ABCニュースのヘッドラインに「トランプ大統領はEUに対して地獄に落ちろと罵った」というニュースを見つけた。バックが見慣れた青緑なのでどこなのだろうか?と思ったのだが国連総会だったようだ。Axiosは中指を立てたと書いている。トランプ大統領は今日もアメリカ合衆国が戦後80年かけて築いてきた国際的地位をまるでなにかに取り憑かれたように破壊している。背景にあるのが新興宗教化したアメリカ合衆国だ。
ABCニュースはEUに対して地獄に落ちろと罵ったとわざわざその箇所を抜き出して記事にしている。カースワード(呪い)はキリスト教的ではないと考えるのが一般的である。メディア対立の渦中にあるABCニュースとしては有権者の良識に訴えたい狙いがあるのだろう。Axiosも中指を立ててと見出しを取っている。
ABCの記事を読んでみたが自分は素晴らしい成果を挙げているのにノーベル平和賞が取れないのはおかしいと主張したと書かれている。これを国連総会でやったのかと呆れてしまった。
日本のメディアは抑制的に「国連批判を展開した」と書いている。心理的・軍事的にアメリカ合衆国に依存する日本人はトランプ大統領の言動を直視したくないという気持ちがあるのかもしれない。
この背景にあるのが新興宗教化するアメリカ合衆国の政治事情だ。先日チャーリー・カーク氏の追悼式・葬儀が行われた。会場は福音派特有のメガチャーチの会場として使われそうな6万人収容のアリーナだ。
メガチャーチの中は「アメリカは特別な国であり自分たちはその一部だ」と感じたい人たちで溢れかえっていた。トランプ大統領はその中でとりとめもない演説を行い、ついには自閉症とタイレノールの関係までほのめかした。
普段の生活になんとなく欠落感を感じている人たちが「自分は特別な存在だ」と感じたがっているとしてもなんの不思議もない。MAGA運動は彼らのどことなく寂しい心情に忍び込みリーダーに対する崇拝と献金を要求する。
この過程で問題は単純化される。社会が複雑になればなるほど適合できない人達が増えてくる。医療は現象を説明するために「自閉症」や「ADHD」などの概念を精緻化させてゆくため、結果的に「自閉症の人が増えた」という印象が作られる。
新興宗教と伝統宗教の違いはどこにあるのか。さまざまな定義があるだろうが、何らかの単純な解決策を提示して具体的な見返りを求める宗教は新興宗教的と考えてよいだろう。解決策が社会と折り合うものであればいいが、そうでない場合には「カルト」と呼ばれ危険視されることがある。
た追えばトランプ大統領はここに「自閉症はタイレノールのせいだった」という単純な「福音」をもたらす。妊婦がタイレノールの服用をやめさえすればたちどころに問題が解決するというわけだ。
区切られた空間の一体感はおそらく現実の複雑な問題から人々の目をそらす役割を果たしている。またこれが世界的に発信されることで「この人たちはどこか異様だ」という印象を与えることになるだろう。
さらにタイレノールを飲んだから子どもが自閉症になったというおそらく医学的には間違った知識を元に持たなくても良かった罪悪感を抱える人が出てくるはずだ。アメリカのメディアはタイレノールは比較的安全な薬だと言っている。飲むのをためらうことで光熱が続くと胎児に別の障害を与えかねないのだという。
しかしながらトランプ大統領はメガチャーチの中こそが真実だと思い込んでいて、それに従わない人たちと戦い続けている。まずはマスメディアを目の敵にし、科学界を敵に回し、さらに国連に対しても「なぜ自分を称賛しないのだ」と苛立ちをあらわにした。
トランプ大統領をヒトラーに重ねたい人たちもいるようだが、トランプ政権が支配できるのはアメリカ合衆国の中に作られた新興宗教的世界だけであって、それがアメリカ全体・世界全体を支配することにはならない。
ただしトランプ大統領のもとで「今のアメリカはどこかおかしいのではないか」時が付く人は徐々に増えてゆくのではないか。
