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吉村洋文代表の一人歌舞伎がテレビのワイドショーを席巻

9〜14分

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吉村洋文代表はテレビ映えがする。金曜日のテレビ番組に出演し見事な「一人歌舞伎」を演じていた。

自民党はこの歌舞伎に応えるように議員定数削減を決めている。吉村洋文氏の政治家の熱量が政治を動かしたのだ!と称賛したくなる。安住淳立憲民主党幹事長などは「TBSの番組構成がなっていない」と上から目線で注文をつけ「安住淳感じ悪いってよ」という印象をより強化させていた。

吉村洋文日本維新の会代表はテレビ番組で「身を切る議員定数削減は譲れない!」と大見得を切った。もともと見た目が良い爽やかな役者の見事な一人歌舞伎になった。メディアは驚き主張の行方に注目していたが、自民党はこの熱量に答える形で「削減を受け入れます」と表明した。

吉村洋文氏の大勝利だ!

ではその大勝利の裏で何が起きていたのかを見てゆこう。

大阪のテレビ番組がどんな構成になっているのかはわからないが、東京の番組には長い間政治報道に携わる人達がいる。彼らは直接永田町を取材しており「自民党にとって地方組織に対する企業献金の禁止は受け入れがたい」ということを知っていた。

今回議員定数削減は見た目は派手だが「政治とカネ」の問題を後退させる目くらましであると疑っているようだ。田崎史郎氏の冷静な指摘に慌てた吉村代表は「評論家がいうほど簡単な問題ではない!」と再び大きく見得を切ってみせた。これを熱量と感じる人もいるだろうし「ああ苦しい答弁だな」と思った人もいたことだろう。

自民党は「簡単ではない」と見せるために一旦持ち帰ってみせたがすぐに「維新の案を飲みます」と言っている。

背後のからくりについては概ね田崎史郎氏と佐藤千夜子氏が解説しているので他の報道によってバックアップしてゆきたい。

まず衆議院ではすでに定数削減問題について話し合われていた。座長は逢沢一郎氏だ。2023年末に論点整理はしているがその後議論の進展がない。

選挙制度は与野党の立場に違いがあるため、具体的な改革案には踏み込まず論点整理にとどめた。25年の国勢調査の結果が判明するまでをめどに「具体的な結論を得るように努力していくことが重要」と記した。

衆院の選挙制度、与野党が報告書 通常国会で議論要求(日経新聞)

田崎史郎氏によれば比例に依存する公明党は議員定数削減に反対の立場だったという。選挙区がプラチナチケット化しているため選挙区の整理はできない。するとどうしても比例を削る議論になってしまう。ただ、公明党が連立から抜けた今となっては自民党に議員定数削減に反対する動機はないのが実情だ。

これら一連の背景情報から考察すると(もちろんエビデンスはないのだが)吉村代表は事前に情報を誰かから仕入れていた可能性が高い。自民党と維新は小泉首班を前提にして連携構想を進めていたのだから、吉村氏が自民党の意向を知っていても不思議はない。

ただ野党はすでに吉村氏の歌舞伎についてわかっている。このため特に歌舞伎の意図についてはとやかく言っておらず、企業団体献金を温存して話をすり替えようとしていると攻撃している。大阪で競合関係にある公明党と同じ保守系無党派を取り合う立場にいる国民民主党には協業するメリットがあり、立憲民主党も乗りやすい。

国民民主党の玉木雄一郎氏に至っては「議員定数の削減は別にやってもいい、むしろ早く片付けて「本丸」である政治とカネの問題=地方組織への企業団体献金の禁止」の議論を始めようと提案している。

ただこうした戦略的事情を知らない国民民主党の支持者たちは公明党と国民民主党が連立を組んだから玉木雄一郎は魂を捨てた・判断を間違えたと息巻いているそうだ。何でも中国というファクターを入れれば理解できると考える人が多いようである。

維新はもともと吉村洋文氏の個人的な人気によってテレビで躍進した政党である。支持は伸び悩んでおり有権者は参政党や国民民主党に流れている。こうした崖っぷち状況にあるのだから、吉村洋文代表の歌舞伎には仕方ない一面もある。万博でもYouTubeで熱心に広報活動を展開しており、党勢拡大のために熱量高く一生懸命になっていると評価すべきなのかもしれない。

この問題はむしろ「企業団体献金が日本の成長にとってメリットが多いのかデメリットが多いのか」という切り口で語られるべきだろう。しかし実際には単なる政党同士のつぶしあいという側面がある。

野党は複雑な地方組織に依存する自民党を潰したいと考えており、大政党は比例を減らして「小うるさい」少数政党を駆逐したい。結果的に「日本が再び成長するためには政治がどうあるべきか」という議論は行われず、時間ばかりが流れてゆく。

更に国民民主党の支持者に至っては「中国の影」まで見えているようだ。

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