維新は最初から自民党と組むつもりだったのだなあと思いながら政策連携の話を理解していた。だが、どうやらその判断は間違っていたようだ。
このエントリーでは吉村代表が採用した、無党派時代の「サウンディング戦略」について解説する。おそらく吉村知事は「落とし所」は決めていないだろう。だから吉村知事の思惑についていくら類推しても全く意味はない。
自民党との前のめりな政策連携に向かっていると思われていた維新だが吉村代表が「議員削減を今国会で実現させる」と宣言したことで思わぬ展開を迎えている。維新は企業団体献金の廃止を訴えており「自民党が飲めない」提案をしたように見える。Xのトレンドまとめにも登場したが、ネットで「議員定数削減は是か非か」という番組が乱立すれば吉村代表の作戦勝ちということになる。
よく話を聞いてゆくと、吉村知事の話はどこかおかしい。夕方にTBSのNスタに出た時点では「政治改革については総合的に判断する」と主張していたそうだ。つまり反応をみて夕方から夜の段階で「言い方」を変えている。反応を見ながら微調整している可能性が高い。
こうした手法をサウンディングと言う。提案をして見て周りの様子をうかがう手法だ。自民党は従来からこのサウンディングが得意だが昭和の言い方では「アドバルーンを上げる」と言われていた。新聞にリークして世論の様子をうかがっているのである。サウンディングとアドバルーンの違いは即時性である。アドバルーンはゆっくりあげてゆっくり反応を聞いてゆくが、サウンディングは即日(SNSだと数時間で)結果が出る。
つまり維新が本当に議員定数削減に踏み込むかどうかは今後の世論次第ということになる。ネットニュースでは「ネットは驚いた」とするものが多いが、Xのトレンドを見ると「議員定数削減には実質的な意味はない」とするものが多い。自民党の重鎮逢沢一郎氏は「論外」と切り捨てている。
ではなぜ吉村代表はサウンディングに依存するのか。維新は「無党派層」に浸透した政党で組織的背景を持たないため、躍進はテレビに大きく依存しているとされている。コロナ禍でテレビに出続けて「吉村寝ろ」と心配されたのは語り草だ。
しかし吉村代表が露出したのは関西キー局だけだった。このため維新の人気は関西以外には広がらず、新型コロナ禍の収束とともに低調になってゆく。
このサウンディング方式には大きな欠点がある。SNS時代の消費者・視聴者は自分が関心を持ったテーマにしか反応しない。
例えば副首都構想は大阪への利権誘導と理解され(吉村代表はそうは言っていないのだが)大阪以外の人は関心を持たない。このため「日本維新の会所属の福岡県内の議員4人、党県総支部に離党届提出…「副首都構想」など関西中心の政策批判」や「維新議員、次期衆院選は無所属で 党運営に不満、当面離党せず」が示すように関西以外では離反の動きもある。
さらに世論の反応を知りたくてもマスコミは自分たちで勝手にアジェンダセッティ具してしまい、維新が本当に知りたいことは教えてくれない。
このため、吉村知事はテレビ出演の機会を捉えて自らニュースを作り出し、反応を探りつつ、ウケがいい政策にシフトしてゆくしかない。
つまりそもそも吉村知事にはまとまった考え・落とし所がないことになるのだから「どの時点で折り合ってもらえるか?」について自民党が密室でいくら話し合ったところで全く意味がないことになる。自民党は交渉のやり方を変えてゆかなければならない。
野党がまとまらなかったことで高市早苗総裁は総理大臣になれる可能性が高まっている。おそらく維新が立憲民主党の提案に乗ることはないのだから、高市早苗氏は総理大臣になれるが「マスコミ風まかせ」の政権運営を余儀なくされるということになりそうだ。
