先日、Xでジミー・キンメル・ライブ!について言及したところ15万を超える閲覧があった。その反応から日本人がアメリカの状況を非当事者として対岸の火事として眺めていることがわかる。
そんな中でトランプ大統領が台湾支援を差し止めたという報道が出ている。おそらくこのニュースは日本ではほとんど報道されないだろう。不安耐性が弱い日本人には耐えられないからだ。
トランプ大統領が台湾への軍事支援を差し止めたとワシントンポストが報じている。狙いは2つあるものと見られる。
トランプ大統領はかねてから見返りなしの支援には消極的だった。ウクライナでも鉱物資源に並々ならぬ関心を示しヨーロッパの不興を買っている。
同紙はトランプ政権が他国への無償での武器供与に後ろ向きで、主に欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国が米国製兵器を購入してウクライナに供与する枠組みと同様に、台湾も米国製の武器を購入すべきだと考えているとした。
米政権、台湾軍事支援を不承認か 対中配慮とWポスト報道(共同通信)
次に大国同士のディールの主役として名前を残したいという思惑がある。プーチン大統領との交渉に失敗すると今度は習近平国家主席との交渉に執心し始めた。現在はTikTok・中国留学生の受け入れ・台湾への軍事支援が「カード」になっている。
このためトランプ政権は政権はワシントン・ポストに対して「台湾への支援差し止めは最終決定ではない=交渉の余地がある」とコメントしている。
ベトナム戦争の仲介を期待して中華人民共和国を国家承認したアメリカ合衆国は、その後も曖昧戦略を取り続けてきた。日華条約が失効した後も後継の法律を作り大統領の台湾有事介入権限を温存している。この曖昧さはあくまでもアメリカ合衆国の地域におけるプレゼンスを維持するという長期的な目的意識のための戦略だった。
しかしながらトランプ大統領の曖昧戦略は個人の興味に基づいた短期ディール志向である。
ウクライナの人々は「最大の支援国であるアメリカ合衆国が自分たちの頭越しにロシアと直接交渉をするのではないか」と懸念を深めておりこの懸念はある程度当たっている。トランプ大統領は今でもプーチン大統領との直接交渉に固執しているためロシアに対する直接的な制裁には後ろ向きである。
また海外留学生の差し止めはアメリカ合衆国の大学教育に深刻な影響を与え始めている。トランプ大統領は中国の留学生に限ってはビザを発給するとしているがこれも単なるディールのためのディールと言った印象で国家戦略的な意思は感じられない。
韓国などからの開業支援要員は不法移民摘発の巻き添えを食らった。韓国のエンジニアは体を拘束され銃を向けられたとその恐怖を語っており今後工場の立ち上げにはかなり苦労することになるだろう。今度はH1ビザを10万ドルで売ると言い出している。
アメリカの大学教育は今や留学生をお客さんにしてアメリカ人の人材教育の資金にしている。これを破壊したうえで海外からの高度技術者を締め出し、ビザにも高い料金をかける。人材が育成できなくなれば工場だけで働く質の良い労働力は確保できない。
バイデン政権下では「アメリカ合衆国は2027年頃に習近平国家主席が台湾に侵攻する」という仮定を置きインドを巻き込みながら地域へのコミットメントを深めていた。しかしトランプ政権に入るとインドとの関係は悪化、トランプ大統領は習近平国家主席に盛んに秋波を送り続けている。
日本のいわゆる保守と呼ばれる人たちのほどんどは何かをお神輿にして騒ぎたいだけの人たちなので「台湾侵攻を否定する人々はすべてサヨクでありお花畑だ」と息巻いていた。高市早苗氏の出馬表明に期待したが日米同盟の本質的な変化に触れる発言はなかった。おそらく彼女の政治的ブランド以上の中身はないのだろう。
しかしながら、そもそも保守と呼ばれる人たちはトランプ大統領の気まぐれで短期的なディール志向にはおそらく気がついていないだろう。
意図して無視しているのではないかと思っていたのだが、どうやら中身に関心がないようだ。
それがよくわかる興味深い体験があった。
Quoraで自称保守の人たちと接していると相手に不快感を引き起こすために「日頃の行いのツケだ」と発言する人が多い。やや斜に構えつつ他人を不快にさせることが自己目的化している。しかし、説明を求めると細かい引用を避けて結論を回避する傾向がある。そして最後は決まって「自分はどちらのポジションでもないから」と逃げてしまう。
今回Xのとある投稿が15万回表示された。
当初は内容に言及して「ショックだ」と言っている人もいた。
しかし数が増えるに従って次第に「左派が極端なことをやっていたからそれがスィングバックしただけだ」という冷笑的な人が増えた。また逆にリベラルな立場から高市早苗も同じようなことをやっているという人が混じっている。内容を精査すると「おそらく元の記事は読んでいないだろうな」というコメントが多い。
あくまでもこれはアメリカで起きている対岸の火事であって日本には関係がないと考える人が多く「安心して騒げる」という認識の人が多いのだろう。いわば安全地帯にいるという感覚。同時に内容を理解して今後に活かそうと考える人はそれほど多くないということもよくわかった。と同時に相手に何らかの不快感を与えたいと考える人は多いようだ。わざわざ書かなくていいコメントを書いてくる人も目立つ。
日本の政治情報の需要は2つに分かれる。
- 現状を把握しできれば問題解決もしたいという人たち。数としては少数派。
- つまらない日常の憂さを晴らすために誰かに嫌がらせをしたいという不機嫌な多数派。
トランプ大統領は「自分の任期中は習近平国家主席は攻めてこないだろう」と発言しているが台湾は「安全保障は自分たちで守る」との意思を固めているそうだ。つまり台湾ではこの問題は当事者的に語られている。
