実に芝居がかかった演出だった。トランプ政権の閣僚に必要なのは大げさな演技力のようだ。しかしながらガザ和平に関わっていた人たちからはトランプ大統領を称賛する声が上がっている。ノーベル平和賞の選考委員たちは最後の会合は6日に終わっておりガザ和平は対象外だったとわざわざ釈明せざるを得なかった。CNNでさえ「トランプ大統領がノーベル平和賞を取る理由」というコラムを書いている。
ノーベル平和賞の選考委員たちが「最後の会合は6日に終わっているのでガザ和平は選考対象外」とわざわざ釈明している。また「あの」CNNもトランプ大統領は来年のノーベル平和賞にふさわしいかもしれないという記事を書いている。
背景にあるのはガザ和平を巡る不都合な現実である。話し合いによる和平は実現せず、相容れないものを力によって押さえつけなければならないという現実がある。しかしヨーロッパの財政状況は逼迫しておりアメリカ合衆国以外に和平を実現できる国がない。
結果的に世界はトランプ大統領の名誉欲にすがるしかない状況。各国の首脳たちは相次いでトランプ大統領を称賛している。ここで撤退されては困るという気持ちがあるのだろう。
ガザ和平の第一段階はイスラエルの前線の後退と人質の全員解放がセットになっている。しかしその後でハマスを武装解除させられるのかという問題とネタニヤフ首相が依存する極右の問題を解決しなければならない。彼らは本質的に折り合うことはないので力があり何をしでかすかわからないトランプ大統領のすがるしかないのが現状だ。
CNNは「今年のノーベル平和賞は取れないかもしれないが来年はイケるかもしれない」と書いている。つまりトランプ大統領が飽きずにガザ状勢に関わり続ける以外に平和が保たれる道がないということになる。トランプ大統領が飽きた時点でゲームオーバーだ。
ノーベル平和賞は毎年、1896年に死去したアルフレッド・ノーベルの命日、12月10日に授与される。ノーベル委員会はその2カ月前の10月10日に受賞者を選ぶ。トランプ氏が今週、同賞を獲得できるかもしれないと思っているのは間違いないが、その可能性は非常に低い。しかしノーベル賞が125周年を迎える来年、トランプ氏が受賞する可能性は十分にある。
【分析】トランプ氏にノーベル平和賞受賞の可能性がある理由(CNN)
しかしながらこの「名誉欲カード」が使えるのは国際情勢だけ。国内では連邦政府の閉鎖が続いている。トランプ大統領はこの問題に当事者として関わることを拒否し連邦政府閉鎖の原因はすべて民主党にあると主張している。
結果的にアメリカの航空管制官は足りなくなりアメリカ合衆国の混乱はすでに始まっている。トランプ大統領の恫喝が効果的なのは彼が世界一の軍隊の司令官だからなのだが兵士たちも来週の給料がもらえないかもしれない。
事実上国連が崩壊した後の世界秩序は明らかにかなり危ういバランスの上に成り立っている。
