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地方創生とリベラルの放棄:自民・維新の基本政策を読む

8〜12分

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高市執行部と維新の間で政策協定が結ばれた。公明党が抜けたことで右傾化が進んでいる。今回はFNNが紹介した全文を読みつつ気になったところを抜き出してみた。第一に気になったのは書かれていることではなく書かれていないことだった。田中派以来の地方に配慮する政策がなくなり全体に都市型政党に生まれ変わった印象だ。

日本の都市は全般的にラストベルト化が進んでいるため都市型といっても「右傾化した都市」になっている。今後高市・維新ラインは組織の支援を諦めて無党派の支持に頼る政権運営を行ってゆくのだろう。

大阪維新は大阪にいた自民党の一部が「改革政党」を偽装したもの。もともとのは発想は大前研一氏のアメリカ型地方分権(道州制と言われた)だがこれは利益誘導のための看板にすぎない。東京のような産業基盤はないため改革を提唱しつつ実際には利益を外から誘導し続ける必要がある。

ちなみにアメリカ型の成長は「競争」を前提にしている。このため古い組織や企業は適時潰される「創造的破壊=スクラップ・アンド・ビルド」が行われる。これがイノベーションの適温を作る考えられている。だが今回の政策協定にはコンセプトはなく「国家が集中投資さえすれば自ずと強い産業が生まれる」という精神論的な期待だけがある。

日本は一億人が火の玉となってこの難局を乗り越えるべきだ。

ということなのだろう。

今回の自民党の高市シフトはつまり全国の都市部が産業基盤を失い「大阪化」していると位置づけることができる。

当初このブログを書き始めたときには、日本の政治もアメリカのような先進都市とラストベルトのような対立が生まれるのだろうと思っていた。アメリカの場合は州ではなく「都市連合」同士が競い合っている。しかし、日本では30年間創造的破壊が起こらなかったため、ベイエリアのような地域は生まれず都市がラストベルト化した。今回の高市・維新ラインは衰退を受け入れ日本を精神論で引っ張る内容になっている。コンセプトのなさを精神論で補っているため少子高齢化対策についてはこれだけしか書かれていない。内容のなさは「強力な」という形容詞で補った。

●わが国最大の問題は人口減少という認識に立ち、令和七年臨時国会中に、政府に人口減少対策本部(仮称)を立ち上げ、子供子育て政策を含む抜本的かつ強力な人口減少対策を検討実行する。

【全文】自民と維新の連立政権合意文書 外国人政策「ルールや法律守れないなら厳しく対応」高校や給食無償化も(FNN)

今回の政策協定を読むとリベラルが反対しそうな政策がたくさん入っていることはよく分かる。ブレーキの役割を果たしていた公明党が抜けたことで右シフトが鮮明になった。例えば夫婦別姓は否定され「旧姓利用」の推進が提唱されている。また憲法9条の改訂と緊急事態条項の創設が提案されており「条文の制定」を目指すのだという。また日本の国家観として明治維新以降に固定化が進んだ「父系主義」が強調されていて、天皇は男系に限る事になっている。

おそらく、リベラル勢力はこれに腹を立てるのだろうが、保守派はこれを純化と捉えるだろう。リベラルは弱さの表れであり精神的にしっかりすれば国家として「強くなれる」という価値観だ。

しかし実は「書かれていないこと」のほうが重要なのかもしれない。

これまで書かれていた地方に利権を分配する「地方創生」が否定された。各種補助金の見直しなども含まれている。つまりこれまで自民党を支えてきた地方と各種団体を見捨てて、大阪(もちろん維新は否定しているが)に投資を集中させるという内容になっている。

これにともなって農業政策などについても殆ど触れられていない。これが石破政権に対する反発を意味しているのか、もともと高市早苗総裁がやりたかったことなのかはわからない。

●食料の安定供給確保が、国民の生存に不可欠であることの認識を共有し、全ての田畑を有効活用する環境を整え、厳しい気候に耐え得る施設型食料生産設備(いわゆる植物工場及び陸上養殖等)への大型投資を実現する。

【全文】自民と維新の連立政権合意文書 外国人政策「ルールや法律守れないなら厳しく対応」高校や給食無償化も(FNN)

いずれにせよ、これまで自民党を支えてきた地方組織と各種団体を見限り強いに日本を夢想する飽きっぽい都市型の無党派層に夢を与える内容になっている。(地方都市を含めた)都市型無党派層が熱心に高市体制を支え続ける事が前提の政権ということになるだろうが一度決めたのだからもはやこの方針を全面的に打ち出す必要があるということになる。