朝日新聞が「自民総裁選アンケートへの回答自粛を要請「投票行動に影響与える」」という記事を出している。自民党の総裁選が早くも末期状態に入ったことがわかる。
自民党の総裁選挙管理委員会がお触れをだした。マスコミのアンケートに答えるなという。朝日新聞は総裁選投票動向調査が念頭にあるのではないかと指摘している。
ではなぜ総裁選投票動向調査に応じてはいけないのか。考えてみた。
自民党総裁選の前倒しでも「答えない」と回答する人や組織が多かった。自民党は麻生派以外の派閥が解体しており麻生派領袖の麻生太郎氏も派閥の団体行動を求めない。
これまでボスたちに言われて動いてきた人々はどうしていいかわからなくなっている。
これまで自分の考えで動いてこなかった人たちが派閥から解放されて自分たちで動くようになるか?
ならないだろう。
結果的に「みんなはどう行動しているのだろうか?」と様子見状態に陥る。
ここでマスコミのアンケート結果が表示されると「ああこの候補が勝ち馬なのか」ということになり国会議員票が動く可能性がある。勝ち馬に乗って支持をアピールすればいい地位にありつけるかもしれない。さらにこの国会議員票に付随して党員票も動く。
結果的に、政策論争は行われず、勝ち馬人気投票となってしまうのだ。
では勝ち馬人気投票の何が悪いのか。
仮に議員の一人ひとりが自分の考えに従って自由に(自らに由って)投票すればその政策を支援しようという機運が生まれるだろう。ところが今回の選挙は所詮どの勝馬に乗れば自分がいいポジションを得られるかというコンテストに過ぎない。
そもそもなぜ自民党は支持されなくなったのか。
それは経済成長が再び始まったからである。賃金上昇が伴わない物価上昇に苛立つ人が政治の役割について疑問を感じ始めている。
ところが今回の総裁選を見ていると「日本を一つに」「再び経済成長を目指す」という掛け声ばかりが聞かれる。しかしそのアイディアは1年前の総裁選挙で聞いたのとほぼ同じもの。石破総理は結果的に賃金上昇を実現できていないし、自民党の議員たちも石破総理をもり立てて日本の経済を再起動させようという気概を持たなかった。
つまり今回の総裁選挙は自民党の政策が手詰まりになっていると示すものにしかならないだろう。義務的に田崎史郎氏を呼んで放送を構成しているワイドショーが政策論争できないのはそのためだ。ないものは伝えられない。
総裁が新しく変わっても少数与党状態も有権者の白けた雰囲気も変わらないので今後も自民党の支持が盛り上がらなければ「新しい総理でもだめだった」「誰か別の表紙が必要だ」ということになるだろう。仮に無党派層を満足させられる画期的な経済政策が打ち出されなければ同じことが繰り返されることになる。次の総裁選挙は2年後で参議院選挙は3年後である。
総裁選挙管理委員会は今回のお触れは禁止ではなく「議員個人の判断に委ねる」としている。派閥による締付ができないため「一人ひとり」の判断に任せざるを得ないのだろう。リーダーがいないため政策論争の演出すらできなくなっているのである。
