」が崩壊し、繰り返し囚人のジレンマに陥っている状態と評価することができる。

アメリカの政治学者たちはこの協力均衡を取り戻すための提案をいくつも出しているそうだが、どれも実現には至っていない。

アメリカの分断がどこまで進むのかという概念的な問題もあるのだが、別の懸念も生じている。トランプ大統領が議会から資金を調達できなければ「別のルート」を使って資金調達すれば良い。友だちにカンパしてもらえば良いのだ。

この手法はすでにホワイトハウス東翼の建設計画で使われている。友人や支援者の寄付で賄った事になっている。だが、どうやらトランプ大統領に対する和解金も流入しているようだ。トランプ大統領は司法省にも和解金を要求しているなどと伝わっている。こうなるとカンパというより一種のみかじめ料の要求である。

もしくは関税のような新しい問題を作り出し「これを免除してやるからアメリカに投資しろ」でも構わない。実際にラとニック商務長官は次のように発言している。

日米が今年合意した貿易枠組みでは、トランプ氏は、日本による5500億ドル(約84兆円)の対米投資を条件に、日本製品に対する関税を引き下げ、上限も設定した。ラトニック氏は、28日に発表した分だけでも約4900億ドルの投資に相当するとしている。

トランプ氏、日米企業幹部と夕食会-アップルCEOやソフトバンクG孫氏(Bloomberg)

つまり議会が閉鎖されトランプ政権が予算的に行き詰ると、手元の白紙小切手などを掻き集めてなりふり構わない資金捻出を始める可能性がある。日本はアメリカ合衆国に対してすでに5500億ドルの白紙小切手を渡す約束をしている。

もちろん大規模な軍事予算は出せないのだから有事の際には日本に対して「米軍基地を守るためになんとかしろ」と要求してくるだろう。

“「貧しい人がお腹をすかせてもそれは民主党のせいだ」 共和党の兵糧攻め” への1件のコメント