TBSのひるおびで自公がなぜ離婚してしまったのか、今後どうなるのかという特集をやっていた。田崎史郎氏と佐藤千夜子氏はおそらく理由がわかっている。背後にいる創価学会が高市早苗氏を嫌っているのだ。つまり高市早苗氏が総裁でなくなればまた連立の可能性があると同時に、支部単位では「踏み絵」の後に公明党の協力が得られる人と得られない人が別れることが予想される。
ただしなぜ創価学会が高市早苗氏を嫌っているのかが説明できない。日本の政治は「宗教と分離している」という建前を崩せないからである。出演者の中にはこれがわかっている人とわかっていない人がいて、見ていて面白かった。
公明党が政権を離脱した理由は複合的だ。そもそも与野党のポジションをつまみ食いする「ゆ党」戦略で維新と国民民主党が成功している。さらに清廉潔白さを求める真面目な創価学会信者が自民党議員に代わって謝罪をさせられていたという苦々しい現実があった。
しかしそれだけでは今回の離婚劇は語れない。創価学会はそもそも戦前の政教一致体制で弾圧された過去がある。だからあからさまに戦前回帰を求める勢力とは協力ができない。これは調べればすぐに分かるような程度の情報であり、中国陰謀論を持ち出すよりも簡単に今回の状況を説明できる。
番組では立川志らく氏がこの中国陰謀論について触れ、田崎・佐藤両氏に否定されていた。立川氏には反論の材料もなく議論は底で終わりになっている。立川志らく氏のポジションはそれなりに面白そうだ。日本が何者かの手によって汚されているという基本的な世界観を持ち、自民党と公明党が手を切ることにより日本の純化が進むと考えているのだと思う。彼の世界観をじっくり聞いてみるのも面白いかもしれないと感じる。東西冷戦構造が曖昧になるなかで育った日本の中高年がそのような考え方を持つように至ったのかが研究できるからだ。
しかしながら、日本は戦後に米による民主主義を受け入れているため「宗教的なアジェンダに基づいたイデオロギー変更が自民党で行われた」ということは書けないし言えないのだろう。だから、選挙対策の責任者に神道や信仰仏教系の支援を受けている人が就いたということは言えない。高市早苗氏も副会長の地位にあり、政調会長もその組織に参加している。
公明党も創価学会とは独立して意思決定している建前なので、公明党が何を嫌って高市早苗氏を否定しているのかがうまく説明できない。
高市早苗氏があえて今回の人事であからさまな「戦前回帰シフト」を取ったのかはよくわからないが、少なくとも相手側が流れの中でそう受け取る可能性があるという事は考えていなかったようだ。高市早苗総裁の稚拙さがわかると同時に今後対金融市場コミュニケーションや対米コミュニケーションに課題を残す形になった。
古屋圭司さんなどが事前に台湾を訪問している。政府関係者は言ってはいけないが党関係者であれば大丈夫という建付けだったようだ。大陸中国と明確に事を構える覚悟があるのならそれでもいいのだが、アメリカ合衆国がどう出るかを分析するようなことはなかった。トランプ大統領は対中協議に意欲を燃やしているがその状況は日替わりである。
今回の離婚の背景に宗教対立があるというのは決めつけであって意味がないのではという人も多いかもしれない。しかしやはり今後を読み解くうえでは重要な補助線だろう。
まず斉藤鉄夫代表は「高市さんの次とは連立交渉を再開してもいい」と言っている。高市早苗氏とその背景に疑念を持っていることがわかる。このため公明党が首班指名で野党連携に応じることはなさそうだ。あくまでも「ゆ党」としてバーゲニング・パワーを維持したいだけなのだろう。
鈴木幹事長もこの事がよくわかっている。このため都道府県連レベルでは選挙協力が続くことを期待すると言っている。つまり創価学会は「保守回帰系」の候補者を支援しないだけなのだから、候補者単位で「創価学会の支援を取るか保守系の支援を取るか」を決めればいい。つまり創価学会が自民党の支援から完全に手を引くということはないという予想が立つ。
「リリーフ」にすぎない斉藤鉄夫代表のあやふやさはやはり気になる。
高市早苗氏に対する創価学会の嫌悪を隠さず「高市の次は協力してもいい」と正直に開陳しつつ、次を見据えて「首班指名では野党に協力しない」と言い切ってしまった。西田幹事長はこの発言を修正し「野党に対する協力も排除しませんよ」と言い換えている。西田幹事長は「バーゲニング・パワー維持」を狙っているのだろうと考えるのが自然だ。
斉藤さんは嘘がつけないいい人なんだろうなあという気はする。

“テレビは結局自公がなぜ離婚したのかをうまく説明できなかった” への2件のフィードバック
新聞では普通に「(公明党は)議員の多くが創価学会員」と書かれていますが、テレビでは語られづらい面があるのでしょうか。
池上彰氏が出演していたテレビ東京系の番組では公明党と創価学会の関係がよく語られていた印象です。池上氏は組織票に否定的だったので公明党と創価学会の関係についても否定的だと思います。
そうですね。ここらへんのコード(言える部分と言えない部分の境目)がどこにあるかはわからないですが、当事者があくまでも「政治の問題」として語っているため説明に採用しにくいのかもしれないです。ただネットの後追いで内容が変わったりするので今後の変化にも注目したいですね。