高市政権発足が決まり日経平均は50000円台に近づいた。ところが組閣名簿が発表されると株価は失速している。組閣名簿を見てなるほどと納得した。高市政権が持っている「合金」的などっちつかずさが市場にある程度理解されたようだ。
今後、高市政権は内部に深刻な矛盾を抱えたままで綱渡りによる政権運営を迫られる。合理的に考えれば自民党は解党に向かうはずだが有権者が合理的という前提は今までもあまり当てにならなかった。混乱は収まらず混沌とした状況が続くのかもしれない。
維新の政策協力により高市政権発足が決まると株価は上昇を始め一時50000円台まで50円というところまで上昇した。ところがその後閣僚名簿が発表されると失速している。閣僚名簿を見て「ああなるほどな」と感じたが、あとになってそれを裏付ける記事も出てきた。
政局安定を好感して債券は上昇(金利は低下)している。財務省出身の片山氏の財務相起用が報じられたことで財政拡張懸念もやや後退した。円相場は対ドルで151円半ばに下落している。
高市内閣が発足へ、史上初の女性首相に-片山財務・城内経財相(Bloomberg)
自民党人事は神道と仏教系新興宗教の色彩が濃く公明党の離反を招いた。
高市政権を見ると「責任ある積極財政を推進する議員連盟」から多くの人材を登用していることがわかる。今回成長戦略担当(赤澤氏の後任だが役職名が変わった)の城内実氏もメンバーだ。
しかしながら、財務省と話をするためにはやはり「財務省語」を話せる人材を置くしかなかったようだ。
先日は日本版DOGEについて分析したが、当面は片山さつき財務大臣が補助金などの整理を行うようである。これまで補助金は自民党の選挙政策と強く結びついてきたが、今回の行政仕訳は財務大臣が統括する形になるのかもしれない。ただ、片山氏が維新の期待の沿って行政仕訳を始めてしまうと自民党の中から大きな反発が出ることが予想される。
アメリカ合衆国では共和党が民主党の政策を盛んに攻撃している。また民主党の行政仕訳も自民党の旧来のやり方を批判したものだった。つまり、行政仕訳は選挙の結果として正当化されてきた。
維新はこれまで大阪自民党が既得権益を握っていると主張し選挙で躍進した政党である。吉村洋文維新代表はこの成功体験を永田町に持ち込みたい考え。ところがまともにこの政策を実行すると高市政権は選挙で信任を得ないまま「自民党のこれまでの政策」を切り刻むことになる。一方で政策が実現しなければ維新が政権を離脱してしまうかもしれない。この時点で高市政権は「ゲームオーバー」だ。
REUTERSは東京大学先端科学技術研究センターの牧原出教授にインタビューをしている。牧原氏は今回の連立を「なんちゃって連立」と表現した。牧原氏はブレーキ役を務めてきた公明党が政権を離脱したことで自民党の右傾化が進み解体に向かうと予想している。まともに論理的に考えるとそうなるだろう。
ラストベルト化した日本の都市に暮らす人々は構造的な解析を諦め、自分たちの暮らしが良くならないのは日本の「お荷物」のせいであると考え始めている。そしてそれが消えてなくなれば日本は純化され良くなるだろうと考えているようだ。その意味では右傾化というより「日本純化運動」というべきなのかもしれない。
仮に純化される対象が立憲民主党のみにあれば良いのだが実はそうではない。維新が入ったことで「自民党の中にも排除すべき価値観がある」ということになってしまった。医療費の大幅削減などがその最たるものだ。
合理的に考えると早晩高市政権は頓挫する可能性が高い。しかし民主主義が必ずしも合理的に意思決定するというわけではない。むしろ行き詰まれば行き詰るほど感情的なロジックの付け替えや敵対勢力の悪魔化などが起きる。高市早苗新総理が「私は日本を諦めない」と主張すればするほど内部矛盾がきしみとなって自民党内で大きな音を立て続けるのだ。
