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「自民党はなにかはぐらかしている」という違和感の正体はどこにあるのか?

6〜10分

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高市総理の所信表明演説を受けた時事通信と共同通信がそれぞれ批判記事を書いている。政治とカネの問題に対する反省が足りないのだという。確かに高市総理の所信表明は総花的でとりとめがなく批判されそうな点への言及も避けているが「批判するのはそこではないのではないか」と言う気がする。そもそも自民党が何かをはぐらかしているようにみえるのは政治とカネの問題についての認識が甘いからなのだろうか。

まず結論を書く。別の投稿で整理した通り現在の自民党政権の問題はアベノミクスの総括が終わっていないところにある。すでにデフレからは脱却しコストプッシュ型のインフレに陥っているが未だにデフレ脱却宣言が出せずにいる。治療の成果がでないうちに患者の症状が変わってしまったのに医療ミスを指摘されたくない医者が新しい診断書を出せない。結果的に間違った処方で薬が出されることになり効果が出ない。そんな状態だ。

だが患者にも医学の知識はないので「この医者はなにか隠している」としかわからない。

岸田総理はそれでもアベノミクスの終了を宣言しようとしたが自民党内外の政治的リスクを乗り越えられなかった。石破総理はそもそもこの話題から目をそらせようとしておりデフレ脱却宣言には踏み込んでいない。

これが我々が潜在的に抱えている「自民党はなにか誤魔化している」といううっすらとした違和感の正体であろう。

しかしながらマスコミも野党もこのような指摘ができていない。時事通信も共同通信も「高市総理のは政治とカネの問題にふれなかった」と指摘している。とはいえ政治資金のあり方について独自の見解を持っているわけではない。結果的に反省が足りないのだという精神論に陥ってしまっているようだ。

とは言えメディアだけを批判するのも可哀想という気がする。

立憲民主党を筆頭に野党も経済認識の現状を示しておらず「自民党には具体策がない」と主張するばかり。おそらく自分たちには具体策があると言いたいのだろうが、直近の物価高対応の支援策以上のものは出てきていない。

結果的に高市総理の所信表明演説は「現状を打破して強い日本を取り戻すためにとにかく死ぬ気で頑張る」という精神論に終わっている。

高市政権は現在の経済情勢をどう見ているのか。

全文の中に「インフレ」「デフレ」を検索してみたがヒットしなかった。ただしインフレの別名である「物価高」は対策すべき問題として語られている。デフレマインドは「消費マインド」と言い換えられているが具体策はこれから会議体を作って検討するとされているのみ。後は力強い日本をあきらめません、頑張りますと言っている。

これにより、所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がり、税率を上げずとも税収を増加させることを目指します。この好循環を実現することによって、国民の皆さまに景気回復の果実を実感していただき、不安を希望に変えていきます。

所信表明演説全文(時事通信)

つまり与党も野党も「当座をどうにかしないと国民は不機嫌なまま」という現状認識までは一致しているが、それ以上の方策を全く打ち出せていないということになる。高市政権はこれを精神論で乗り越えようとしているようだ。

結局「現状を誤魔化し」「解決策がないことを誤魔化している」点が薄っすらとした政治不信につながっているのだが、それが言語化できないため「自民党はなんか反省していないよね」ということになりそれが政治とカネの問題と無理やり結びつけられているのではないかと思う。